ちと雑談。


1980年代後半から1990年代初頭、日本はバブル景気でした。
この頃世界はアメリカを中心とした市場主義とソ連(現ロシア)を中心とした共産主義とに二分されてました。

アメリカ中心の世界(西側諸国)では


 アメリカが
「あのヨーロッパ諸国が束になって敵わなかったドイツを打破する決め手になった圧倒的生産力」
「あのロシア、中国、ヨーロッパ諸国が敵わなかった日本を壊滅状態にまで追い詰めた圧倒的軍事力」
という国力を原資に紙幣を刷り
 西側諸国はアメリカの紙幣と交換で物資を売り、紙幣を原資に自国の国力以上に自国の紙幣を刷り
 2で水増しされた自国紙幣で国内の景気を循環させる(水増し分の紙幣で下のBの状態に)


というステップを踏んで好景気を享受していました。

資本主義の世界では需要と供給は極端に偏らない限り大体一致するポイントへ自己修正する能力を得ていたため
それほど致命的な隙を見せることはありませんでした。


A 需要が供給より極めて大きい場合  :物価が高くなりすぎて誰も買えない。紙幣が無意味化。ハイパーインフレ。
B 需要が供給より大きい場合     :物価が高くなり、「これは売れる!」と供給サイドががんばる。長期化すると好景気。
C 需要と供給がだいたいあってる場合 :並みの景気。イベントがなければここへ落ち着くというのが古典経済学の考え。
D 需要が供給より小さい場合     :売れないので供給を減らす。損切り、赤字売り。長期化するとデフレ。
E 需要が供給より極めて小さい場合  :売れないので誰も作らず供給が消える。結果生活必需品は一気にAへ吹っ飛びスダグレーションになる可能性あり。

・B~Dの間ならCへ移行する(理論上では一致するが現実には無理)
・A、Eになると大恐慌状態へ。


一方ソ連中心の世界(東側諸国)では


 ソ連(や東側諸国首脳)が需要と供給をみて必要数の生産を命令し
 生産された物をソ連(や東側諸国首脳)が計画通りに配布し
 配布された物資を消化する


というステップを踏んで安定した景気を享受していました。

ただ東側の世界は

・必ず供給能力は需要を上回る(上のC~Dの状態)
・余剰を正しく管理し、私物化しない

という前提条件でしか成り立たないマルクス経済学をベースにしていたため
供給能力が足りない場面(計画農場とかの失敗)には無策でした(B飛び越えてAにいく可能性が高い)
元々資本主義の果てに「水と安全は無料」とか言うレベルでゆりかごから墓石まで全部無料の世界こそがマルクス経済の出番とかマルクス自身も言ってたそうですし仕方ないのかもしれません。


さて、バブル崩壊後、世界ではBを目指して年率3%程度の成長を目指していたのに対して
日本の財務省はCを目指して年率0~0.5%の成長を目指しました。
周りがB目指す中で一人でC狙いとか言ってれば結果としてDに落ちることは当たり前なんですが
そういう相対的な世界の話を理解しない財務省はCを目指すつもりで
Dまっしぐらという道を歩んでいます。

これ日本の伝統的な病『兵站の軽視』の表れだと思ってます。
日本の歴史的な負け戦……白村江の戦いから秀吉の朝鮮出兵、第二次世界大戦に至るまで兵站は軽視されてきました。
これはなんだかんだで担当者がヴァカでも充分な食料が集まってしまう有能な部下&恵まれた大地に育ったが故に
「食料が足りない?現場で何とかしろ!」「理論どおりなら一日一食でいける!気合だ!」式のヴァカが
淘汰されずに兵站を担当してしまうというのが大きいです。
ヨーロッパでも中国でも兵站がヴァカだと規定量の半分も集めることが出来ず、たとえ短期戦でも腹ペコ兵隊に
ミンチにされてしまうのがオチなので兵站を軽視するヴァカは普段から淘汰されて上層部に居残りずらいんですね。

そして自民党時代の小沢が残したツケ、国債の返済のためには「政府の売り上げを伸ばし返済分の利益を出せばよい」という自営業系個人や企業なら当たり前すぎる話を理解しないでひたすら節制経費削減を叫んで今に至っています。


さて、ここでひとつ皆さん質問です。
これから政府という売り上げ不足に苦しんでいるお店がやるべきことは仕入れを減らすことですか?それとも売り上げ利益を伸ばすことですか?


日本がひたすら実需だけの低空飛行を目指していた頃、アメリカではITバブルにより好景気を満喫していました。
で、このバブルがはじけたときアメリカは不動産バブルをつくり好景気を維持しました。
また不動産バブルと日本の円を元手に住宅ローンを証券化してあちこちに売って周りました。
証券化の際にローンを支払えずに破綻しかねない層(サブプライム層)の住宅ローンを優良物件と混ぜて売り歩いたのが後にサブプライムローン問題として大きな爆弾になりました。
ヨーロッパではアメリカの住宅ローン証券を原資に金融立国だの住宅バブルだの東欧/アジア新興国への投資バブルだのを起こして好景気を享受しました。
東欧/アジアでは過剰な投資を元手に上のBの状態に追い込まれ好景気を享受しました。
この日本以外全部好景気な時代ですがひとつ大きな問題を抱えていました。日本→アメリカ、アメリカ→ヨーロッパ、ヨーロッパ→東欧、アジアと金が移動するたびにレバレッジをすることで金の動きが大きくなっていたことです。


レバレッジ(梃子)とは簡単に言うと頭金を準備することでその数十~数百倍の金を(高金利で)借金する仕組みです。借金して元手を増やして投資、短期間で大きく儲けて借金を返済するとレバレッジ無しで投資をしたときとは段違いの利益が手元に残るのです。
たとえば50万円の元手でトルコリラを購入し、倍の値段(100万円)になったときに売却したとします。この場合売り上げは100万円、元手と手数料を引いて利益は3~40万くらいですかね。
これがレバレッジ100倍したとしますと50万円を頭金に5000万円を借金、これを元手にトルコリラを購入し、倍の値段(1億円)になったときに売却します。売り上げ1億円から借金とその金利、手数料を引いても軽く3~4000千万の利益になります。利益が段違いですね。

これ、利益が上がる時は良いのですが損した時は悲惨です。
上の例で半額に下がった場合、レバレッジ無しなら25万の損で済みますがレバレッジありなら2500万円の損+5000万円の借金の金利の損です。普通に破産しますよね。
そしてこれ、借金なんで時間がたつと利子が増えていきます。レバレッジを利用した取引は超短期~短期で利益を確定させないと利益を利子が食いつぶしてしまいます。そのため世界的にドッグイヤーだのラットイヤーだのという短期決戦主義者が続出することになりました。


さて、日本以外全部好景気な時代ですが2006年ごろからアメリカのサブプライムローン返済の滞りと地価上昇の終焉という形で暗雲が立ちこめ、リーマンショックをきっかけに終焉が表面化しました。
現在はアメリカは損切りを断行して100社以上の地方銀行が潰れる状態となり、ヨーロッパは借金のごまかしと東欧/アジアでのバブルを捏造することで借り換え分の金を稼いで乗り切ろうとしている状態です。そして東欧、アジアでは実需による成長に欠かせなかった「輸出先の好景気」という条件を失い投機マネーによるバブルに翻弄されています。

日本は実需=需要の堅実も良いところな万年不景気路線を歩んでいたため世界の大恐慌寸前なパニックとは無縁でしたが万年不景気路線のままじゃ世界に好景気の箇所がひとつもなくなるこの時期にいくつもの経済対策やIMFへの金貸し宣言を行っています。これが通れば日本好景気時代が来たかもしれないのですが……。


そして現在。
手段に過ぎなかったはずの万年不景気路線を至上目的とする財務省と日本解体が世界平和の道という迷妄を実行する民主党政権によって止まってしまった日本。
輸出国に転換することでバブル時代に失った国力を取り戻そうとするアメリカ。
借金の焦げ付きを延期し、帳消しにするためにバブルを煽ったり懸命なヨーロッパ。
レバレッジされた資金が途絶えてバブルが崩壊したり逆に資金が流入してバブルが生じたり戦争の舞台として略奪対象に期待されたりと翻弄される東欧、アジア。
資源はあるものの政治的な発言力がなく無視されているアフリカ、南米。


これからどうするか、さらに行動する時期が来ているのかもしれませんね。