⒌
⑴
健二の父・耕一(烏川耕一)と母・あき恵(浅香あき恵)が現れる。
安尾と令があき恵を見て、
安・令「ブッサイクやな~っ!」
匂いや鼻脂を弄る。
今度は耕一の唇を弄る。
安「口笛吹いてる」
の後は、全員でひょっとこ弄り。
安「ひょっとこいしょ」←よっこいしょ
令「ひょっとこして」←ひょっとして
幸「ひょっとこ前」←男前
健「ひっとコーヒー」←ホットコーヒー
あ「ひょっとこ!」←ひょっとこ!
烏「ひょっとこから離れて!」
皆が舞台袖に走り去る。
烏「そういう意味ちゃう!戻ってきて!」
皆が現れる。
烏「自己紹介に、どんだけ尺使うねん!(苦笑)」
烏「健二の父の耕一です」
あ「母のあき恵です」
⑵
幸恵に呼ばれ、おしみさんが何も持たず現れる。
烏「健二の父の耕一と申します」
おしみさんは、ニコニコと耕一のもとに向かうが、
耕一の顔を確認して、表情が曇り、耕一に背を向ける。
清「…」
幸「お婆ちゃん、どうしたの?」
清「いえ…」
清「幸恵、お茶っ葉、探してきてくれる?」
おしみさんは安尾と令にも、
清「あなた達もお願い」
安「調理場じゃなくて、台所ね」
令「キッチンね」
清「全部、一緒や!」
幸恵・安尾・令が調理場に向かう。
(=おしみさんが三人をその場から外させた)
⑶
おしみさん・耕一・あき恵・健二、四人になる。
烏「…ご無沙汰しております」
おしみさんが耕一達の方を振り返り、
清「気安く話しかけないで!」
清「幸恵が好きになった人の両親があなた達だなんて!」
清「こんな運命のいたずら、ありますか…」
健「…どういうことですか?」
清「幸恵の両親は交通事故で亡くなりました」
清「その事故の加害者は、あなたの父親です!」
おしみさんが耕一を指差す。
清「あの事故で、私達の家族は奪われた…」
⑷
健二が耕一に詰め寄る。
健「ちょっと、待てよ!」
健「事故の話、聞いてないぞ!」
烏「…すまん」
烏「25年前、お前はまだ小さかった」
烏「交通刑務所に入っていた5年間、海外出張と嘘をついていた」
健「ふざけんなよっ!」
あき恵が泣きながら、
あ「健二、お父さんの気持ちを分かってあげて!」
清「…家族で言い合うのはやめなさい!」
清「加害者であることには、変わりがないんですから」
⑸
そこに、安尾と令が現れる。
安「お茶っ葉、見つかりませんねー」
清「あの、今の話聞いてませんでしたよね?」
安「何のことですか?」
安尾達が調理場に戻りながら、
安「いやー、まさか、健二さんのお父さんが、」
令「交通事故の加害者やったなんて」
清「聞いてるじゃないですか!」
安「ちょっとだけです」
清「どこから?」
安『…ご無沙汰しております』
令がオーバーに体を震わせ、両手で指差しながら、
令『気安く話しかけないで!』
清「そんな言い方はしてない。(苦笑)」
おしみさんの言い方はともかく、安尾も令も皮肉な運命を知ってしまった。
⑹
おしみさんが健二にお願いする。
清「健二さん。幸恵の幸せを考えるなら、別れてください!」
烏「私が事実を幸恵さんに伝えます」
清「結構です!」
清「小さな幸恵は、両親が亡くなった時、悲しみました」
清「事実を知ったら、大きなショックを受けるでしょう」
清「今日のところは帰ってください!」
清「幸恵には、『急用で帰った』と伝えますので」
健「…」
烏「…」
清「帰んなさいっ!!」
おしみさんが烏川らを店の外に押し出そうとする。
安尾や令も加わり、揉み合いになる。
そのうち、おしみさんが店外に押し出され、安尾が店の引き戸を閉める。
安尾が店の外のおしみさんに対し、
安「帰れ!」
清「許してください!」
清「えっ?」
清「ちょっ、ちょっとー!」
暗転。
⒍
⑴
おしみさん・安尾・令、三人。
令がおしみさんに、
令「落ち着きました?」
清「落ち着くわけないじゃない」
清「イライラして、一睡もできなかったわ」
安「それにしても、驚きました」
安「まさか、自分の店から放り出されるとは!」
清「あんたや!」
清「驚いたのは、健二さんの父親!」
⑵
おしみさんには、幸恵と健二を別れさせる策があるよう。
清「隣町から知人を呼んでいます」
ヒロ(吉田ヒロ)、ヒロの妻・真希(前田真希)、二人の娘・亜依(葛原亜依)、
三人が現れる。
ヒ「将棋!」
清「…?」
ヒ「あっ、オセロ!」
ヒ「あっ、チーッス!(=チェス)」
安尾がワンテンポ置いて、わざとらしく倒れる。
清「安尾さん。この人を甘やかしたら、ダメです」
清「現実を受け入れさせないと」
おしみさんが、安尾と令にヒロ評を説く。
清「この人は、人間は悪くないんですけどね」
清「お笑いのランクが低い」
清「客(筒井)とクリーニング屋(小西)が居たでししょ?」
手を水平にし、
清「客がこのくらい(おしみさんの首)で、」
清「クリーニング屋がこれくらい(おしみさんの胸)としたら、」
清「この人はこれくらい(おしみさんの膝下)」
清「でも、人は悪くないんですよ」
おしみさんは、ヒロ家族の三人に芝居をしてもらうよう。
⑶
健二・耕一・あき恵とも約束していたようで、三人が現れる。
清「健二さん。幸恵と別れていただきます」
清「幸恵さんに嫌われていただきます」
健「どうやって…」
⑷
そこに、クリーニング店の小西が沢山の服を抱えて現れる。
清「あなた達に、お芝居をしていただきます」
おしみさんの考えるお芝居は、
①健二に愛人(真希)がいる
②愛人・真希が借金をしている
③真希の借金取り(ヒロ)が現れ、借金返済を迫る
④借金取りは健二の隠し子・中学生(亜依)を人質として連れてきている
⑤健二が結婚詐欺師として、様々な女性に手を出していることが分かる
⑥健二が幸恵に嫌われる
というもの。
ヒ「こんなの、上手く行かんと思うで」
清「幸恵のためなんです。お願いします!」
知人の頼みということで、ヒロ達が協力を決める。
⑸
小「クリーニング屋なんで、衣装なら沢山ありますよ!」
と、客の服を衣装として貸し出す、小西。
衣装は、愛人の赤ドレス・セーラー服・借金取りのスーツ。
ヒ「すぐに着替えてくるわ!」
ヒロ達が着替えに向かう。
その5に続く