おはようございます、よら天子です
とうとう《塚口旅情~思い出しておくれ森繁節を。森繁久彌特集》もオオトリがやってきました!
『駅前旅館』
6/18(土)~6/24(金) 10:10~12:00 (1日1回上映)
一般1000円 その他(会員様 学生 シニア 他)800円
(C)1958
前景の人物が主題を語っているのに、後景の人物(多数)が面白い動きをするので、何回も見たくなりますものすごくやかましい画で、ものすごく楽しいです
あらすじはキネマ写真館さんが一番細かいので、こちらをクリック
(ネタバレあります。というよりエンディングまでガッツリ書いています)
古い映画に慣れていない方や、時代背景に詳しくない方はぜひ、お読みください。
情報量が多いだけでなく、台詞回しも早いためあらすじを知っておいた方が見やすいと思います私はちんぷんかんぷんでした見ておけば良かった
番頭さんって、旅館の裏方で客引きとかしないイメージを持っていました。なので、客引きのシーンにかなりビックリしました戦場です
洋服を着ているし、『社長太平記』も普通に理解できたので、「なんで?どうして?え?それでいいの?」のオンパレードでした…
本当に理解できなかったのが、女中のお京が何度もカッパに連れ去られそうになるところ。
もう誘拐レベルの強引さなのですそれが公共の場ならそんなに驚かないのですが、カッパが旅館の勝手口に迎えに来るんですね。「…応対しなければいいじゃないかーーー!!!」とか思う私は浅はかな現代人です。
当時の旅館は女中の連れ去りもあったし、凄く危ない逸話を上司から聞いてとなりました。
そういえば『赤線地帯』って何年の作品かな?と思って調べたら1956年。赤線のウィキペディアをご覧ください。→こちらをクリック
「東京の場合、カフェーらしくするため、1階にはダンスホールやカウンターなどが造られた。」と書いています。
ダンスホールのシーンありました!!!キャバレーだと思っていました!!!
結末では、現代の旅館に変わっていく様が垣間見えます。その表し方が小気味良いので、寂しさと楽しさといっぺんに味わえますよ
古いしきたりがまだ残っている時代、でも近代化がどんどん進む時代…時代と時代の狭間が見える濃厚な映画です。
良くも悪くもざっくばらんだった、混沌とした時代だったんですね。この映画を見た後、シアター4(1階の劇場)横通路にある当劇場の写真を感慨深く見るようになりました。
痴漢映画の看板の下で、子どもが遊んでいますこれってすごく『駅前旅館』な世界感ですよね。「いや、世界感って実際のノンフィクションな写真だもんな~…わぉ。」って思いました。
受付スタッフに一声お掛けいただいたら写真ご覧いただけます。「横通路のサンサン劇場の古い写真を見せて」とおっしゃってくださいね
本当は、フィルム本体のお話をしようと思っていたのですが、『駅前旅館』の世界が奥深すぎて…また長文に…さらに延びます…よろしくお付き合いください
『駅前旅館』のフィルムが届いた時、『社長太平記』のフィルムをつないでいました。
『社長太平記』のコンテナ(コンテナって何なのさ!という方はこちらをクリック)は7巻。
『駅前旅館』のコンテナは13巻。(※無理して読まないでください)イヤダーイヤダーコレッテフルイフィルムッテイッテイルヨウナモノデショーモーワタシミタイナヒヨッコガツナグトムダニジカンガカカッチャウシサーデモツナギハスキナンダヨーナニソレフジョウウリマックスーあ、家でマッドマックス見ようという呪文を唱えながらつなぎました。
またブログの更新がギリギリ(たまに初日すら間に合わない事も)せ…精神統一が必要なんですよ…精神的虚弱体質なので…ゴホゴホ
『駅前旅館』はコマ飛び見られます。コレに関しては下の方で、ご説明させていただきます
今回の森繁久彌特集は、フィルムの質がすべて違っていて、
「ほ~」っとなったので皆様にもお伝えしたく、ブログを書きます
(C)東宝1952
と、思われますというのは、情報が書かれていないのでぱっと見ではわかりません。フィルムを触ってみて「あは…は…」とかわいた笑いが出る頻度でわかります。つまりは補修跡や補修が必要な箇所が多いと、「当時のフィルムだろうな~」と思うんですね
【目切れ】
画の横っちょに切れ目があります。これをテープで補強します。
50個以上連なって目切れがある場合もフィルムの性質については、前にも何度かブログで書きました(どこで書いたか忘れたので、興味のある方はテーマの35MMフィルムを…34件も記事ある…
簡単に言うと、手でひねるとパキッと切れるフィルムと、しなる強靭なフィルムがあります。
パキッと切れるフィルムに多いのは目切れと目壊れです。
【目壊れ】
この目壊れのフィルムはいらないフィルムです。このいらないフィルムを使って、目壊れの欠けた部分を補強します。この画像のフィルムは補強した後の残骸になります。
この直し方を知らなかったばっかりに、『“山中貞雄”を見たことがないのは、チト、サビシイ』特集の時上手く直せなくて悔しかったです。ゴメンナサイフィルム…
ただ、これらの傷を補修しても、補修した所以外が切れることもありますし、まったく補修しなくてもフィルムが切れない時もあります。映写機のメンテナンスも関わってくるので、一概に「これだから大丈夫!」ということはありません。フィルム到着から初日を迎えるまでの時間制限がある中、補修すべきかどうかの見極めも、映写技師の腕の差が出ると思います。
私、手当たり次第で時間がかかって…腕ないわぁ…
あ、前のブログで言っていた印はこちら↓
今見ても涙ぐましい…ありがとうございます、印を入れた映写技師さん
そして第二弾 『社長太平記』
(C)東宝1959
こちらも面白い作品で、紹介したかった~…
森繁さんの食べ方を真似してみたんですけど、結構難しい(何してんだ私)
こちらのフィルムは90年に焼き直したフィルムとコンテナに書いていました!
90年代なんて強靭なフィルムでしょうって思ってたら、『三等重役』より綺麗なんですけど、手で切れるフィルムでした
90年に焼き直した作品はすべて強靭フィルムだと思い込んでいました。
「強靭フィルムだと、元のマスターフィルムの画が上手く載らないのかな?」とか「『三等重役』より綺麗だけど、これが50年くらい経過したら、『三等重役』みたいにパキパキに切れるフィルムになるのかな?そういうのが経年劣化?」と疑問がフツフツと湧いてくるフィルムでした。
フィルムのことに詳しい方にお話を伺うことができたら、またこちらのブログでお知らせしますね気長にお待ちください~
そして本日より第三弾 『駅前旅館』
こちらは「初期のイーストマンカラー」作品!
前に『雁の寺』の上映の時、イーストマンカラーの褪色について乏しい知識で書かせていただきました。興味のある方はこちらをクリック→その①、その②
『雁の寺』ほどの激しい褪色はありませんが、恐ろしかフィルムでございました
そう、このぺろ~んと剥がれている劣化を、エマルジョン剥離と言います…私の魂も剥離しました
画像で言うと、画の面がエマルジョン面、裏側はベース面といいます。
ベース面にキズが入っても透明のフィルムなので目立ちません。スクリーンに映るキズのほとんどが、エマルジョン面に入ったキズです。
この剥離は↓のように補修しました。テープは重ねたくないのですが…この方法しか…
このフィルムは、今までのいろんな映画館の映写技師たちを泣かせてきたみたいです。
すごい涙ぐましい補修跡がたくさんありました目壊れも多数ありました『駅前旅館』最後の方で映写室からカチャカチャカチャカチャン!カチャカチャカチャカチャン!と私を怯えさせる音が目壊れのところです心臓縮みます。客席まで聞こえるので、お客様、一緒に縮み上がってください
剥離が進んで、画が元に戻せない時は泣く泣くコマをカットします。これがコマ飛びになります。私はカットしなかったのですが、それは前の映写技師さんたちが頑張ってくれたお陰なんです。画を、コマを一コマでも残そうと努力した跡がたくさんあり、泣きそうになりました
なるべくいつまでも映写機にかかって上映されて、いろんな人の目に触れて欲しいという映写技師共通の思いを感じました。
コマ飛びがあると、セリフも飛びます。でも、そのコマ飛びには、いろいろな映画館を経てきた時代の流れでもあります。サンサン劇場の後にも、上映する劇場はあります。何年も何十年も経ってから見る『駅前旅館』はもっとコマ飛びが多いかもしれません。
最後の言葉を書いては消し、書いては消し…を繰り返していますうまく伝えられないです~
DVDやBDの方が良い!と言われる方もいると思います。でも、劇場内で知らない人の笑い声や映写機のカタカタという音の中で見る、コマ飛びのあるフィルム上映を「味のある時間」と感じていただけたら、幸いです。今、サンサン劇場で見ることで、流れ続ける時代の一瞬を感じていただけたら、映画館冥利に尽きます。
皆様のご来館を心よりお待ちしております