[音楽]
会場が暗転し、
NMB48の曲『てっぺんとったんで!』の一部分が流れる。
♪負けへんでー
♪負けたらあかん
そして、通常の新喜劇曲『♪ホンワカパッパ~』でスタート。
[物語]
(敬称略)
⒈
⑴
セットは基本的に『うどん屋台』のみ。
うどん屋台の周囲に、無造作に脚立やテーブルが置かれている。
テーブルの上には何かしらの箱や道具が置かれている。
⑵
安世(井上安世)と新名(新名徹郎)が
ジャージのようなラフな格好で現れる。
新「先輩、いよいよ本番ですね」
安「お客さん、沢山来てくれてるみたいよ」
安「劇団吉本はお客さん『あってものよね』」
いきなり噛んだ安世に、
新「大丈夫ですか?もう、本番始まってますよ?」
安「…(苦笑)」
安世が言い直す。
安「劇団吉本はお客さん『あってのものよね』」
安「だから、精一杯、演じなきゃ」
安世と新名は『劇団吉本』の座員で、
舞台は、今日の(劇中の)公演のセットのよう。
脚立はテーブルは、セットの組み立て時に使っていたようだ。
⑶
劇団吉本のセットについて、
安「いつも、劇場の専門の大道具さんが作ってくれてるのよ」
新名がうどん屋台のセットの柱部分に注目し、
新「専門という割には…釘が出てますよ」
安「ほんまや。危ないから抜いてもらおう」
安「すいません、大道具さん、居ますかー?」
⑷
安世が呼び掛けると、
頭にタオルを巻いた大道具姿の諸見里(諸見里大介)が現れる。
安「初めて見る人ね」
諸「しゅしゅしゅしゅしゅ しゅっしゅ」
新「はっ?」
諸「はっ!?」
新「何言うてるか、全然わからん」
サ行ネタを経て、
新「ゆっくり喋ってもらえますか?」
諸「新人大道具の、諸見里大介でしゅ」
新「大道具さんですか」
⑸
新「あの、釘が突き出てるんですけど…」
諸「刺さったらオモロイかなと思うて」
新「なんもオモロないです」
新「釘を抜いてもらえますか?」
諸「今は無理です」
新「はっ?」
諸「いや、道具が無いんでね」
新「腰にいっぱいぶら下げてるじゃないですか」
新「この右のやつは?」
諸「あっ、これは孫の手です」
と、孫の手を取り出す。
諸「僕、乾燥肌なんで、冬場は手放せなくて」
新「ほな、左の袋に入っているのは?」
諸「こっちはチョコです」
と、チョコを取り出す。
諸「せっかくなんで、あげます。一日遅れのハッピーバレンタイン」
新「男に貰いたないです」
⑹
安「いつもの大道具さんはどこかなあ?」
別の大道具も居るよう。
⑴
大道具姿の裕(吉田裕)が現れる。
裕「おー安世、久しぶりやないか」
安「こんにちは」
新名が裕のことをマキバオーや柴田理恵と間違えるくだりがあり、
裕「違いますから!」
裕「俺は大道具の吉田裕」
安世が付け加える。
安「吉田さんはずっと劇団を見てくれているベテランなのよ」
新「間違えて、すみません」
新「新人の新名徹郎です」
⑵
新「裕さん、釘を抜いてもらえますか?」
裕「釘出てんの?ごめんなー」
裕「今回は諸見里に担当させてみたけど、まだまだやな」
裕が釘抜きで簡単に抜く。
裕が釘を抜く姿を見ていた新名が、
裕の前歯で釘抜きしたように前歯を強調して、
新「釘抜き、凄いですね」
裕「ちゃんと見てた?」
諸「新名さん、ちゃいますよ!(前歯は)カンナです」
⑶
裕が諸見里に対して、
裕「二日目やし、釘抜きくらい出来るやろ?」
諸「しゅいましぇん、不器用で」
諸「どうしても、劇団の仕事がしたかったんです」
安「お芝居、好きなんですね」
諸「色々、面接を受けたんですけどね…全部落とされました」
新「滑舌や!」
諸「良かった~!」
新「良かった~?」
諸「落ちた理由が分かったから(良かった~!)」
⑷
諸見里がテーブルにある『赤い箱』を持ってくる。
諸「僕からの差し入れです」
諸「お菓子です。食べてください」
安「本番前は食べたくないんです」
新「すみません」
と、諸見里の差し入れを断る。
諸「じゃあ、後で食べてくださいね」
とニコニコしながら話すが、内心は気に食わなかったようで、
うどん屋台のセットを蹴り上げる
お菓子の入った『赤い箱』をテーブルに戻す、諸見里。
⑸
安世と新名が(舞台上手袖の)楽屋に向かった。
⑴
舞台には、裕と諸見里の大道具、2人。
裕が劇団吉本について、諸見里に説明する。
裕「劇団吉本は、10年前に旗揚げした劇団なんや」
裕「その時から目に掛けてる座員がおるんや」
裕「座長の次に古株の子なんやけど…来てないなあ」
⑵
そこに、ジャージ姿の信濃(信濃岳夫)が現れる。
信「よろしくお願いします」
裕「おー!」
裕が諸見里に、
裕「彼が今、言うてた座員や」
諸見里が信濃に自己紹介する。
諸「新人大道具の諸見里でしゅ」
信「信じる者は救われる?」
諸「はっ!?」
信「一文字も分からん。(苦笑)」
諸「一文字は分かるやん」
諸「最初の方、聞こえてたやん。『しん』言うてたやん」
信「ただの聞き取りづらい表現や!もうええ」
⑶
信濃が諸見里に自己紹介する。
信「役者の信濃岳夫です」
諸「シナモン岳夫?」
信「しなの、です」
諸「…華、無いわ」
信「こいつ、腹立つなー!」
⑷
裕が信濃に対し、
裕「まあまあ。どうや?今日はどんな役?」
信「『ヤクザA』の役です」
裕「台詞は?」
信「『邪魔すんでー!』の一言だけです」
裕「それだけ?」
諸見里が信濃に尋ねる。
諸「座員は何人ですか?」
信「6人です」
諸「たった6人?6人で台詞一言?…きっつー!」
諸「あんた、役者に向いてないで」
信「黙れ!」
⑸
裕が信濃に尋ねる。
裕「彼女の父親には、役者のこと、言うたの?」
信「付き合いだして5年になりますけど、まだ言えてません」
信「厳格なんで…」
信「ええ役が来るまでは内緒にしてます」
裕「ええ役とかじゃなくて、頑張っている姿を見せたら、それでええんちゃうかなって」
信「裕さんは役者をやってないから、そんなことが言えるんですよ」
⑹
そこに、ジャージ姿の清水(清水啓之)とジャボリ(ジャボリ ジェフ)がやってくる。
清「おはようございます」
ジ「おはよう、ございまーす」
信濃が二人を紹介する。
信「彼らは劇団の看板座員なんです」
諸「…こんなんが?この劇団、やばいでしょ」