スヌープ・ドッグは、来日公演中、いつものようにウィードを吸いながらショーを行ったため、逮捕されてしまった。
「確かにやり過ぎだな」
菊池は、両手の人差し指でリズムを取りながら、少し強めに口火を切った。
「イエス」
スヌープは、冷淡な口調で返事をした。
「よしっ!これでジョイントしろ!」
菊池は、スヌープから押収したブルーベリーという品種のウィードを渡した。
「イエス」
電話が鳴った。
「はい、こちらスヌープ・ドッグ取り調べ係りの菊池です」
菊池は、事務的に電話に出た。
「あ、課長」
相手が課長だったので、菊池の声のトーンは少し上がった。
「はい」「大丈夫です、もう少し吸えばなんとか」
課長が状況を聞くと、菊池は力強い声で答えた。
「は?」
課長の声が小さかったので、菊池は聞き返した。
「わかりました・・・3本ですね」
菊池は、少し小さめの低い声で答えた。そして、その言葉をごまかすように「いや、もう・・G-showに比べるとチョロいもんですわ」
と言い、菊池は笑った。
「はいっ、それでは失礼します」
菊池は、電話を切ると、一服して気を取り直した。
「おいっすー!」
菊池は、いかりや長介の定番挨拶を言い、また事情聴取を始めた。
「ィ、イエス」
スヌープは、変わらず冷淡な調子だが、笑いを堪えていた。
「180万人の愛好者たちに申し訳ないと思わんのかぁぁっ!!」
菊池は、いかりや長介調まま事情聴取を続け、スヌープの方はどんどん悪乗りがエスカレートしていった。
「イエーッス」
「あぁっ?!この青空なのに裏でみんな隠れて吸ってんだぞぉ!!」「なけなしの小遣いはたいて葉っぱ買った人たちもいるんだぁ!!!!!」
「イエーッス、イエッサー」
「わかってんのかぁ!!!!!」
「エエエーッス、イエッス」
「だったらすぐにジョイントしろっ」「もう一本っ!!」
「イエス」
電話が鳴った。
「はい、スヌープ・ドッグ取り調べ係りの菊池ですがぁ??」
菊池は、少し面倒くさそうに電話に出た。
「あっ・・これはこれは荒井先輩」
菊池は、相手が荒井先輩だったので少しシャキッとし、加藤茶のような喋り方になった。
「先日はどうもご馳走様でした」「あ・・そういえば先輩あの店にグラインダー忘れたでしょ?」
菊池がとんでもないことを言い出したので、荒井先輩の声は引きつっていた。
「出てきた?」「いゃ、良かったですね、心配してたんですよ」
かなり興奮して声が大きくなっていた菊池に対して、荒井先輩の声は小さかったので、菊池は「はぁ?」と聞き返した。
「2本ですねぇ?わかりました」
確認は小さめな声だったが、すぐに菊池の声は元に戻った。
「いやぁっもう~アメリカじゃ偉いかどうかなんか知りませんがねっ、おとなしいもんですよ・・ちょっと私、吸い過ぎたかなぁ?と思うくらいで」
菊池は笑い、「はっ、そんじゃあまぁ失礼しますっ!!」と言い電話を切った。
菊池は、一服するといつもの伊武雅刀節に戻った。
「オイっ!!」
「イエース」
「バーーカなことしやがって!!」
「アイーン」
スヌープはジェスチャーまでつけた。
「欧米諸国じゃ大目に見られているかどうかしらんがなぁ、この日本じゃ堂々と吸ってフラフラしている愛好家なんかひとりしかいないんだぁぁぁぁ!!」
菊池は熱くなって机を叩いた。
「やめてください先輩」
記録を取っていた西田が間に入った。
「警察をなめるんじゃねーよっ!!!」
「クリップスと抗争するつもりですか?」
「わかってるよっ!!!」
「すいません私にも六本木お願いします」
西田がギャグを言ったが、誰も気づかなかった。
「オイっ!!」
「イエス」
「これでジョイントしろっ」
「イエス」
「もう1本」
「イエス」
電話が鳴った。
「ちょっと待ってろっ!!」
菊池は、オカマのような志村けんのような口調で電話に出た。
「はいーん!!」「スヌープ・ドッグ・・取り調べ係りのぉ・菊池だがぁ?」
「あぁっ!!サンソン部長っ!!菊池ですっ!!ご無沙汰しております!!」
菊池は、サンソン部長とねんごろな間柄だったのでテンションが上がった。
「先日は仲人をしてくださいましてありがとうございました」
菊池が結婚式のお礼を言うと、サンソン部長は夜の話を突っ込んできた。
「はい・・・」「えぇ・・・」「もう4ヶ月の子どもが・・・」「はぁ・・・」
菊池は、照れながら答え笑った。
サンソン部長が急に話を本題に変えたので、菊池は「はぁ・・・」と聞き返した。
「5本ですね・・・」「わかりました」
菊池は、しゃがれているが優しい声で確認した。
「いやぁ~外人と言えどもね・・・やはり人の子ですわっ、さっきクッキー焼いてやったら喜んで食っとりました」
菊池は笑い、「ほんじゃぁまぁ失礼しますぅ」と言い電話を切った。
菊池はクッキーをかじり、スヌープに向かって「アイーン!!」と言いながらポーズを取ると人が変わった。
「イエス」
スヌープは、冷淡な調子に戻っていたが、笑いを堪えていた
「ライブ中にウィード吸ってぇ、オマエぇ・・・度が過ぎるんだぁ!!あぁぁっ!」
「イエス・・・イエシュ」
「反省してるんならこれでジョイントしろっ!」
「イエス」
「もう1本っ!!」
「イエス」
菊池は、また一服すると、石のようになった。
電話が鳴った。
「あぁぁ~っスヌープ・ドッグ・・・特別ぅ取り調べ係りのぉ・・・菊池だ~っ」
菊池は、踊る大捜査線の和久さんのような、落ち着いてどっしりとした語り口で電話に出た。
「おうっ!!」
菊池はむせた。
「これは、これはっ!!」「どうも・・・室井警視総監殿・・・」
菊池は、いつも室井さんと呼んでいたが、少し驚いたので丁寧に言った。
「あ・・・30本ですね・・・わかりました・・・まかしてください・・・」
菊池は、30本という数に内心動揺していたが、腹の座った返事をした。しかし、その後は飛んでしまい、電話を切るまで一人で喋り笑った。
「いやぁぁぁもぉなんちゅうんですかねぇ・・・非常~に・・友好的なムードで取り調べが進んでおりまして」「あぁ・・・なぁに・・・たかがぁ芸能人ですわ・・・」