地下世界をめぐる冒険 ウィル・ハント
私が鎌倉という地に魅せられた最大の理由は、ズバリ!
「やぐら(横穴式墳墓)」の多さでした。
名越切通にあるまんだら堂やぐら群、北条家終焉の地・北条高時の腹切りやぐら、
瑞泉寺やぐら、海蔵寺十六の井、明月院やぐら、百八やぐら群......
少し気にしながら街外れを歩けば、やぐら、やぐら、やぐら......。
やぐらの魅力とは、簡単に言ってしまえば、「暗闇」の魅力に他なりません。
やぐらのたたえる闇の奥にあるのは、聖か、はたまた邪か。混沌か、救いの光か。
多少強引ですが、それは、まるで人の心の奥底をのぞき込んでいるかのようです。
私はそんな得体の知れない暗闇の中から生まれてくるものが大好きです。
やはり、どうしようもないネクラですね。
洞窟、地下道、地底、アンダーワールド、暗闇......
それら「光なき世界」に魅せられて仕方がないという、
奇特な、悲しき性を生まれ持った者にとって今日ご紹介する本は、
まさに垂涎ものの一冊となることでしょう。
「地下と人間」、「闇と人間」を思索することで、見えてくる何かは、
ひょっとすると読んだ者の人生を深くうごかすかも知れません。
超個人的なおすすめ本以外の何物でもなし。
というか他の本屋ではこんな本、絶対おすすめしないでしょ。
※最後に私が鎌倉近辺で唯一、のぞき込むことすらためらったやぐらをご紹介します。
光明寺という名刹の近く、住吉城址のやぐらは本当にやばし!!
地元民もろくに行かない超マイナーな場所ですが、怖いもの知らずのやぐら好きは挑戦してみて下さい。
「魂の漆黒の闇の中では、時刻はいつも、午前三時だ」
フィッツジェラルドが遺したこの名文は、個人的にダントツNO.1のフェイヴァリット!!
闇だって自分の心の元(もと)、その闇こそが彼の作品が愛され続ける理由です。
この本のズバリ!!ここがポイント!!
昼の光に、夜の深さが分かるものか。
ー ニーチェ
小説を書いているとき、僕は暗い場所に、深い場所に下降します。
井戸の底か、地下室のような場所です。
そこには光がなく、湿っていて、しばしば危険が潜んでいます。
その暗闇の中に何がいるのか、それもわかりません。
それでも僕はその暗闇の中に入って行かなくてはならない。
なぜならそれこそが、小説を書いているときに僕がいる場所だからです。
ー 村上 春樹
暗さがもっとも増すときに、人は星をみる。
暗闇を恐れるばかりでは、本当の答えを手にすることは出来ない。
↑日本人のみならず「美」と闇、陰翳の間には切ってもきれない関係がある。
それは作品の表層に現れるというよりもむしろ、もっと奥、もっと深く、
無意識的美学の領域へ浸み込んでいくもの。日本人の美意識の根っこを知る一冊。
↑夢を夢と気づかないでいる時に誰もが感じたことのある、むっとした不安の空気に満ちた世界を、
異才の名文と美しすぎる版画で味わえる珠玉の一冊。既読の方にも◎。
↑ 「魂の漆黒の闇の中では、時刻はいつも午前3時だ」、この伝説的一文は「壊れる」に収録。
「マイロスト・シティー」はオーバー30歳は全員必読の金字塔。
フィッツジェラルドの悲しみが織り込まれた文体は中毒性が半端ない。そうあの村上春樹氏も。
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