慢性腎不全の治療
慢性腎不全の治療には
・保存療法
・食事療法
・水分
乏尿がない場合
水分摂取制限はしない。これは、腎不全による等張尿によって脱水傾向があるため。
乏尿がある場合
水分の摂取は、「前日の尿量 + 0.5l」とする。これは、浮腫による肺水腫や心不全を抑えるため。
蛋白質
低蛋白質食にする。これは、尿毒素の原料になる蛋白質を控えるため。
炭水化物
エネルギー不足による蛋白質分解を避けるために、高カロリー食にする。
塩分(塩化ナトリウム)
高血圧がある場合には7g/日以下とする。ただし、腎不全に於ける高血圧とは、通常の140/90よりも厳格
な130/85mmHgとする。これは、高血圧が糸球体に負荷をかけてより一層腎不全を悪化させるため。
・化学療法
・CE阻害薬・アンギオテンシンII受容体拮抗薬
糸球体血圧を下げて腎不全の進行を抑えるために用いる。ただし、糸球体血圧を下げすぎると今度は逆に糸球体血流量が低下して腎前性腎不全になるので、クレアチニンが2.0mg/dl以上のときは慎重に投与する。肝排泄性のテモカプリルやテルミサルタンの使用を考慮する。また、カリウムの上昇にも留意し、利尿剤の併用を行う。
・透析療法 等がある
感染に対してアミノグリコシド系抗生物質を用いる時は、用量に注意する。
慢性腎不全の治療に役立つメモ
腎性貧血はエリスロポエチン投与で改善することが多いが、エリスロポエチンの反応性が低下した場合は以下のようなことが考えられる。
・慢性疾患(感染症、悪性腫瘍)の貧血
・鉄欠乏性貧血
・副甲状腺機能亢進症
・アルミニウム中毒
透析と浸透
半透膜を介して物質が移動する場合、溶媒が移動する場合を浸透(しんとう、osmosis)と呼び、溶質が移動する場合を透析(とうせき、dialysis)と呼ぶ。生体膜など物質を選択的に移動させる能力を持つ場合以外は規模の差はあれ、透析と浸透は同時に進行する。
・透析の応用
透析は細胞生物学や生化学などの実験操作としてしばしば利用される。たとえば、生体高分子を塩析で沈殿捕集した後に透析により脱塩したりする。
生体においては、腎臓は排泄のために透析の原理を利用している。また、治療法としての透析療法は記事 人工透析に詳しい。
物質の濃度差による浸透圧により受動的に透析が行われる場合を拡散透析(かくさんとうせき)と呼ぶのに対して、半透膜を介して電位をかけ、イオンを能動的に拡散させる透析方法を電気透析(でんきとうせき)と呼ぶ。
・浸透の応用
浸透圧以上の圧力を掛けると、圧力による溶媒の限外ろ過が化学ポテンシャルによる拡散を上回るので、半透膜を通らない溶質が濃縮される。この現象を逆浸透と呼ぶ。逆浸透は海水の淡水化などに利用されている。逆浸透に用いられる半透膜は、記事 逆浸透膜に詳しい。
尿毒症
尿毒症(にょうどくしょう)は、腎不全に伴う症状を記述するために使用される用語である。通常は尿中に排泄される尿素その他の廃棄物が、血液中に残存する。初期症状として拒食症と活力の低下を含む。また、遅発性症状として知力減少と昏睡を含むことがある。人工透析の患者の場合、通常糸球体濾過率(腎臓機能の基準)が標準の50%未満である場合、このように分析される。
類似の用語として「高窒素血症」がある。この用語は、尿素が高濃度であることを指すが、主に化学上異常が測定されても、徴候を出すほどには甚だしくない場合に使用される。
尿毒症は線維性心膜炎を引き起こす場合がある。尿毒症は血液(エリスロポエチンの低下)、性器(テストステロン/エストロゲンの低下)および骨格(骨粗鬆症、転移性石灰沈着)など多くの身体組織の機能障害をひきおこす。
尿毒症の原因
腎不全の他に、血液中の尿素レベルは以下の原因によっても増加することがある。
・以下の理由による肝臓中の尿素生産の増加
・高蛋白食
・タンパク質ブレークダウンの増加(手術、伝染、外傷、癌)
・消化管出血
・薬物(例えばテトラサイクリン、副腎皮質ステロイド)
・以下の理由による尿素の除去の減少
・低血圧、心不全などによる腎臓血流の減少
・尿の流出妨害
・脱水症
アミロイドーシスの概念
アミロイド蛋白が全身に沈着する予後不良の疾患である。アミロイドは各種溶媒に難溶性であり、マクロファージの食作用にも抵抗性を示すため、沈着が減少することなく少しずつ増加していき、やがて組織を破壊していくことで症状が出る。