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 第6回高校生模擬裁判選手権開催 4 にまとめた,湘南白百合学園高等学校が優れているポイントの続きです。

湘南白百合学園高等学校の優れているポイントその(5)
 予期せぬ不測の事態が生じたときでも落ち着いて臨機応変に対応できていること


 証人尋問や被告人質問が行われるときには,往々にして予期せぬ答えが返ってくるもの。
 証人尋問等の前に綿密な打合せ(「証人テスト」と呼ばれます。)を行うことで,自分が申請している側(検察官であれば検察側証人,弁護側であれば被告人質問等)の主尋問であれば,通常,よく準備することで予期せぬ答えが返ってこなくなるように心がけることが可能です。
 それでも,実際の裁判では,被告人等が緊張のあまりか,事前の打ち合わせとは全然違うことを話してしまい,いくら「私との事前の打ち合わせではこのように話していましたよね?」,「私との事前の打ち合わせで話したほうが正しいのではないですか?」と答えを事前の打ち合わせのほうに引き戻そうとしても不可能な場合もあります。

 まして,今回の第6回高校生模擬裁判選手権では,証人役も被告人役も弁護士が担当し,かつ尋問者との事前の打ち合わせは全くない中で行われています。
 事前に綿密な打合せがなされている場合でも予期せぬ答えが返ってくることがあるのに,このような打合せがない中でであればますますそのリスクが高まります。

 また,証人尋問や被告人質問における反対尋問の場合には,実際の裁判同様に事前の打ち合わせができませんので,このときにも実際の裁判同様に予期せぬ答えが返ってくることがあり得ます。

 このような,予期せぬ答えが返ってきたときにどのように対処するかという点は,我々法曹関係者にとっても腕のみせどころというべき難問。

 今回の第6回高校生模擬裁判選手権の教材では正当防衛といえるだけの,被害者が被告人の首を絞めそうになっていたという「急迫不正の侵害があったかどうか」が大きな争点になっています。
 この点,被害者は事件の記憶が曖昧で「被害者が被告人の首を絞めそうになっていたかどうかについてはよく覚えていない。」と供述しています。
 被告人は,犯行前後の状況についてやや曖昧な供述をしつつも,「被害者に首に手をかけられて,今にも首を絞められそうであった。」と供述しています。
 検察側証人は,事前に配布された教材では「被害者が被告人の首を絞めているかどうかはよくわからなかったものの,被告人の首のあたりに被害者の手がいっていたのはわかった。」と供述しています。
 しかし,検察側証人は,法廷では,「被告人の首のあたりに被害者の手がいっていたかどうかはよく見ておらず,わからない。」と供述する設定になっていました。

 そして,このような有罪・無罪を決するような重大な事情について,尋問では,事前に与えられた教材と違う答えがなされ,その場合に臨機応変にどこまで対応できるかを問うということになっていたのでした。
 
 「なんて意地悪な設定!!」と思わずにいられませんでしたが,大会関係者の1人に聞いたところでは,「高校生のレベルが高すぎてこのような設定を入れておかないとおもしろみがなくなってしまう。」なんて言っていました。
 そんな難しいところの対応でも,湘南白百合学園高等学校の生徒さんたちはよく頑張っていました。
 検察側であれば「法廷で話したことが真実であること」,弁護側であれば「少なくとも捜査(取調べ)段階では法廷で話したことと違うことを話していたこと」を引き出していたからです。