2005年。

トリノ五輪を翌年に控え、日本短距離陣は、ベテラン清水宏保と若手の加藤条治の２枚看板でメダルを取りに行こうとしていた。

加藤は、初めて世界に出た高校３年時から清水の後継者と言われ続け、長い間清水が保持し続けていた500メートルの世界新記録を更新するなど、その期待通りの活躍を見せていた。

一方、清水の方は、持病の腰痛から思うようにトレーニングもできず、その強さに陰りが見え始めていた。しかし、豊富な五輪経験と、長い間、世界のトップに君臨し続けてきた意地と勝負強さで、トップの座を簡単には明け渡さないという姿勢を見せていた。

同時に「チーム清水」という名で、有望な若手を自分のトレーニングに参加させるなどして、日本短距離陣の底上げにも、意欲を注いでいた。

しかし、清水が期待をかける小林正暢や川田知範らが、なかなか自分を脅かすような存在にまで届いてこない。

そんな中、トリノ五輪を目前にして、１人の若手がその才能を開花させていた。加藤と同じチーム、サンキョーの新人、長島圭一郎だった。加藤よりも年上で、高校生の頃から世界のトップを狙える逸材とされていた加藤に比べると、かなりの遅咲きと言えるだろう。

しかし、トリノ五輪の代表となると同時に、全日本スプリントでの総合優勝という結果は、加藤と並び立つ、新しいエースの誕生と言って申し分ない活躍だった。

その長島は、今や加藤をも凌ぐ活躍を見せ、バンクーバー五輪のエースの座を奪ったともいえるほどの成長を遂げた。

写真は、新しい２大エース誕生の瞬間を切り取った１枚である。

（文中敬称略）

新時代の２大エース誕生へ。