Silent Code
 
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「静寂機械」//000

夜の種族のみなさんこんばんは。
静寂をたたえた夜の時代、芸術が魔術だったころに思いを馳せて


今宵は「静寂機械」の第三回です。


-開演(または静寂)-
テントの中は大勢の観客のたてるガサツなざわめきと町の轟音が混ざり合った醜悪な音で満たされつつあった。
気分が悪くなるほどの醜音の中で冷や汗が出るのを我慢していると、透き通るような空気の振動を感じた。
刹那、全ての醜い騒音が退散し完璧な静寂が姿を現し、観客達は初めて体験する静寂に神を感じ羨望と畏怖の入り交じった宗教的な熱心さを持ってステージの光の中に居るオブジェを見つめた。
あまりの緊張に客席の片隅で突然キイキイと子供が笑い声を上げた。

オブジェはゆっくりとした動作で顔を上げ観客を睥睨した。
信者を導く司祭のようなその態度はまったくその場に調和をもたらしていた。


そして喉が震えたかと見えた刹那、頭上から微細な生物のような「声」が降り注ぎ始めたように感じた。
全ての空間から微細な「声」が生まれていた。観客はそれぞれ自分の手のひらを不思議そうに見つめたりキョロキョロと天上を見渡したり、隣の知人の口元を見たりしていて、いったいどこからその「声」が現われるのか確かめようとしているようだった。そして徐々にその視線は舞台の中央に立つ彼女(またはオブジェ)に集約していった。


今夜もまた、静寂に帰ろう
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今宵は「ゴルディアスの結び目」短文

夜の種族のみなさんこんばんは。
静寂をたたえた夜の時代、芸術が魔術だったころに思いを馳せて

今宵は「ゴルディアスの結び目」短文

大陸の南西の奥地に打ち捨てられた教会
宣教の残骸

月が満ち始める夜
暗い肌の半裸の男達が廃墟と化した礼拝堂でくるったように太鼓を打ち鳴らし始める

沢山の時間
混沌としたリズムがおおきなうねるような調和を生み出そうとする刹那
1人の少女が表れる

宣教師との混血

褐色の皮膚の下の血管が透き通って見える
暗く透明な肌
ローマ時代の彫刻のような美しい体

喉が小刻みに震え始める
灰色の右目から涙が溢れる

彼女の声が頭上から降り注ぐ

地上の原始の人間の肉体のリズム
天上の悠久の宇宙の最初の声

大陸の南西のその奥地でゴルディアスの結び目がゆるむ


今夜もまた、静寂に帰ろう
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今宵は「ゴルディアスの結び目」

夜の種族のみなさんこんばんは。
静寂をたたえた夜の時代、芸術が魔術だったころに思いを馳せて

今宵は「ゴルディアスの結び目」

決して解く事の出来ない結び目
複雑に噛み合された結び目
たとえ大きな剣で裁ち落としたとしてもその結び目の深遠な暗号は消えない

人類が創り出してしまったゴルディアスの結び目はもうだれにも解く事は出来ない

しかし上質な音楽が創りだす揺れはその固く閉ざされた結び目を少しだけ緩ませる
しかし上質な美術が創りだす揺れはその固く閉ざされた結び目を少しだけ緩ませる
そしてゴルディアスの結び目が少しだけ緩む時間がある

地球のどこかに結び目の弛みを感じる場所がある

今夜もまた、静寂に帰ろう
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