さて今日は、前回の記事で書いた

「ココロのリハビリは、カラダのリハビリより大切」について。

理由はカンタンで、人間、ココロが健全でないとカラダを健全にしようって

気にならないと思うから。少なくとも私の場合はそうでした。


だってねえ、病院の近くの公園へ外出した後なんて、リハビリガンバルのなんのって。

ふだん病院に閉じ込められてる身にとって、

排気ガスたっぷりの空気がどんなに気持ちいいことか!

雑草の緑がどんなに色鮮やかなことか!

「冷やしたぬき始めました」の看板や

道行くおばちゃんのヒョウ柄シャツ、八百屋に並ぶオレンジ、

ペンキがはげかけたベンチ、団地のベランダに干された布団・・・etc・・・

世界はなんてカラフルで、エンタテイメントな場所なんだ!

って感じなのです。

こんな、なんでもないような景色がとても美しかったことを知る。

すると、その景色の中に戻ろう。

という気がふつふつと沸いてくるのです。

以来、すっかりお散歩が好きになった私。

入院の日々から10年経った今でも、この世界は美しいものであふれてる、

と思う。

病気のせいで、自転車に乗ったり、ハイヒールはいたり、

思い切り走ったりはできなくなったけれど、

こんな風に思えるようになったから、まあいいや。

なんてことを思ったりもします。



そんなわけで、順調リハビリが進み、

なんとか車いすなしで生活できるようになった私は

退院することになりました。


次回は、退院後の「親公認プータロー生活」について

書こうと思います。                 






リハビリをした、と話すと

痛いんでしょう?とか ものすごくハードなんでしょう?などと聞かれますが、

私の場合、痛かったり汗かいたりなどは全くしない

ごくごくソフトなリハビリでした。

同じリハビリルームにいる人たちも、

ドラマみたいに「ううっ」とか呻きながら頑張ってる人なんて一人も

いなかったから、イマドキのリハビリは「無理しない」のが基本なのかな?


昨日の記事に登場した「デロデロおじいさん」と一緒にやった

手のリハビリなんて、のんびりまったり趣味的なもんで、

絵を描いたり、パズルをやったり、知恵の輪を解いたり。

リハビリの先生がキレイで優しい女性だったせいだと思うけれど、

デロデロおじいさんは廊下で見る姿とうって変わって、穏やかに笑ってばかり。

「ホラ○○さん、笑ってばっかりいないでパズルやってみてよー」

「ニコニコ(でも手は動かさない)」

「あ!△△さんの絵、上手だねえ。○○さんもやってみる?」

「ニコニコ(でも首を横に振り、やらないと主張)」

てな感じでしたので、リハビリになってはいなかったけれど

デロデロおじいさんの笑顔を見ていると

きっとココロのリハビリにはなってるんだろうなあ。などと思いました。

そして、カラダのリハビリよりも、よっぽど大切なことなんじゃないかなあと。

退院のめどがたたないような高齢者にとってはもちろんのこと、

当時の私のような、リハビリの効果が期待できる若者にとっても、

ココロが前向きになって、はじめてリハビリにやる気が出るのです。

・・・とこのように考えるに至ったエピソードを、次回は書きます。








前回、前々回とリハビリ病院地獄バナシ(笑)が続きましたが

楽しい思い出もけっこうあるので、今日はそちらのほうを。



昨日の記事に書いたように、高齢者患者の方々はけっこう粗雑に扱われていましたが

退院しても行く先がないからと、ガマンする方が多かった。

でも、一人だけ果敢に(?)看護婦さんに抗議していたおじいさんがいました。

名前はデロデロおじいさん(勝手に命名)。

抗議、といっても、彼の場合は麻痺のためうまく話せないので、態度で示します。

それは、車椅子からデロデロとずり落ちて、看護婦さんの手を煩わせる。という方法。

本人は「あ~」という声を出していかにもずり落ちちゃった!

みたいな演出をしていましたが、周囲にはバレバレ。

バレバレだからといって、駆けつけないとどんどんずりおちて廊下に寝そべられることに

なるので、看護婦さんは仕方なく駆けつけて介助。

これを、1日に5回くらい目撃しました。

「んも~、○○さん!またわざとやって~」

「忙しいんだからカンベンして!」

などの看護婦さんの文句を、見事に聞き流し涼しい顔をしている

デロデロおじいさん。ウワサによると彼には身寄りがなく、よって、

退院のめどがたたないとのこと。お見舞いにくる人もほとんどいない

デロデロおじいさんは、自分の境遇を、

ちょっと特殊なカタチで主張していたのかもしれません。

でも、決して偏屈な老人ではなかったので、私は好きでした。

リハビリのために廊下をぐるぐると歩き回る私と

ストレス発散のため廊下でデロデロとずりおち続けるおじいさんは

やがて顔なじみになり、挨拶を交し合う仲になり、

そのうちリハビリ訓練もご一緒するようになりました。

次回はそのリハビリ訓練について書こうと思います。