1187 喪失 | 蓼科クロニクル

蓼科クロニクル

The Tateshina Chronicles

 
2010年11月27日(土) 
 
$蓼科クロニクル-ペンションサンセットの冬
 
年末年始のペンション・サンセットはこんな感じなります。
 
 
※※※
 
 
しかしやがては君の心も消えてしまう。心が消えてしまえば喪失感もないし、失望もない。行き場所のない愛もなくなる。生活だけが残る。静かで密やかな生活だけが残る。君は彼女のことを好むだろうし、彼女も君のことを好むだろう。君がそれを望むのなら、それは君のものだ。誰にもそれを奪いとることはできない。
 
— 村上春樹著「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」第16章より

 
 
初版が1985年刊だから、いまから25年前の作品であり、僕が手にしている初版本はいつのまにか25年にも及ぶ時空間の旅を僕と共に過ごしてきたことになる。その間に25回読み返しただろうか。そして、今回この言葉を「発見」したのだった。
 
たった1度読んだだけで、その小説の言わんとしているテーマや語っている世界観を理解できてしまう能力のある人がうらやましい。僕はこの期に及んでようやく、この作品を理解し始めているところなのだから。
 
自分がどれほど心を求め、心を大切にしてきたか、またその一方で、時として心をないがしろにしてきたかに思い至る。人間関係や夫婦関係あるいは恋愛において僕が感じてきたある種の「喪失感」は、じつはそこに「心」が無いことに対する喪失感であったことがいまならよくわかるのだ。
 
心が無くても快適に生きていくことはできるし、大きな成功や外形的な「しあわせ」だって手に入れることができるかも知れない。しかし、そこに心がなければ、際限のない喪失感にさいなまれ続けることに変わりはないのだ。



from 信州蓼科高原・標高1800m
 
 
☆たてしなラヂヲ☆


http://twitter.com/tateshina_radio
   

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