⒋
⑴
楽屋(舞台上手袖)から、白ジャージ姿の佐藤(佐藤太一郎)が現れる。
佐藤が劇団吉本の座長のよう。
佐藤が舞台の中央に立ち、
佐「皆、集まってくれ!」
佐藤、信濃、清水、ジャボリ、安世、新名、全座員が舞台に揃う。
⑵
佐藤が諸見里のもとに向かい、拳を握り、
諸見里の胸(心臓)に軽く触れる素ぶりをする。
佐「セット、ありがとうな!」
佐「頑張れよ、ルーキー!」
佐藤が舞台中央に戻る。
諸「うざい奴やな」
諸見里の発言を聞き逃さなかった佐藤が、諸見里を睨む
諸「あっ、熱い奴やな」
佐藤が微笑む
⑶
佐藤が座員を鼓舞する。
佐「俺たちの最終目標は日本武道館で劇をすることや!」
佐「努力すれば、良い結果が待っている!」
佐「最高の演技で観客の心のドアを開けるんや!」
佐「今日も良い酒を飲もう!」
佐「気合い入れていくぞ!」
諸「あいつ、何言うとんねん。(苦笑)」
⑷
台本を抱えた女性・真希(前田真希)が現れる。
前「台本を持ってきたわ」
前「17:30からリハーサルよー」
真希を見た裕はテンションが上がり、大げさに、
裕「(早口で)真希ちゃんや!」
会場の笑い声
⑸
諸見里が裕に尋ねる。
諸「誰ですか?」
裕「劇団の製作マネージャーや。予算から広報まで、幅広い仕事をしている」
裕「身長162cm、体重45kg」
裕「…俺は、もうちょっと太った方がええんちゃうかなと思ってる」
諸「キモーッ!ストーカーやん!」
⑹
真希が全員に台本を渡す。
台本を貰った座員は楽屋に戻る。
最後に信濃に台本を渡し、
真希がその場を去ろうとするが、予備の台本を落とす。
ダッシュで落とした台本を拾う手伝いにいく、裕。
裕の手と真希の手が合わさる度、
裕「あっ」
裕「あっ」
と、大袈裟なポーズで照れる。
信「わざとですよね?」
⑺
台本を拾い終えた真希が去る。
裕は真希の後ろ姿をいつまでも見ている。
裕「頑張ってー」
諸見里が裕に対し、
諸「分かりましたよ。好きなんでしょ?…僕のこと?」
裕「なんでお前を好きになんねん。俺は真希ちゃんのことが…っ」
諸「やっぱり」
信「バレバレですよ」
⑻
諸見里が裕に尋ねる。
諸「どこを好きになったんですか?」
裕「優しいとこかなー?」
裕「笑顔?」
諸見里は、既に裕の話を聞いていないが、
裕「時に厳しく接してくれるとこも良いかなー」
裕は諸見里を見て、
裕「無視すなーっ!」
諸「途中から興味無くなった」
⑼
信濃が裕に尋ねる。
信「告白はしないんですか?」
信「へー、上手く行くといいですね」
裕「聞いたんやったら、言わせろーっ!」
信「聞いてる途中から興味無くなったんで」
⑴
裕・諸見里・信濃、3人で居るところに、
黄色スーツ姿の瀧見(瀧見信行)が現れる。
瀧「難波金融の瀧見っちゅうもんや」
瀧「諸見里に用事や」
瀧「借金踏み倒して、とんずらしやがって!」
⑵
諸見里が瀧見の前で土下座し、必死の様子で、
諸「もう少しだけ、待ってくださいっ!」
瀧「また逃げるんやろ?」
諸「逃げませんって!逃げたら、殺していいですからーっ!」
諸「もう少しだけ、時間をーっ!」
諸見里は土下座しているようで、
自分の頭を瀧見の股間に押し当てているようにも見える。
信「頭をグリグリすな!」
⑶
瀧「しゃあないな」
その瞬間、諸見里が立ち上がり、瀧見の至近距離で
瀧見を上から睨みつける。
信「圧をかけるな!」
瀧「一週間だけやぞ!」
瀧見が去っていった。
⑷
諸「助かったーっ!」
裕「幾ら借りてるの?」
諸「元金利息を合わせて、4万2千円」
裕「少なっ」
信「よう、さっきの雰囲気出せたな。あれ、300万借りてる感じやん。(苦笑)」
⑴
引き続き、裕・諸見里・信濃、3人の場面。
真希が戻ってきた。
前「信濃さんにお客さんですよ」
信「…?誰やろ?」
前「彼女さん」
信「おかしいなあ?今日、来る話してなかったけど…」
⑵
信濃の彼女・早苗(金原早苗)が現れる。
早「観に来ちゃった」
早「いつも以上に応援してるから」
信「いつも以上?」
早「お父さんも来てるの」
信「えーっ!」
早「『ええ役もらった』って、岳夫君が言ってたから」
信「…?」
早「たっぷり見せてね」
早苗が舞台から会場に去っていった。
⑶
信「ええ役?どういうことや?」
諸「もしかして、嘘付いた?」
信「いえ、ちゃんと言いましたよ。『ヤクザA』の役って」
裕「ヤクザA(ええ)!ええ役と間違えたんちゃう?」
笑い出す、諸見里
諸「アホや」
⑷
信「どうしましょ?」
裕「どうしましょ?言われてもなあ…」
裕「ヤクザAの役を一所懸命に演じるしかないで」
信「それじゃダメですって!『邪魔すんでー!』一言だけですもん」
信「…こうなったら、リハーサルでアドリブ連発します!」
信「座長に認めてもらって、台詞を増やしてもらいます!」
⑸
リハーサルのため、全座員が舞台に現れる。
座長の佐藤が改めて皆を鼓舞する。
佐「今日は、劇団吉本の新しい一面を見せる大事な公演や!」
佐「気合い入れていくぞ!」
全員が舞台袖に捌ける。
裕「劇団吉本は、リアルな人間描写がウリなんや」
裕「新しい一面が加わるんか…楽しみやな」
⑹
脚立やテーブルが楽屋側に片付けられ、
リハーサルの準備が進む。
その4に続く