島つなぐ手紙 ~好きだからこそ~
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FILE01 青山敦士さん/全国の宿の好きだからこそ

島つなぐ手紙~島人ブログ~ で、新しい企画スタートさせます!!

タイトルは、『~好きだからこそ~』です。

今の世の中、この好きな人がおすすめしているなら、関心持ってみようとか、

面白いものなんだろうなっていうことが、非常に多いように思います。

ジャンルはいろいろあれど、その中で「これが好きって」言ってしまえる中には、面白くて、片寄ってて、考えもしなかったようなワクワク感があるような気がします。


その部分をもっと知っていけたらいいな!っていうそれだけの企画です。

はなしを聞いたものをそのまま書き起こします。

一回目は海士町観光協会の青山敦士さんの、『全国の〈宿〉の好きだからこそ』です。




『全国の〈宿〉の好きだからこそ』

海士町観光協会職員 /青山 敦士さん(あおやま あつし)



青山 衝撃を受けまして。たぶん宿に興味を持ちだしたのって、これ『ブルータス676号』が一番のきっかけになった本なんだよね



島つなぐ手紙 ~好きだからこそ~



青山 もっと言うと星野リゾート の星野佳路さんも昔のブルータスの宿特集で今の方向に行くって決めたらしいんですよ。


小室 えー


青山 俺はこの号で初めて星野さんを知ったんだよね。


小室 そうしたら、ブルータス偉大ですね。


青山 偉大だよ、まじで。 毎回特集を組むんだけど、だから良くて、だから観光の特集じゃないと買えないんだけど。尖ってるんだよねー。それでこのタイトル付けて、本当の日本の宿はどこなんだと言う、その一発目に出てきたのが、この、「送陽邸(そうようてい) 」だったわけですよ。この特集の顔を飾っていたわけです。それがもう衝撃で、日本はついにここに目を向けたかと。というか俺は、そもそも思ってなかったんだけどね(笑)


小室 すごくきれいなリゾートホテルじゃなくてっていう?


青山 そう、これかーって。もっと言えば、こっちだったら追い付きようがあるって思った。


小室 新しいジャンルというのか、革命みたいな。


青山 これならいけるぞっていう、自分の中でガラガラガラってイメージが変わったんだよね。本自体は、その後もすごい特集で、全然かなわないなという感じだったんだけど、その時は切り離して考えてた。今思えば、ひとつひとつでお金かけなくても、盗めるところは盗める。エッセンスは分解すると実はシンプルなことが多くて、それからいろいろな宿に見たり行ったりすることが楽しくなってきたんだわ。


小室 じゃあ、この特集を見るまでは色々宿に泊まってみるとかは無し?


青山 ぜんぜん回ってなかったと思う。多かったのが駅近のビジネスホテルとかだし、宿に泊まっても・・・というのがあったけど。それを見て変わったね。この一年かけて宿のそのようなことをずーと考え出して、この手の本とか、色々なものを読みだして、日本の旅館というのは本当に相手を大切にする文化そのものなんだって分かった。花を活けることから、所作からすべてがお客様のためにという考えが徹底されている。この文化はすごいなって思って。


小室 日本の冠たるこれからの武器。


青山 本当にそう思う。全然、今でもビジネスホテルも好きなんだけど、でもそれときちっと対抗できるというか、凌駕(りょうが)できるようなコンテンツが日本旅館にあるんだなって。それから例えば、全然花のこととか分からないんだけど、ちゃんと良いところに行ってみて感じ取れるのは、生き生きとした花が活けてあってとか、温かいおしぼりのひとつを出すこととか、お客さんのことを想うってことすべてだなと思って。そういうのを見つけるのが好きになっていったんだよね。


小室 送陽邸の記事に戻って、この写真はどうなの。


青山 いや、すごいよ。白人の方が浴衣着て、リラックスしているこの雰囲気はさ、売れるでしょ。


小室 売れる。それは特集の看板に持ってきたくなる。


青山 あと俺、この海を見ながら朝食を食べている写真が、めちゃ好きで。この感じは自分が本当に体験したいって思う。これトースターでしょ。パンを焼いているのか。このセンスとか好きだなって。二人でしゃべりながらとかで、けっこう昼までいれるって思う。


小室 海の波の寄せる音を聞きながら。


青山 めっちゃ贅沢だと思う。こういうのを見だして、それから『かもめ食堂 とか『めがね 』とかを見て、まさにじゃ無かったんだけど、近いものがあるなって。




島つなぐ手紙 ~好きだからこそ~


小室 このようなものが出始めた当初は、それこそブームの形で世の中に出たけど、今事例として、もう少し中長期的に続くような可能性があるっていうか、単純に「こういうのって流行っているよね」で、片づけられないものが各ジャンルで出てきている気がする。


青山 ブルータスがこれを元にした復刻版のようなものを出して、これでさらに勇気をもらったんだけど。



島つなぐ手紙 ~好きだからこそ~


青山 ここ最近思っていたことで、マジでそろそろ今年来年あたりは、本当に日本人の関心が日本にくるぞと。それで本当の日本が残っているところってどこなんだってしたときに、離島にくるぞって思っていて。


小室 日本の中で日本が残っている離島に波がくる?


青山 このブルータスの特集は、星野リゾートを追っかけているもので、その記事の中で2011年は竹富島に宿を作って、その後に富士山に行く予定みたいでなことが書いてあって。そのスパンがまさにだなって思っていてね。もっともっと日本らしいものに日本人が分かってくれる。今のパワースポットとかが流行りだとしたら、これがどんどん地に足が付いて、神社を回るようになったりとか、日本の文化をもっとおしゃれにカッコよく再構築していくだろうって思う。そのときにきちんと、島の文化として答えられるように出来ていないと、逆にこっちが付いていけないんだろうと思っている



小室 パワースポットが流行りの最初の部分だとしたら、日本人が「これぞ日本!」っていう富士山こそ日本って思うみたいに、海士に日本っていう部分が、はたしてどこに残っているのかというのは?


青山 それは自分自身が思っていることとして、いつも言っているんだけど、俺は「旬」だと思っている。この島に来て一番良かったことって、旬を感じ取れることで。本当に小さなことだけど、この時期には蜜柑があるとか、この時期はナマコが出てくるとか、岩海苔まだ大丈夫なんだとか、これから岩ガキいつ出てくるかなとか。正直東京にいた時には何がいつ出来るのかって、まったく分んなかったと思う。海藻の変化とか魚の変化とかにちゃんと敏感になれているというのが、自分にとっては一番良かったことなんだよね。それが一番この島の売りというか、自分自身が良かったことだから、それをうまくお客さんに伝えることが出来たらいいなって思うんだよね。


青山 それと話がそれすぎるけど、俺やっぱりデカかったのが結婚で、一人で暮らしている時って食に対して気を使わなかったんだよね。焼きそば・カレーのローテーションみたいな。今は嫁が料理をするのもあって、食材が時期によって変わるというのがまざまざと毎日感じ取れる。小さい畑とか自分たちでやるようになったり、そういうのがちゃんと食べ物から自分達を大切に出来ているなっていう実感がすごくある。それが宿にもつながるというか、ただの満腹感ではなくて、ちゃんとその人を大切にしているんだよっていう、そういうメッセージを感じ取れるというのが、この島にいて一番いいことという気がしていて。


小室 そうだよね。海士にある食材とか、その季節でしか感じ取れない色々なものとかを、観光客の方に対して宿の方が翻訳して伝えれるという風になれたらいい。


青山 宿ってやっぱり、人も食べ物も寝る空間もすべてだから。旅において非常に重要な要素だと思うんだよね。大切なのは、繰り返しになるけど自分たちのお客さんは誰なの?ってということで、そのお客さんが何を求めるの?っていうこと。それ徹底的に考えなければならないと思っている


小室 送陽邸以外で好きな宿ってあります?


青山 実際行った中では、ホテルだけど『ウィズザスタイル という所と、『おかじま 』というとこと、『八景 』。この三件はすごく良かったかな。本は結局写真でしかないから、分からないこともあるしね。散々日本、日本言っていてあれなんだけど(笑)『ウィズザスタイル 』のホテルが一番自分を大切にされたっていう場だった。ハードもソフトも圧倒的だった気がする。日本文化とかは別に無かったけど。


小室 日本文化というか、日本のおもてなしというところで、気になっているものってある?


青山 宿とかおもてなしに関する本が全然無いっていうのは感じる。国内の旅館や民宿をきちんと回って、その作者が自分なりの基軸を持っていて、その軸で「ここはこうだから良いんだよ」っていうことを一件一件表現している本をまだまだ探せてなくて。どっちかと言えば、部屋に温泉で露天風呂が付いていますよとか、カニが二杯ついていますよ、これで2万円安いねみたいな。そのような特集ばかりのような気がして。そうじゃなくて、一人ひとり取材していて、このオーナーがどのような想いで宿を始めていて、どのような理由でこの食材を使っているのか、そのようなということまできちんと書いていたら、本として感じ取れるところがあるじゃないですかな。そこまで一歩入った本ってね、まだ俺が探せてないだけかもしれないけど少ない。それにホスピタリティの本だって、帝国ホテルとかそのような大手の本は3~4冊あるけれど、ちゃんと日本旅館とか民宿を徹底して出しているところってほとんど無くって。それがめっちゃ寂しいと思っている反面、逆にチャンスって思える部分でもある。


小室 無いんだ。


青山 無いよ。今本屋でおもてなしとか接客とかがあるコーナーに行ったら、ホスピタリティ入門みたいな本ばっかりなんだよね。リッツカールトンに学べとか、ディズニーに学べとかそれはそれで良いんだけど、もっと受け継がれてきたおもてなしの文化ってあるでしょみたいな。もちろんリッツとかの本も良い勉強になるんだけど、それより倍くらいなきゃダメでしょって思うんだよね。日本の加賀屋 流のおもてなしとか、送陽邸流の本とか。


小室 それが無いって不思議だね。それこそ最近加賀屋が海外に出して。


青山 うん。そういう動きの中で少しずつ注目されてきてはいると思うけどね。それがこれから来ると思う。ブルータスがまさに日本のホテルじゃなくて、日本の宿っていうので特集組みだした時点で、評価される環境が整いつつあるって分かる。時代がちょっとづつ動いていると思う。





●取材 小室勇樹
●取材日時 2011年2月15日