2024年度から、鼻から吸引タイプのインフルエンザワクチン(点鼻生インフルエンザワクチン「フルミスト」)が日本でも認可され、使用できるようになりました。

 

痛くないワクチンとして注目されているワクチンですが、実際のところメリット・デメリットはどうなのか、まとめてみました。

 

効果について

 

欧米では早くから実用化(アメリカ2003年~、ヨーロッパ2011年~)され、注射の不活化インフルエンザワクチンと同様に、インフルエンザウイルスに対する予防接種として広く使用されており、安全性・有効性ともに確立されているワクチンです。

 

インフルエンザウイルスの一般的な侵入口である鼻の粘膜に免疫を誘導することにより高い感染防御効果が期待でき、同時に血液内にも免疫を成立させることにより感染してしまった場合でも重症化を抑制すると言われています。また効果の持続も注射ワクチンより長く、注射ワクチンの効果が約5か月間持続するのに対し、フルミストでは約1年効果が持続するとされています。

 

ただし、注射ワクチンと点鼻ワクチンではワクチンのもととなる株の種類が違うため、注射と点鼻のどちらが優れた予防効果を発揮するかは実際に流行するインフルエンザ株(タイプ)の種類によって変わってくるので、両者間で予防効果に対する明確な優位性は認めていません。

 

 副反応について

 

添付文書より副反応は、点鼻だけに鼻関連の症状は多く鼻閉・鼻漏が約50%と高頻度で認めます。さらに、発熱や頭痛などの感冒症状になることがあります。ただし、重症化することはないとされています。

 

 その他にも、喘鳴(ゼイゼイする)という副反応の報告があります。そのため、日本では2歳未満で喘鳴が強くなるため適応から外されていますが、2歳以上では「重度の喘息を有する者又は喘鳴の症状を呈する者」が要注意とされています。ただし、点鼻ワクチンは喘息の悪化とは関連なしとされています。

 

禁忌について

 

インフエンザワクチンの成分(鶏卵、ゲンタマイシン、ゼラチン、アルギニン)に対して重度のアレルギーがある方や生ワクチンなので妊婦、妊娠の可能性がある人、免疫不全のある方も禁忌です。

また、喘息の治療を行っている方、または、1年以内に喘息の発作があった方も接種できません。

 

まとめると

 

・効果については、予防効果に対する明確な優位性の差はなく、おおむね注射と同じと考えられます。

・副反応は、点鼻だけあって鼻水、熱など感冒症状が出やすいです。

・喘息治療中の人は、注射ワクチンを推奨します。

・生ワクチンなので、妊婦、免疫不全者、ゼラチンアレルギーのある方、中枢神経系疾患の方は、注射ワクチン一択と考えます。

 

→注射よりも点鼻の方ができると思える子は積極的に選んでよいと思います。

 

どちらがいい

 

鼻に入れられる点鼻薬は、嫌いな子も多く、もし嫌がって暴れた場合、腕を持たれて一瞬で注射されるのと、顔を押さえつけられて鼻に2回噴霧されるのではどちらが心理的負担が強いかと考慮の上、こどもの性格に合わせて、よりストレスの少ない方を選ぶのがよいかと思います。

 

当院でも今年度からフルミストを採用しますが、認可された初年度ということで流通が安定していないため、準備できる数はかなり限られます。ご希望の方はお早めにご予約ください!(予約等詳細については、今後順次HPに記載予定)

 

(参考出典:日本小児科学会HP、愛育こどもCLHP)