壹番館洋服店店主のブログ

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1930年創立 歴史と伝統が誇る確かな技術『壹番館洋服店』

今朝の一冊は北井一夫の1970年代NIPPONです。

北井さんのあとがきに、「農村の人口は労働力として大都市に吸収されつづけ、農村の過疎化が進行していた。1970年代は、農業中心の村社会と人間関係が崩壊し、古き良き時代の日本が終わった時代でもあった」とあります。

北井さんは日本の農村部の写真を撮り続けた。70年代にはごく普通の場所と景色であったものが、50年近く経過した今、存在することのない失われた風景や景色となり、写真だけが残った。

以前、京都の志村ふくみさんのお宅の近くの精進料理屋さんに伺ったことがある。1日に1組しか取らないお店だった。取らないのではなく、取れないのだとご主人がおっしゃった。全て炭で調理をするので、それが限界だそうだ。ご主人いわく「日本の食は戦後のスーパーマーケット進出から激変した。保冷技術、輸送手段の革新により、地産地消が変わった。それによって農業も変わった」と・・・

良いとも悪いとも言わなかった。ただ戦後80年近くが経ち、その日の食べ物にも困っていた日本は人口あたりの食料廃棄が世界一となった。形は豊かになり、心は貧しくなった。

5年前に阿蘇の後輩の農家に遊びに行った。晩御飯にと、庭で飼っている鴨を2羽シメて食べた。さっきまで歩いて鳴いていた鴨の首を捻り、落とすと、みるみる生命はモノへと変わっていった。都会のスーパーの食品売場で、それらが命であったと気付くことはない。「あそこの鴨南蛮の鴨はちょっと固いねぇ」などと罰当たりを平気で言う。

北井一夫が撮りたかったのは、こんなことかもしれない。50年前にすでに気付いていたのだろう。人が見ることのできないモノを形にできるのが優れた芸術家だと思う。第一回木村伊兵衛賞の受賞は納得だ。

壹番館にも50年以上経つ服が修理で持ち込まれる。ご本人のこともあれば、ご子息やお孫さんの事もあり、最近では奥様も形見としてお召しいただく。新しい素敵なデザインを創ることも大切な仕事だが、北井一夫さんが大切にしたかった想いを繋いでいく気概を忘れずにいたいと思う。





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今朝の一冊はGiorgio Armani。
言わずもがなの、この一冊。
1975年から始まったファッション界の伝説は皆さま勿論ご存知のこと。

Armani の伝説は多岐にわたります。

第一には服の構造的革命。英国的趣味を色濃く反映させながらも、特にジャケットの内部構造を劇的に変化させました。軽く、しなやかに!
それまでの英国的ジャケットは動詞にmake でなくbuild (古語)が使われたように構築的なものだったのですが、アルマーニはドレープ性豊かな柔らかい服へと変化させました。

第二は素材の革命。それまでは番手の高い生地が高級とされていた服地の価値観を激変させました。安価で安物とされていた化学繊維を使い、デザイン性豊かな服地のクリエイションの扉を切り開きました。

ココ・シャネルもそれまでのコルセットで締め上げた窮屈な女性服の世界を、ツイードなどの素材を使い快適で機能性の高い服に仕上げ女性の社会的な活躍を服飾の面からも後押ししました。
その革命を男性ファッションの世界で起こしたのがアルマーニです。
アルマーニのデビューである1975以降は、従来の製造業の社会から、サービス業全盛の世界へと社会構造が大きく変わる瞬間でした。カタカナ職業と言われる新しい職種が多く誕生しました。その流れをファッションの面から印象づけたのがアルマーニでした。

第三にはその売り方の革命です。店舗の雰囲気も素晴らしく88年に遅ればせながら訪れたミラノの本店の強烈な印象は今でも忘れません。まるでモデルのようなスタッフに接客してもらい、更にピン打ちは奥から白衣のスペシャリストが出てきてのフィッティングに痺れました。素晴らしい環境の中、そこまでされると皆、にわか健さんならぬ、にわかリチャード・ギア(1980 American Gigolo)よろしく、買わずにいられません。
つまりは、服そのものの価値もさることながら、イメージこそが重要であるという価値の革命です。

イメージ戦略として、店舗は勿論のこと、毎月雑誌を飾る広告戦略、ハリウッドを中心としたメディア戦略、そしてミラノ市内の巨大広告まで・・・ それまでのファッションとは劇的な違いを見せつけてられ、皆ノックアウトされてしまったのではないでしょうか?

その後、ソフトスーツはパンチパーマの地上げ屋のおじさまと共に悲惨な末路をたどりますが、アルマーニはとにかく知的でカッコ良かった。
今見ても新鮮で素敵だと思います。








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今朝の一冊はAugust Sander.   Men’s hen des 20. Jahrhundertsです。
ファッション・デザイナーなら皆何らかの影響を受けたはずであろう名著です。
通常のポートレートが有名人を扱うケースが多いのに対して、この本では社会のあらゆる層、特に労働階級や迫害されるユダヤ人などに焦点を当てています。
それはザンダーが鉱山業で働く大工の子としてうまれ、自身も鉱山で働きながら写真を覚えたことと関係があるのかもしれません。
この時代は社会階級と服装が明確にリンクしていることが読み取れます。
1876年生まれのドイツ人・ザンダーは、ナチス・ドイツの時代は多くの制約の中で暮らしていたようです。ファッション的な興味だけでなく、現在となっては貴重な社会資料としての写真を残してくれています。
私の大好きなデザイナーである山本耀司さんもザンダーから多くのインスピレーションを得たようで、そういった面からも、耀司さんのコレクションとこの写真集を見比べて、デザイナーの解釈の方法や理解の深さを学ぶのも、大いなる楽しみです。
先日ご紹介したIrving Pennが撮った労働者達は50年代なので、戦前と戦後、またヨーロッパとアメリカの一般市民の服飾の違いを楽しまれても良いかと思います。

今、何気なく我々が目にする服装も50年経つと、驚きのものとなっているのだと思います。





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今朝の一冊はMatthew Barney。The cremaster cycle
この類いの写真、朝からいかがなものかというご意見もありますが、画面から伝わる妙な静寂感が心地よい緊張感を与えてくれます。

昔、美容界のカリスマ、BOYの茂木さんが「しんちゃん、マシュー最高だよ、映像見た?」と勧めてくれたのが最初の出会い。

2005年の金沢21世紀美術館での個展も、かなり刺激を受けました。パートナーだったビョークが絡んだ写真に若干の違和感を感じたものの、それも現代美術の面白さかもしれませんね。

Cremasterの意味は、朝一番らしからぬ医学用語なので、割愛させていただきます😓






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今朝の一冊はArt Deco Interior です。
個人的にもアールデコはファッションでも建築・インテリアでも大好きなデザインスタイルです。
また、弊社の創業が1930年なので、まさにアールデコドンピシャのタイミング。と、言うこともあって今回の改装もアールデコデコがいい❗️とデザイナーの高山さんに言い続けていたのですが、上がったイメージは全く違ったスタイル😳しかも、想像していたより遥かに良い。
オーダー・メイドの難しいところですが、クライアントの言う通りにやるのが絶対的に正解ではなく、クライアントには見えていない素晴らしい景色をいかに協力し合いながら見る事が大切だと思うのです。
また、一方的にデザイナーの趣味をクライアントに押し付けるのもカッコ悪い。

JAZZでいうところの、インプロビゼーション❗️譜面通りではなく、その時々の雰囲気やメンバーによってどんどん進化・発展していく👍 これが、オーダーメイドの楽しさです。

オーダーメイドは一見、クラシックのような譜面にそったコードのように思われがちですが、クライアントとテーラーで繰り広げられるセッション。変化・発展していくテーラードのモードの世界をお楽しみください。

本をあらためて眺めていると、今まで気づきませんでしたが、Art Deco と弊社の新しい内装との接点が見えてきました。空間の間の取り方や静寂性など、明らかに繋がっているようです。さすが、出来るデザイナーは一味違う。恐れ入りました。

昔はラリックのオリエント急行のパーティションなど(下段右)、クリスティーズのオークションに普通に出ていましたが、今はどうなんでしょう?そういえば、電通の銀座旧本社にも、当時のラリックのパーティションがあったような気がしますね。吉田秀雄さんのご趣味かしら?素敵‼️
下段中央のRuhlmanのElephant chair 痺れます。






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今朝の一冊はKABUKI by KISHIN 篠山紀信先生の写真集です。
篠山先生とは、中村獅堂さんのお母様が繋いでくださったご縁でずっと可愛がっていただいております。
先生の仕事のスタートが銀座のライトパブリシティであったこともあり、歌舞伎座の撮影の後などお声掛けいただき銀座のカウンターバーでお酒や葉巻など一緒に楽しませていただいております。
飲みの席でもずっと貴重な仕事の話をしてくださるので、クリエイターの大先輩の生の話として、大いに勉強になります。
おハダカの写真は勿論、有名ですが(激写‼️)、歌舞伎の写真も先生のライフワークです。坂東玉三郎さんから始まった先生の歌舞伎写真ですが、それはそれは素晴らしい‼️先生は江戸の浮世絵の芝居絵のような写真をイメージして、シャッターを切っていると話してくださいました。
玉三郎さんをはじめとして、命懸け(大袈裟ではない)で仕事に取り組む役者さん達のエネルギーが炸裂する写真集ですが、私の興味はその衣装にもあります。
今まで見たこともないような色合わせや、テーマや季節感を持ったデザイン等。これ程刺激を受ける媒体は他にありません。

歌舞伎写真を含め、先生の大展覧会が今年企画されています。展覧会のデザインは業界のレジェンド、ライトパブリシティの 細谷巖さんだそうで、こちらも楽しみですね。コロナ明け、次の時代を切り開くパワー全開の展覧会。今からワクワクします。






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今朝の一冊はTHE SAVILE ROW STORY An illustrated history Richard Walker です。
サヴィルロウとはロンドン中心部にある通りで、最高級の仕立屋が集まっています。まさに、紳士服の聖地です。婦人服の聖地パリのアヴェニュー・モンテーニュほどの広さはありませんが、硬派で趣きのある通りです。
紳士服の歴史を見ると、その時々の社会構造が見えてくるのが面白いところです。
サヴィルロウを代表する店の一つであるHenry Pooleは1806年創業で200年を超える社歴を誇っています。創業当初は軍服の仕立てを行なっていたようですが、産業革命で社会構造が変わるにつれて、フロック・コートなどの仕事服の仕立てが増えたのだと思います。また、交通機関の主軸が馬から自動車・汽車に変わるにつれて丈が短くなり、現在のスーツの形に近づいていきました。その後、船旅から飛行機に遠距離移動の方法が変わるにつれ、当然服装も変わっていきます。
この変化は服にとどまらずルイ・ヴィトンは船旅用のトランクからバッグに、エルメスも馬具からバッグに主力商材を変えて経営を継続してきました。
今回のコロナ禍で、社会構造や生活スタイルが大きく変わると思われます。カタカナ職業の台頭やクールビズで始まったスーツ離れは、今回のリモートワークで決定的なものとなった感があります。
仕事のユニフォームとしての地位を降り始めたスーツですから、今後は仕立屋も趣味性の高い個人の服や、楽しみの服づくりに変わっていく事が必然でしょう。
それは、まるで明治維新で日本の正式な服が着物から洋服に制定(明治5年太政官布告)されて以降の呉服屋さんの動きのようです。
太政官布告が出されて150年が経過していますが、街のいたるところに呉服屋さんは健在で、隆々とご商売を続けていらっしゃいます。勿論、150年前とは商材の内容は変わっているはずですが、個人の趣味や個性と向き合いながらお仕事を続けられる姿は大いに勉強になります。
コロナ禍で大きく変わる社会と向き合いながら、お客様の喜びや楽しみのお役に立てるよう、精進していきたいと思います。






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今朝の一冊はAlan Flusserのclothes and the man 
The principles of Fine Men’s Dress です。メンクラからポパイへと育ってきた世代にはお馴染みの本だと思いますが、その後80年代からのイタリアブームで少し縁遠くなってしまったかもしれませんが、いまだに新鮮で素晴らしい内容の本だと思います。
男性でしたら避けては通れない基本が含まれており、ヨーロッパの服飾文化がアメリカでどのように発展・進化したかが分かる本です。

Introduction で面白い記述がありましたので載せておきます。
ケーリー・グラントは大きな頭をしていましたが、気づかれた人はあまりいないのではないでしょうか?それは彼が上手に装う方法を知っていたからです。装いの、TPOだけでなく、彼独特の体型に合った装いの仕方を知っていたからです。つまり彼は頭の大きさを強調してしまう自分の肩幅どおりのスーツを避け、頭を小さく見せる実際よりも広い肩幅のスーツをいつも着ていたからです。・・・ほとんどの人が上手く装うことを、ファッショナブルに装うことと取り違えています。ファッションはその言葉が示す通り移り変わるものです。最新の流行を身に着けているからといって、必ずしも装うのがうまいとはかぎりません。

着こなしも、孫子の兵法が活かされているんですね。

「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」

アラン・フラッサー
1945年生まれ。アメリカ人。シャツメーカーのスタイリストとして仕事を始め、その後独立し自身のブランドを確立。1987年映画「ウォール街」でマイケル・ダグラスの衣装を担当。





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今朝の一冊はDress to kill 007です。
もう、見た瞬間に頭の中で、あの音楽が鳴っていますよね。
ジェームズ・ボンドを演じる各俳優陣もそれぞれ個性的で魅力があり、皆様の好みも分かれると思います。演技や容姿だけでなく、各俳優陣それぞれの着こなしも痺れますね。
右下は1967年 You Only Live Twice でのシーン。Anthony Sinclairのスーツで颯爽と銀座の路地を歩くSean Connery。ルパンや天ぷら新京星の看板がシュールですね。
シュールといえば、SpectreやDr Noの衣装が秀逸ですね。東西冷戦下での不安感と相まって、不気味な雰囲気を醸し出しています。
現在は、また違った政治状況ですが、007のディナー・ジャケット(タキシード)姿は永遠にカッコいいですよね。





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今朝の一冊はAxel Vervoordt のLiving with light です。
この本は今回の弊社改装のアイデアソースとなった本のうちの一冊です。
アートをいかに生活の中に取り込むか、家の様な場所でいかにエネルギーを補給・チャージするか。
このようなコンセプトを立てるにあたり、この本は大いに刺激を与えてくれます。
おかげさまで、今回の改装で、ただ服を仕立てる場所から、更にお客様の想像力をかき立て、我々作り手も、もっと創造的な仕事ができるような舞台を創っていただきました。
関連書籍も多く出ていますので、ご覧になってはいかがでしょうか?
序文がとても良かったので載せておきます。

Seeing is feeling with your eyes. Jef Verheyen (1932-84) 

Lux est lex.  Light is law. My close friend, the late Belgian painter Jef Verheyen, first uttered this sentence years ago, and it continues to have an important effect on my life and work today. His words are authentic and true. Light is law. It is power, force, and life. Light is an energy that helps create the world and define our experiences. It informs every aspect of life and our unique way of living in this world. Jef's paintings are deep meditations on the phenomena of light, landscape, and color. Through my experiences with his work and his passion for life, I learned to see the world differently. I discovered an openness for art that seeks to transcend time and space to reveal deeper meaning. I learned, in his words, to feel with my eyes. In my life-and from a young age–I have always had the good fortune to count among my friends many artists. In addition to Jef, I've been lucky to have close friendships with philosophers, architects, gardeners, scientists, and musicians who have helped me to experience the world in new and interesting ways. Through their work, they have enabled me to understand and develop connections between the past, present, and future. It has been my goal in life to share this knowledge through my work, while developing a phi- losophy of living that seeks to embrace time and explore the nature of being. We live at an increasingly fast pace in today's world. The way we live in our homes should offer balance and harmony. The space in which we share our private experiences with family and friends should not take energy, but restore and give energy. A home should not only be an escape from the outside world, but also an enlightening space that makes us happy. A house should reflect the personality and way of life of its owners. Our biggest aim is to ensure that people feel content in their homes, so that everyone who enters can also feel the happiness of life. Often, creating a home means searching for this emotion in every decision that's made.







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