ーあーそうだな… たまには出掛けるか。ん?今日はお前の誕生日じゃないか?
ーあら、そうですね…。今日が何日かなんてあれから気にしなくなりましたからね…すっかり忘れてたわ…。
あれから1年の歳月がたった…突然誘拐されてしまった娘…。そして一旦妙な格好をして病院へ戻って来たにも関わらず、医療道具だけを持ち、「私は大丈夫」とノートに書き残し、自らの足で消えてしまっと言うのだ。その時の病院の監視カメラの映像をダビングしてもらったのだが、何度見てもウンスは脅されたりして居るわけでなく、手際良く医療道具を鞄に詰め、医師の顔をして病院を出ている…きっと誰かを助けに言ったのね。あの娘は明るくて強い子だから、きっと大丈夫よ。それに楽天家だもの。どこでも生きていける。いえ、きっとどこかで生きていてくれている…そう、何度二人で話したことか…
ーごめん下さ~い!
めったにお客など来ないのに、だれかしら?
ーは~い!ちょっとお待ちください!
!!!!…ウッ ウンスかい?!お父さん!ちょっと早く来て!!
ーなんだい、慌てて…
ウッ ウンスなのか?!
ー…こんにちは…初めまして。私は、チェ・ユニと申します。そんなにウンスさんに似ていますか?ふふ。光栄です。
ーウンスじゃないのよね?
よく見るとウンスよりずっと若いわ…
ねぇお父さん…
ーあ~。そうだな… それで、チェさん、なんの御用ですか?
ーはい。信じていただけるかどうかわかりませんが…
と、ユニはかなり色褪せた古い紙の束を二人に渡した。全て封がされており、かなりの量だ。
表面には「お父さん、お母さんへ NO1」からずっと番号が続いている…
それも墨で書かれた、ハングルで…
ーこれは?
ーそれを読んで頂く前に、我が家チェ家に伝わる昔話を聞いていただけますか?
ー…?昔話?
ーはい。遠い昔、高麗の時代から今までずっと語り継がれて来ました。他言無用、そして必ず子供に言い伝えてくれと…私で10代か、11代目に当たります。
私自身も正直驚いています。全て事実だったのだと、わかりましたから…。
ウンスの両親は、顔を見合わせ、とにかくユニさんを居間に通した。
ー何にもないけど、どうぞ。
お茶を出す。
ーありがとうございます。
ー本当にユニさんはウンスにそっくりね…。
そう言ってウンスのお母さんは、優しい顔をして目には涙をいっぱい溜めてユニを見た。
ーお母様、泣かないで下さい。ウンスさんはとっても幸せだったんですから…
ー??え?
ーじゃあ昔話をさせてもらいますね…

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