ずーっと前に
担当した患者さん。

90代の女性。

色白さんで
若かりし日は
可愛かったと思われます。

お嬢様育ちで
上品なてるちゃん。

元々会話が、楽しく
きちんと起承転結があった
素敵な女性。


認知症が入っても
必ずオチがあって
楽しい会話をしていた。


私に
『あなた彼いないの?』
って聞くから
『私、おらんのよ〜(・_・;)』
っていうと
『大丈夫!あなたならいい人みつかるから』


『てるちゃんみたいに
いい人見つけなきゃね』
というと
『大丈夫!あなたは幸せになるから』


そう言ってくれていました。

『あ、そうそう。
ケーキ買ってきて下さる?
紅茶と頂きたいわ』

と言っていました。

『ごめんね〜、今、
お仕事あるから行けないの』
っていうと
『あら、ごめんなさいね。
わかったわ。彼に買ってきて貰うから
あなたの分も買ってきてもらうわね。』
と、イタズラっぽい笑顔で
笑っていた。


彼女のすごい所は
人が不快になる発言をしないこと。


人が嫌な思いもしないし
傷つけることもしない。


ホントに素敵な人。


認知症になると
それまで上品な人も
豹変して
暴力的になったりすることもある。

でも
てるちゃんは
綺麗な言葉で
人を気遣える素敵な女性。



てるちゃんのお店のあった
銀座で買った私の好きなお店の
紅茶と
てるちゃんの彼の買ってくれたケーキで
お茶したかった。


でも、それは叶わず
てるちゃんは
口から食事が取れなくなった。


いよいよ
お別れの時が近づきました。



てるちゃんがギリギリまで
『美味しい紅茶、飲みたいね〜』
と言っていた
紅茶を飲ませてあげたかった。


意識もぼんやりしてて
嚥下が出来なくなっている
彼女に紅茶をのませることは
不可能だった。


私は
銀座の紅茶を入れました。


そして
彼女の部屋に
こっそりと運び
綿棒に染み込ませ、
唇に薄く塗ってあげた。

『てるちゃん、ごめんね
元気なうちに
飲ませてあげればよかったね。』

っていうと
軽くうなづいたように見えた。


ナースとして
して良かったかどうかは
わかりません。


その日の夜
てるちゃんは
虹の橋を渡りました。


今は
あちらの世界で
美味しい紅茶とケーキを食べて
私を心配してるのかな?って思う。


『あら。まだそんなこといってんの?(笑)』
『大丈夫よ!あなたなら』

そう言ってくれる気がする。


てるちゃんに会うと
凹んでても
元気を貰えた。


いつもポジティブで
江戸っ子口調。


本人は頑張って
励ましてるわけじゃないと
思うけど、
結果的に思わず笑顔になる
そんな素敵な女性。


私も少しでも
近づけるといいなぁ。


てるちゃんに会いたいなぁと
思ってしまう今日この頃です。