作り方講座とかもまた再開したい。
さて、常にお久しぶりですばかりですみません。
すっかりツイッター民です、恐ろしいことに。
残すほど有意義な人生の送り方ができていなかったとも言うのですが。
そして始まる読み甲斐のない、人生に何一つ役に立たないお話です。
私だけじゃなく多くのマンガ好きは、
まずジャンルで読む本を決めると思う。
BL、少女、少年
その中でさらに、
スポーツ、リーマン、学園物
って好みを絞って、
読んだ中で好きだと思う作家の作品を次も買う。
私は、同人誌でもなんでも、
そうして作家買いをする。
もういい加減結構な長さヲタをやってるので、
初めの頃に好きだった人は、引退したり、プロになったり、まだ知らないジャンルで同人やってたりするし、
こういうのは蓄積されていくから、
どんどん追う人は増えていく。
で、あるとき「あ、この作家さんはもういいかな」ってパッタリと追うのをやめて本を全部処分する。
これが私のマンガ収集の基本的な流れ。
こんなことを話し出したきっかけは二つあって、
一つはとうらぶの即売会に行ったこと。
オンリーなんて本当に何年ぶりか分からないくらい久々に行った。
そこまでとうらぶ好きだったわけでもなかったんだけど、
凄く好きな作家さんがたまたまとうらぶに来てて、凄く私好みそうな新刊を出すといってたのがほしかったし、
たまたま仲の良い友人も行くというので行くことにした。
語り合える仲間と萌という強力な燃料が投下されると人間って一気にハマる。
そんなこんなで「とうらぶの同人」にハマった。
もちろんゲームも楽しいけど、作業ゲーの感は否めないので、ね。
で、そのオンリーは、本当に久々に参加した同人誌即売会(コミケはコミケという別物だと思っている)だったのに、
パンフレットを見ていたら、知っているサークルがいくつかあった。
あのジャンルのときのあの人、今とうらぶに来てんのか!あの作家さん画風変えたなぁ~!
って感じで感慨深さもあって、
売り切れてなかった所は一応買った(買えなかった所は支部とかツイッター見た)
で、読んで、
あぁ、これが時の流れだな、と。
昔凄く好きな作風だったサークルさんが、もちろんジャンルとキャラが違うんだから、作風は違って当然なんだけど、
受け取る私が進んだ方向と、書き手のその人が進んだ方向が、
こんなに離れたんだな、あの時はあんなに共感していたのに、
と、
なんか寂しくなった。
マンガに限らず、小説も舞台も音楽も、
人間が感性で受け取るものは、受け手の気持ちや状況によって受け取られ方は変化する。
いくら楽しい話でも、心が不健康な時では楽しめないなんてよくある話だ。
だからこれは全く特別な事ではないし、
同人業界長くいればよくあることで、いっそずっと同じジャンルで同じ作風でやり続けてる人が凄いなっていう部分もあるので、うん。
そしてもう一つのきっかけは、
ぼんやり過ごしていてうっかり新刊を買い忘れていた、とても好きな作家さんの新刊をさっき買った。
二冊も買い忘れていた。
三本の指に入るくらい好きなのに。何やってんだって自分でびっくりした。
で、
BL作家さんなので、短編で、それぞれ別の出版社から出てるんだけど、
まず最新刊を読んだ。
読んで、
血の気が引いた。
その作家さんは結構独特な絵を描く人で、
もともと私は同人の頃にその人のファンになった。
大流行の人気ジャンル、いろんな人がいる中で、
たまたま友人が買うというから買ったのがきっかけで、
絵が苦手で後で「なんで買っちゃったんだろう。ブーム中の熱って怖い」とすら思った。
思ったんだけど、作品の感性の部分が素晴らしい人だったので、
それから絵に慣れるまで2年くらいは苦痛に喘ぎながら買っては読んだ。
別の友人に勧めても、絵が苦手だったという返事がほとんどという人だった。
そしてその人が商業デビューして、
同人でも結構マイ設定がっつり入れて、キャラメイクもギリギリそのキャラだなって範囲の人ではあったので、
作風も変わらずに、とても私好みだった。
けど、これは売れないだろうなぁとも思った。
暗い、たるい、絵の癖が強い。
実際良い評判は見たことも聞いたこともなかった。
けど、そのレーベルでずっと描いて、
二冊、三冊でる内に、話の作りが洗練されてきて、
絵もスッキリして無駄な力みが取れて、
いい感じになったということは素人目にもよくわかった。
あぁ良かったなぁと思ってた。
で、
久々に読んだ最新刊。
話の基本的な部分はいつもと同じ。
根暗な主人公が明るくて強い恋人に救われる。
この人の話は基本的にこれしか起きない。
本人の性質なんだろうなって思う。
私は作家の性格が作品に出るのを全く何とも思わない。というかそれくらいの方が「その作家じゃないと」いけない理由にならない。
で、
物語の基本は同じだったんだけど、
垢抜けるどころか、
どこもドロッとした所がない、定規を当てて、カッターで切った切り絵のような、無味乾燥な話に仕上がっていた。
面白いかつまらないかでいえば面白い。よくまとまってる。今の時代にもマッチしている。
でも、この人が描かなくていい。
そんな話になっていた。
そして更にあの癖の強い絵が変わっていた。
いや、ライトな読者は気づかない。でも明らかに違った。
無駄な線(に見える)が多くて描き込みをしがちだった部分がすっきりして、
骨格が曖昧だったところが現実寄りになった。
そして何より、目の描き方が変わった。
この人の作品は、基本的に根暗なので、表情で見せるシーンが多い。
主人公の心情を表すのに、目のアップはよく出てくる。
何本も何本も描き込んで、常に潤んで、怯んだような目を描く人だった。
それが登場人物の感情とリンクして、深みを出していた。
のに、
それがスッキリ、サッパリした、今時の目になっていた。
あぁ、なんてことしやがった。
そういう意味で血の気が引いた。
今の作風の方が受け入れる人は多いと思う。絵も今の方がポップで入りやすい。表情も誤解を生まない(前は笑ってるのか泣いてるのか分からないとか多かった)。
商業誌として、編集が「いい仕事」したのだろうし、そうでないなら本人が「気づいた」のだと思う。
それで正解だとも思う。本は所詮「商売」で、売れなきゃ意味がない。
手に取られて、買われて、売り上げが発生しなければ先はない。
けど、
読者としての私は、
他の作家でも描ける話は描いて欲しくない。(人間が生涯に生み出せる作品の数なんて限界があるのだから)
あの絵とあの話という独特の世界はもうこの世から消えてしまったのかという絶望。(しかもそれに変わって生み出されたのが量産型の作品)
で頭がいっぱいになった。
しかもよりによって、
その後に読んだ一つ前の新刊では、
画風がとてもいい効果を生んで、話も個性的に仕上がっていて、
たまたまデビューした頃と同じような題材だっただけに、
デビュー作から今までの成長、洗練が見れてそれもあってファンとしてつい泣いてしまった。(最新刊で打ちのめされた精神状態だったことが大きい)
あぁ、こういう作品はもう見れないのか、と。
いっそ、とうらぶで久々に再会したサークルさん達のように、
離れていたら「まぁ変わるだろうな」と受け入れるし、
「離れていいやと思う程度」であればこんな事にショックは受けたりしない。
個性が伸びて、磨かれて、素晴らしいものになるだろうと思っていたものの進む方向が、よりによって私が少し離れた隙に、こんなに違ってしまったのかという悲しさというのが最も適切かもしれない。
前にも一度これに似たものは経験したことがあって、
けれど受け取り方が真逆だった。
私がやはり三本の指に入るくらい好きな作家さんで、
大和名瀬さんってBL作家さんがいるのだけど、
彼女は最初少女漫画で、そのあとBLになって、その頃はショタを描いてた。
可愛らしい絵柄だし、可愛らしいお話だった。
その延長線上で高校生や大学生の話も描くようになったけど、
もともとショタ系なので、イマイチぱっとしないというか、面白いんだけど、どこか突き抜けない感じがあった。
そして出たのが「くちびるの行方」っていう本だった。
この本単品の話をすると、明るく元気で癒される話の人なのにシリアスな、しかもリーマンもので子供が一切出てこないという苦手分野詰め込みました、みたいな話で、正直あまり面白くない。絵も今に比べるとやや不安定。
なので誰かに名瀬作品をすすめるときには最初に除外する。
けど、
この作品は現段階で言えばこの作家さんのターニングポイントの作品と言ってよくて、
この作品は本当に描くとき苦しかったんじゃないかなって部分が多々見受けられるんだけど、
それによって得た個性、画風、作風、描写力がその後の作品でいかんなく発揮されて、
今の作品はとても洗練されて面白い。
元の作品も好きだったけど、もう「この人しか描けない」の域だと思う。
だからファンのコレクションとして、デビュー作と好きな作品と並んで重要だと思っているのがこの作品だったりする。
これをやらせた編集はいい仕事したと思う。(売れる本を作るのが編集という考え方には反するだろうと思うけど(実際の売れ行きなんてわからないから)、その先に得るものの大きさ考えたらいい仕事)
それを思うと、今回の件は、
やっちゃったなぁー
と。
もしかしたら長い目で見たら、これもプラスのターニングポイントで、
後々コレクションとして重要な立ち位置になる作品かもしれない。
好きな作家ではあるし、この編集部の方針というだけで他社で描いたら違うのかもしれないし(数社で描いてる)、まだ買い続けますけれども。
結局のところ、
私は、売れるものを作るのが商売だ、と頭ではわかっているのに、
それでも、あの才能・個性を曲げたくない、という自分のエゴに勝つことができないだけなのだ。
私は学生時代、圧倒的な才能を持つ友人たちを得る機会を経て、
一握りの才能ある人に素晴らしい作品を生み出してもらうためには、多少の犠牲はあって構わない、と思うに至った。
私が美人や才能を持つ人を好きで、そういう人に惚れ込んで奉仕する癖があるのもそれを基にしているし、
感想は手紙にして本人に伝えるという基本姿勢もそこからきている。
結局人間の根底はエゴだ。
ただ、そのエゴも表から見たら黒くても、裏から見たら白いかもしれないものだ。
だから、一番美しい角度を人に見せるようにする。
それが「大人」ってやつなんじゃないかな、と思いつつ、
あー、やっぱり寂しさで胸に穴が開きそうだ……。
デビュー作でも読んで寝よう。
大和名瀬さんは絵も美しいし、話も本当に面白い作家さんなので(感動系というよりホンワカハッピーエンド系)
巻き添え事故のように名前出しちゃいましたけど、心からオススメしておきます。
コミケにも毎回出てて、私も毎回通ってます。先生めっちゃいい人なんやでぇ……(((o(*゚▽゚*)o)))