2023年11月22日、実家から家に帰る途中でカラスが

道端にしゃがみこんでいるのに出会った。

どうも飛べないらしい。近寄るとヨタヨタと車の下に入り込んだ。

尻尾が見えていたので、つかんで引っ張りだすと暴れるものの、どうも普通ではない。

体に傷はないが、どうも何かに激突して脳震盪を起こしているようだ。

保護するものが何もなかったので、リュックに押し込んで連れて帰った。

さっそく、無理に口を開けさせて水と餌を押し込むと

目を白黒しながらも飲み込んで、少し落ち着いたようだ。

段ボール箱に入れてその日は休ませることにした。

 

翌日、箱の外に出してみるとクルクル回ってあちこちにぶつかり、姿勢が保てない。

相当重症のようで、羽ばたくこともできない。これは長丁場になりそうだと

キャットフードを買ってきてその日から栄養補給のリハビリが始まった。

最初はぼうっとしていたのか、人が近づいても逃げなかったが

だんだん人を恐れるようになった。もともと完全の野生で成鳥になっているので

人には絶対近づかないのだ。

 

それからずっとリハビリが続き、すっかり元気にはなったものの相変わらず

飛ぼうとしないカラスを相手に、日々餌やりと彼か彼女が散らかした

ゴミの掃除に明け暮れた。

段ボールの縁に1日中止まって、餌を食べ、水を飲み、そして紙を破いて遊ぶ

を繰り返していた。相変わらず羽ばたく気配もなく、まるで飛ぶことを忘れたようだった。

 

しかし、つい2,3日前、びっくりして走って逃げたとき

ついに飛んだ。1mぐらいしか上がらなかったが、それでも「飛ぶ」ことを思い出したのか

その後もあちこちぶつかりながらも飛ぶ距離が増えていった。

 

そして今日、ベランダに出した時、空を見上げて手すりに飛び乗ると

軽やかに羽ばたいて隣の建物の屋根に止まった。

そこで一度振り返ると

再び大空に向かって

気持ちよさそうに飛び立っていった。

その姿はごく普通のカラスで、飛ぶのは当たり前だよね、というほど回復していた。

 

最初はもう飛ぶことはできないのかとあきらめていたが

およそ3か月の間、不本意ながら人に世話になって養生していたのだろう。

カラスは害鳥として嫌われたり怖がられたりするけれど

わたしはその場に倒れている仔を見捨てるわけにはいかない。

 

またね。

元気でね。

餌は当分おいておくから、いつでも食べに戻っておいで。