親指の開き加減で、火をつける。
父はパイプのコンクールで一番長く吸い優勝した。
父の家にはヨーロッパのパイプが100本以上あるので、そろそろ掃除して磨いておかないとダメになるし、父が私の為に集めてくれたのだ、たばこは止めたが綺麗にしておこう。
父の家は神楽坂と女子医大の真ん中である。
いつもの今日は内科の受診。
すべては順調だが、
足腰が弱っていると言われた。
長い時期目眩でなかなか運動もできなかったため。
運動不足らしい。
ならばと帰りは二キロを歩いた。
父の家で休憩。
来年の春は母がこの家で暮らす。
母に必要なものも点検した。
逆に大嫌いなものもある。
父のパイプである。
タバコを止めた私にも、もう必要はないが。
パイプを握ると父を感じてしまう。
なんでこんなに高級なダンヒルのパイプを買っておいてくれたのか。
マドロス型は私のお好みなのである。
父はストレートで軍刀の代わりに腰にさしていた。
今日も整理していると髭剃りの使ってない刃が出てきた。
お風呂の入浴剤の湯布院の温泉につかり、父のように髪を染めた。
パイプはすべて掃除してから匂いをとる。
だが、父の部屋がパイプタバコのにおいが強い。
母に逃げられないように、春までに大掃除である。
介護の方が今週から週三回来てくれることになる。
流石に、私もこの頃は朝が疲れで起きられない。
母も寝たきりから、今は一人で歩けるようになった。
父の家の石段も登れる。
食事は私が作る。
母は味がうるさい。
とても買ってきたお弁当では食べてくれないのである。
これが今一番の悩みである。