前回のトッテンさんの講演 のあと、農業、医療、消費者の代表がそれぞれTPPの影響についてお話しされました。







農業の立場から…2010年10月、管直人元首相がTPP参加を表明したあと、前原元財務相が農業のことを「GDPがたった1.5%しかない産業のために、残り98.5%の産業が影響を受けることがあってはならない」と発言した。


まず、98.5%の産業すべてが輸出産業ではないこと。そして、世界のどの国も農業のGDPは大きくない。日本は1.5%だが、アメリカは1.1%、イギリスやドイツは0.8%である。また、日本の農業は補助金をもらっているというが、日本の補助金は生産額の20%であるのに対し、イギリスやドイツでは40%、アメリカは60%の補助をもらっている。

TPPが始まるとカロリーベースで40%の自給率であるのが、13%まで下がることが予測されている。

TPPに参加すると日本の農業は…林業の現状を見れば分かります>>>こちらをどうぞ



医療の立場から…日本の皆保険がなくなる危険性がある。アメリカの保険業界の進出のために、非関税障壁(関税以外のすべての障壁)の条項を使って「日本は国が保険をやっているおかげで民間の保険が参入できない」と言ってくる可能性がある。国が保険を手放して民間の保険が肩代わりするとアメリカのようになる。

アメリカが行っている保険は、高齢者・低所得者のための保険で、対象者は3億人の人口のうち1億人いる。5000万人は無保険者で残りの1億5000万人は民間の保険に加入している。


盲腸の手術は約200万円(1泊入院)、出産では約120万円の費用がかかるが、無保険者は全額その金額を支払わなければいけない。

民間の保険にはほとんどが会社が契約している保険会社に入るか、地域ごとに保険に入るか、である。


病気になって受診する場合、受診費用は保険会社が決める。病院はその金額の中で治療を行う。乳がんの手術でも1泊2日分しか出ない。それ以上入院しても病院は儲からないので退院を勧められる。困るのは患者である


さらに、会社に所属していないと保険に入れないが、病気になって働けなくなって、会社を辞めなければならなくなると、同時に保険も切れてしまう。保険が必要なときに無保険者になってしまうのである。保険の必要な人こそ保険に入れないのがアメリカの医療保険の実態である。


以前はキリスト教の慈善病院などに駆け込むこともできたが、採算が合わず経営が成り立たないところが多い。


日本の皆保険も少しずつ形骸化してきている。自己負担が少しずつ上がってきており、現在は自己負担が3割になっている。今度の法改正では、窓口で100円を負担することになった。


TPPは経済の問題ではない。命の問題である。




消費者の立場から(子を持つ母親からの話)…自分にはアトピーとアレルギーを持つ子供がいる。食べられる物が限られている。食品添加物にも気をつけないといけないが、現在の日本の基準が緩められると食べられる物が無くなってしまう。食品の成分表示も非関税障壁と言われて、表示しなくてもよい、となると、消費者は何を基準に食べ物を選べばよいのか。遺伝子組み換えの野菜かどうかの表示もなくなる。


アメリカで認可を受けていて日本で認可されていない食品添加物が50ほどある。また、日本では出荷前何日かは農薬散布が禁止されているが、アメリカではそれがない。海路で何ヶ月もかけて、腐らずに運ばれてくる野菜の危険さを想像してほしい。

牛肉もBSE問題が出始めてから、今は生後20ヶ月以内の牛しか出荷されていないが、これが撤廃されることも考えられる。マスコミでBSEの話題など、今はまったく報道されていない。













最後に、私が付け焼き刃で身につけたTPPの情報と私の感想を書いて終わりたいと思います。

平成22年10月、管直人元首相が突如TPP参加に向けて声明を発表した半年前、沖縄の普天間基地の失策がありました。アメリカのひんしゅくを買った、このことを挽回するために、TPPの問題を取り上げたとも言われています。いわば、アメリカのご機嫌を取るためにTPP参加を表明したとも言われています。


TPPに参加することで普天間基地の問題が解消するわけではないのに、わざわざTPPに参加する必要があるのでしょうか。


TPPはこれから詳細を検討されていきます。日本はそのルール作りから参加することで自国に有利な条件を作ると言っています。その条件とは、例えば「TPPの対象にしない産業を決める」といったものです。しかし、オバマ大統領は「すべての品目についてTPPの対象にする、といった日本の姿勢を評価する」と、全世界にスピーチしてしまったことを抗議するでもなく、ただ黙認しているそうです。このようなアメリカの外交のしたたかさに、日本は太刀打ちできるでしょうか。


アメリカ国内では、このTPPをどうとらえているかというと、日本と同じように輸出を目指す大企業がアメリカ政府をたきつけている、といったところだそうです。多くはTPPに無関心である、ということです。日本がわざわざTPPに参加するわけがない、といった論調もあったようです。日本が有利な産業においては、アメリカの同じ産業はTPPを歓迎するわけがないわけです。やはり、弱肉強食というのがTPPの姿のようです。勝ち組負け組の格差をさらに広げる危険性を持った政策を、やはり私は容認できません。





歴史の教科書で習った、明治時代に諸外国と締結した「関税自主権の放棄」の不平等な条件を、再び日本は自らの手で結ぼうとしています。さらに非関税障壁は自国の基準も破壊されかねない「治外法権」をも容認しようとしているのです。この不平等な権利の撤廃を求めて、日本は大きな戦争を経験してきた歴史があります。自立した一人前の国であることを諸外国に認めさせる必要があったわけです。


TPPに参加することは、再び日本を戦争に巻き込んでいく恐れを持っています。すでに武力を伴わない経済の戦争である、ともいえます。


(おわり。)