自己の延長としての外界,認識との戯れ。 -8ページ目
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身体BOX

この身体を離れると


意思は容易に世界を歪めていく


視点だけとなった存在が


重たい窪みに沈殿していく肉体を観察する


要素と要素との隙間が視界一面に迫り来る


散り散りに


互いに分かたれそうになりながらも


互いを求め合っている


とても愛しい破片



実験的に言語化された情動Ⅱ

               【存在理由の一時的喪失】
 頑なな地下牢が解かれ、本能的独占欲が露になる。冷酷なまでに残酷さは頂点に達し、もはや全てのバランスを失ってしまったが故に、闘争の代償である孤独が刻々と、心に漆黒のしみを増殖させていく。そして淵から重たく滴る。抱えきれなかったから。


 当事者でありながら、その進行過程さえも嘲笑的態度で観察している。心身の自傷行為に関して、恍惚的な悦びさえ抱いてしまう状態の継続。


 初めから達せられる筈もないと解かっていながら、復讐の為の思考で埋め尽くされた脳が連鎖的に生んでゆくのは、肥大した病的なまでの憎悪。それは自らに向けられた全ての行動の原動力となり、加速的に崩壊を呼び込み、心を自ら踏みにじる。衰弱が正しい救済の存在を忘れさせる。



胎児

偶然という神の手が


間引かれた命の影を


添える花もなしに


塵に葬る事がある



本当は


”残酷”という言葉それ自体がエゴイズムであり


世界はただひたすらに


秩序正しく流れている




現象とは


機械仕掛けの舞台のカラクリで


救いという夢の住まう余地が無い


初めの時から全てに意味は無いと


音を持たぬ言葉が魂に囁く・・・・





ソウル ・ フラストレーション

身体の中に完結する収束と発散の動体
感覚器をも介さない快楽は
言葉にしようとすれば
あまりに熱を失いすぎる



対話によらない熱の知覚の増殖が
孤独の悦びを提示する

その連鎖の直接的描写は
あまりに能力を超えている


伝達手段を見出せない
受動的に知覚されるだけのある個体の躍動は
流出を求め

精神さえ侵食する



不完全な個体とコミュニティから派生する痛み
生の欠落が足枷となり
重荷はタナトスを渇望する

享楽の暗澹

高みと堕落とは常々隣り合って存在し
偶然の悪戯が不意に背中を押した時
たちどころに生じる転落がある


反抗は許されない
一度飲み込まれてしまうなら
選択の余地のない服従がある


低き所の感覚
存在価値の理由はもはや根拠を持たない
全てが解釈し得ない不可解なうねりとなり
音の無い崩壊へと向かう


塵が舞い上がり
乾ききった風がそれを運び去った


蝕まれるロジック


私など無いかのように置き去りにされ
外界の声が鬱陶しく群れを成して戯れている


時が私だけを秩序から退けたのか
冷やかな流線が掌を滑り落ちる


もはや全ての知覚が暴力となった
正しく積み上げられた記憶が剥がれ落ちていく


病んではいるが決して失われない意識が幽かに残存する


死に切ることだけは
卑しくも恐れているから
この悪夢は終わりの時を見出せない




             φ                                

               回転と静止の混在
               ウルボロスの円環
               意思の干渉の増幅
               無限に連なる振動
              繰り返される螺旋運動
            大きさを持たない量の浮遊
           占有する空間を失った身体
          なおかつ全ての位置を保持している身体




皮肉な友

「孤独は山になく、街にある。
一人の人にあるのではなく、大勢の人の”間”にある。」
-三木清
故に無駄な複雑さを要求される言葉という手段がある。

「自ら進んで求めた孤独や他者からの分離は、
人間関係から生ずる苦悩に対してもっとも手近な防衛となるものである。」
-フロイト
疲れを癒す方法が無い。
辛うじて気休めに苦痛を回避する為には
皮肉にも再び孤独の中へ落ち込むしかない悲哀がある。

「孤独は厚い外套である。
しかし、心はその下で凍えている。」
-コルベンハイヤー
暖かく冷たい
孤独という実在がある。

「世界が一つのかがり火になるなどということはない。
すべての人が自分の火を持っているだけ・・・
孤独な自分の火を持っているにすぎない。
-J・スタインベック
少なくとも表層の認識はだれも互いに繋がり得ない事を示している。

反射的拒絶。

それでも
孤独が在る故に
世界は陳腐などと非難されずに済み
外界は美しい程に多様性を保っていられるのかもしれない。

孤独は快楽を創造してくれる・・・

「孤独は想像力にとっては有益なものである。」
-ローウェル
この終わりの無い寂しさを紛らわす為に
今日もまた誰かが

夢の中で戯れている・・・




認識の拡張と変容

内奥に沈潜む記憶

変容するシンボル

定位置を取ろうとしない特異点


とうの昔

何処かへ置き去りにしてしまった

感覚の外にある何かを追求する情動


止まない振動


          

記号は電気パルスの連鎖を与え

肉体の可能な認識を離れて飛び去る

感覚器と似て非なる認識の情景は

再び記憶を鮮明にした


過ぎ去った経験はありえない論理を排除する処理を経て

都合の良い記録へと書き換えられる


あれはきっと


唯の夢だったと呟く



不穏な朝日が

今日もまた世界を塗り変えていく




                    





実験的に言語化された情動Ⅰ

             【不安定な陶酔と耽溺と悲哀】

没入する瞬間、かつて軽んじられていた感覚は覚醒を求められる。もつれ合ったガラクタのような弱々しい感情の糸が生き物に変容する瞬間。もつれは容易に溶解し、無限の分化成長を繰り返す。これまでの冷静な秩序が、難解な表情の中へと引きずり込まれてゆく。

 どんよりとした暗がりの奥で重たい運動がちらつく。孤独の存在は隅へ追いやられ、すっかり忘却の門へとさらわれてしまう。
 仮に、一度醒めてしまうなら、あの温かい安定への退行は所詮、残酷な認識の誤謬だったと片付けてしまうだろう。それでも愚かしい程に忘れ、繰り返し追い求めてしまう。それはありもしない理想の産物を貪る異常性を帯びた循環。

 過去は損失が全てだったと片付けても良いのに、唯一の癒しの記憶は、全ての過程を欺いて美化してしまうだろう。



<私>の規定に関する連想ゲーム

脳を解体すると軸索を走る思考の片鱗が見える。


思考は、脳の生得的な器質に影響されながらも、社会に予め在る言語に限定されている。


知識も記憶も、<私>以前から存在した世界に漂う、言語という無形のガラクタの寄せ集めである。


思考が外界に侵されている。


感覚器が外側と内側を区分する知覚。



世界は絶えず<私>を孤独で溺れさせる程に<私>から切り離されていて、しかもそれは認識に至るまでに、<私>という存在を通過した分だけ歪んでいる。その歪みは意地悪く間接的なしかたで<私>の存在を提示している・・・


遮断された外界は曖昧且つ巧妙に<私>を包含し、あたかも<私>が遷移的に外界へ拡張されていくようなイリュージョンを見せつける。


<私>は拡散し

<私>のあらゆる部分が絶え間なく外界に侵されている。


同時に外界も


私に絶え間なくよごされていく。



この体もまた長い循環の中、使い古された分子の集合体。

<私>が存在しつつあった頃、環境から掻き集められた仮初め。



<私>の存在以前には誰が用いていたのだろうか・・・




脳もまた、循環の中の一時的結晶体。


<私>が発生を初めるとそこに意思が寄生する。


体は思考に侵食されている



思考がこの生身を愛さない。確率が押し付けがましく与えた体。

意思は、常々この体を暴力的に使用する。

所詮、命有る間だけの一時的所有物であり、玩具であり、オブジェクトである体は、思考が損なわれない程度に弄ばれていく。

隷属の義務。



各々の要素は、さらに低次の要素へと分解されていく・・・

各々の要素は、極限まで近づきながら、決して真に和する事を好まない・・・

絶対的に混合不可能な、無限の要素群。モザイク体。=<私>・・・








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