筆者はいわゆる普通のオフィスで働いている。その勤務先の事務所が入っているビルの共同トイレで用を足していると壁の張り紙が目に付く。
<最近トイレの紙づまりが多発しております。不審者を見つけたらすぐ管理事務所にお知らせください>
これは大問題である。私はトイレを詰まらせる奴が許せない上に信じられない。そういう奴は今まで何十年と生きて来て、何万回とトイレを流して来て、未だにトイレの限界をわきまえていないのかと思う。
『貴方はちょっとトイレの能力を買いかぶり過ぎではありませんか?』と問いたい位である。
だが一つ疑問に思う。
なぜ紙づまりを発生させる人物が不審者であると書いてあるのだ。そのビルのオフィスで働いている普通のサラリーマンたちがたまに詰まらせていると考えるのが筋ではないか。管理事務所の人は確固たる自信を持って何者かがビルに忍び込み、トイレを詰まらせていると断言するのか。
大体不審者とはどの様な奴をさしているのかと推理してみる。
不審者とは大体他とは違う容姿と言動をする者を指す。
という事は、ここはオフィスビルであるからみんなワイシャツにネクタイをしている。
よって不審者はだぼだぼのTシャツを着ているに違いない。
他のみんなはスラックスを履いている。よって不審者はジーンズか短パンだろう。
他のみんなは革靴を履いている。よって不審者はビーサンか百均のスリッパを履いているであろう。
他のみんなは勤勉にあくせく働いているであろう。
よって不審者は仕事中ぬいぐるみと遊んでいるかスマホで麻雀してるであろう。
これらの情報を鑑みて不審者を推測すと。。。。
う~ん、見事に私の事だ。
まさかうちの事務所の服装自由と暇さがここでアダになるとは。
こんな罪で捕まったら恥さらしも甚だしい。新聞の一面に
<連続無差別便器紙詰まり犯、汚物破損の容疑で逮捕!!>とでかでかと報道されてしまう。
これでは親に合わせる顔も無いしお嫁に来てもらう事も行く事も出来ない。
だが私は断じて便器を詰まらせていない。筆者は十分トイレのキャパシティーをアンダースタンドしている。むしろトイレを見下している位だ。あんな物私の尊敬に値するでも無い。
ところがどっこい私に虐げられてくよくよしているトイレの気持ちを大便、いや、代弁するかの如く植村花菜と言う奴が『トイレの神様』なんて言う歌を発表した。
何でも
『トイレを綺麗にしたらべっぴんになれる』と宣うではないか。
ふざけるな。
そんな事田島陽子や谷亮子やコシノジュンコに言ってみろ。ぶっ飛ばされて一本背負いされてふんどしとチョンマゲでパリコレに出されるぞ。
そもそも彼奴のせいでトイレを崇める様な変な風潮が生まれてしまったではないか。絶対にあの曲が発表されてからの全国の便器紙詰まり件数を調べたらうなぎ上りであろう。あの曲さえ発表されなければ世間はトイレの能力を買いかぶる事も無く、
『こんな奴に俺様の排便が一回で流せるはずが無い。
しょうがない、二回に分けてしんぜよう。』
と合理的な考え方を保っていたであろう。
植村花菜には自分の犯した過ちの重大さに気づき、罪を償ってもらうためにもギターをスッポンに持ち替え、全国便器紙詰まり解消ツアーに出てもらいたい。お遍路周りならぬお便器周りである。
だがここで植村花菜に対する不満を募っても私の容疑は晴れない。いくら私が便器を詰まらせてないとわかっていても不安でしょうがない。あらぬ濡れ衣を着せられるかも知れないし、もしかしたら私は無意識にトイレを詰まらせているのかも知れない。自覚症状の無い便器紙詰まり犯なのか?この場合責任能力無しと見なされて罪を問われないか、それともやはり逮捕されてしまうのか。
家で一人でいる時に刑事が私達の部屋に押し入って、
『お前が連続便器紙づまり犯か?排便執行妨害の容疑で逮捕する!』
『待て、違うんだ!私はやってない!』
『黙れクソ野郎!放尿酌量の余地無し!』
『俺は無実なんだ!とにかく便護士を呼んでくれ!』
『エ~イ、お前なんて無期懲役!オシッコ猶予無しだ!』
『これは何かの間違いだ。俺は無実だ!便罪だ~~!』
。。。なんて言う恐ろしい事を考えただけで震え上がってオシッコをチビってしまった。
トイレの上で良かった。