整体スクール(学校)運営 | 亜水之介のブログ

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整体スクール(学校)できちんとした技法を学びませんか!by塾長 亜水之介

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70歳 女性。
主訴は強い肩こり。
特に肩甲骨上部から隆椎にかけて。


まさに卵巣反応そのものの訴えです。


このこと自体は珍しくないのですが、この方の既往歴が実に興味深いので、症例として挙げてみることにしました。


この方、左膝を人工関節に置換しております。
それだけではありません。右膝もまた半月板摘出手術を受けているのです。
まるで膝関節を狙い撃ちされたかのよう。


さらに1年前、左内耳-前庭神経炎の診断を受け、全治三ヶ月と告げられたものの、約1年が経過した現在においても強い「めまい」が治まらず、外に出る意欲が失せていると言います。
(今般、来院されたのは妹さんの家が当院と近く、たまたま妹さんの家に寄る用事があって、訪ねていったところ、その妹さんの強い薦めで、来る気になったということらしい。因みに妹さんも当院のクライアント)


さて、ここまで書くと『ははぁ、なるほど・・・そういうことか・・・』と納得される読者もいることでしょう。
特に経絡に造詣が深く、前編を熱心に読まれた方なら。


膝は脾経支配が強く、故障者の7割は脾虚という証をもちます。
この脾経は直接的に卵巣を通り、その働きに関与するのはいうまでもありません。


故に「卵巣反応の肩こり」の処置は前編で述べたように「胃経」「脾経」の反応ゾーンが欠かせない部位となるわけです。


そして、内耳機能低下による「めまい」はほぼ胸鎖乳突筋のコリからくるのですが、この部位は経絡的には小腸経になります。さらに咬筋や外側翼突筋のコリも「めまい」の原因となり、この部位も小腸経支配が強いところと言えるでしょう。


また自律神経系の乱れからも「めまい」が起きますが、自律神経支配の経絡は膀胱経です。


瘀血の証で出る小腸経、そしてその瘀血が影響するところの自律神経系の乱れ、つまり膀胱経。これらも前編で述べたように「卵巣反応による肩こり」の処置には欠かせない部位でした。


以上を鑑みるに、このクライアントさんは「卵巣反応による肩こり」になるべくしてなったと言っても過言ではありません。


つまり、「脾」「小腸」「膀胱」が関与するところの「卵巣反応の肩こり」を訴えるこの方の既往歴は「脾経」の弱点から膝の故障につながり、「小腸経」「膀胱経」の歪みから「めまい」として現れたということで得心できるのです。


この方の持っている本質的な弱点、本質的な歪みが、現時点での主訴と既往歴から窺い知れるという好例です。


当然ながら、現主訴の肩こり(卵巣反応)の処置をしますが、この処置によって「めまい」の寛解は期待できますし、膝の不調も緩和できるでしょう。


ただ、さすがにこの時点では、クライアントさん自身、「めまい」にまで整体が有効であると思ってはおらず、ましてや人工関節を入れた膝の不調が整体如きで緩和されるとは思ってもいません。


なにせ施術前には「膝が悪いので、膝周辺を触るな!めまいが強くなるので、首を動かすな!」という注意事項(?)を申し付けられたくらいなので(笑)


いくら紹介のクライアントさんとはいえ、ここでムキになって『「めまい」にも「膝の不調」にも有効だ!』と説得する必要はありません。


主訴である肩こりを真に楽にすれば聞く耳を持つのです。
(逆にそういう効果を感じさせないと口で説得しても信用されない)


そういう意味で肩こりという症状は重要です。
そして、それをどこよりも楽にしてあげる技量を得ねばなりません。
なぜなら、その肩こりに隠れた真の歪みを是正する機会を得るーつまり信用され、聞く耳を持ってもらう手段となるからです。


整体療法は一般の人(或いは業者さえ!)が考えている以上に守備範囲が広く、効果のある療法なのですが、まだまだ肩こりやストレス解消程度の方法くらいにしか思ってない人が多いわけです。


ならばそれを逆手に取って、肩こりで来院されたクライアントさんの真の歪みを見出し、それに気付かせてあげることができれば、次元が違う施術者、つまり"施術家"への一里塚になろうというもの。


それがキッカケになって、抱えていた病気がコントロール可能な状態になるのです。なんと有意義で、なんと人のためになる仕事でしょうか。


治療系の流派の中には「当院は肩こり、ストレス解消等の慰安的な施術はしません。そういう方は他所に行ってください」的な方針を掲げるところがあります。
気持ちはよく分かりますが、「肩こりに隠された歪みを見出してそれに気付かせる」ことこそ、施術家の本分であるという定義からすれば、その役割をみすみす放棄しているとしか言いようがありません。


また、肩こり等の「ほぐし」だけに特化して、それを喧伝している流儀もありますが、これこそ、慰安であり、深みが全く感じられません-手技の可能性を自ら閉じていると言わざるを得ないでしょう。


どんな症状でも本人が辛いと思っているなら、必ず原因(歪み)があって、その原因は将来大きな不都合を生む、もしくは生んでいる、と考えるのが東洋医学の精神です。


コリ解消を"慰安行為"だと退けるのも、"ほぐし"をもって良しとするも、東洋医学の精神に反しています。歩むべき道は"中道"なのです。"極端"に正解はありません。


肩こりを利用して真の歪みに気付かせると・・・まさにこれこそ増永師が後世、我々の為に残した遺産ともいうべき思想ではなかったのではないでしょうか。


「卵巣反応による肩こり」はそれが最も端的に現れた病態であり、「証」の一つであると、しみじみと実感する昨今です。


※因みにこのクライアントさん、よほど楽になったのでしょう、聞く耳を持って次

 回の予約も入れました。通う気満々の様子。ある程度の回数さえ来てくれさ

 えすれば必ず「めまい」も「膝の不調」も改善されます。そこなんです。そこに

 持ってくるにはまず、別次元と言って良いほどコリの解消感を与え、信用して

 もらわねばならないのです。