SHIROKANE句会

SHIROKANE句会

■ ■■■■■■■■■■

河内静魚先生に指導していただき、楽しく俳句に触れ合っている句会のご報告ブログです。

これまでの「しろかね句会」「KIMA句会」が「SHIROKANE句会」としてひとつになりました。

2013年7月以前の「しろかね句会」「KIMA句会」の報告は「桃兎の部屋」(ブログテーマ:俳句)http://ameblo.jp/emichacha-ameblo/theme-10012144618.html をご覧ください。

 

 

 テーブルをきれいに拭いて秋待てり

 

 鴨川の風のこまやか月見草

 

 横浜の港生れの海月かな

 

 幸不幸わからず夏の雲見つつ

 

                      静魚



 令和六年八月のSHIROKANE句会のご報告です。 参加は静魚先生、夜空さん、走流さん、分水嶺さん、地平線さん、旅男さん、むらさきさん、鳥子さん、桃兎の9名。 毬さん、美歩さん、知花さんからの投句を含め、全八十四句の中から、先生の特選、選と参加者それぞれの特選を清書順にご紹介いたします♪ 

 

 

今月の兼題

[海月(くらげ) 水母、鰹の烏帽子] 

[月見草 待宵草、大待宵草]

 他当季雑詠

 

 

 

 

 

 

 

 

 [河内静魚 特選]※全五句 ◎は特選中の特選です♪

 

 透きとほるくらげ身軽になりたくて     毬

 

 心より軽い身体や海月ゆく         むらさき

 

◎見続ける我は半分くらげなり        毬

 

 人巾の片陰を行く僧侶かな         分水嶺

 

 たまたまのけふ愛しみて月見草       むらさき

 


[河内静魚 選]※全十四句
 

 月見草海より深き恋したり         走流

 

 恋ひ慕ふやうに月見る月見草        桃兎

 

 大海月自由気ままに漂へる         地平線

 

 月見草貴方みたいに直(す)くと立ち    知花

 

 お互ひに想ひあふ仲心太          走流

 

 片想ひくらげの針の痛みあり        知花

 

 海月ゆく男波女波に遊ばれつ        桃兎

 

 河骨や故郷捨てたる三代目         旅男

 

 団らんに咲く思ひ出や大花火        むらさき

 

 くらげ泳ぐ夜会ドレスの舞ふやうに     旅男

 

 月見草母の背中の薄きこと         毬

 

 星の数見えてゐるらし月見草        分水嶺

 

 みずくらげ夜空の浮かぶごとくをり     旅男

 

 月見草人なき浜に暮れはじむ        地平線

 

 

 

[走流 特選]

 テーブルをきれいに拭いて秋待てり     静魚

 

[桃兎 特選]

 香水瓶小き未来が揺れてゐる        毬

 

[地平線 特選]

 お互ひに想ひあふ仲心太          走流

 

[分水れ 特選]

 京風鈴世代受け継ぐ物語          毬

 

[鳥子・旅男 特選]

 見続ける我は半分くらげなり        毬

 

[夜空 特選]

 漂ふに飽きてクラゲの大欠伸        毬

 

[むらさき 特選]

 月見草母の背中の薄きこと         毬 

 

 

以上でした♪

 

 

次回、2024年9月の句会の兼題です。

 

[盆 盂蘭盆(うらぼん)、盂蘭盆会(うらぼんえ)、魂祭(たままつり)、盆棚、魂棚、精霊棚、棚経、真菰筵、盆供、新盆、あら盆、精霊祭、風の盆、盆前、盆過、盆会、瓜の牛、瓜の馬、茄子の牛、茄子の馬 ] 

 七月十三日の夕刻から十五日(または十六日)までの魂祭のことである。地方によっては八月十三日からというところもある。正月と並んで一年の前後を分つ大事な節目に当たり、家々では、座敷や庭先などに盆棚を飾って祖霊を迎える。盆棚は、盆棚・精霊棚・先祖棚ともいわれ、後世仏壇を利用するようになった。僧が檀家をまわって盆棚に誦経するのを棚経という。盆棚には初物の野菜を供えるのがならわしであるが、鬼灯・地梨・はまなすなどの赤い実を供えるところもあり、地方地方で少しずつ違っている。前年の盆以後に死者を出した家では新盆・初盆・あら盆・新精霊などという。子供たちが中心の地蔵盆の行われる地域もある。最近、富山八尾(やつお)での「風の盆」が有名になり、多くの見物客で賑わっている。

 (「合本現代俳句歳時記」角川春樹編 より)

 

[牧水忌]

 歌人若山牧水(1885〜1928年)の忌日。

 

 

  おもかげや二つ傾く瓜の馬   石田波郷

 

 

 

●次回:2024年9月7日土曜日 13:00〜  会場:白金いきいきプラザ(白金高輪駅 徒歩7分)3F-C室

●兼題で四句、当季雑詠で三句、の計七句お持ちください。

 

 

 風通しよくなる午後や夏座敷

 

 忙しきことを遠ざけ夏座敷

 

 夏座敷風あるうちは風を入れ

 

 いつせいに扇の止まる笑ひかな

 

 青梅のおまけのやうに枝にあり

 

 涼みをり和菓子の色をたのしみて

 

                      静魚



 令和六年七月のSHIROKANE句会のご報告です。 参加は静魚先生、夜空さん、分水嶺さん、地平線さん、陶青子さん、美歩さん、知花さん、旅男さん、むらさきさん、桃兎の10名。 毬さんからの投句、前回漏れてしまった二句を含め、全七十九句の中から、先生の特選、選と参加者それぞれの特選を清書順にご紹介いたします♪ 

 

 

今月の兼題

[夏座敷] 

[夕立(ゆふだち) ゆだち、よだち、白雨、夕立晴、驟雨、夕立雲]

 他当季雑詠

 

 

 

 

 

 

 

 

 [河内静魚 特選]※全七句 ◎は特選中の特選です♪

 

 きのふよりすこし好いけふ葛桜       桃兎

 

 立葵太陽まではとどかない         美歩

 

 床の間の隅までしづか夏座敷        美歩

 

◎夕立あと空に流るる光る河         毬

 

 選ばれし風吹いてをり夏座敷        分水嶺

 

 土の香を攫ひて過る大夕立         旅男

 

 大夕立街はすつぽり海の底         毬

 


[河内静魚 選]※全十三句
 

 静かなる時の生れし蓮の花         地平線

 

 夕立や遠くで母の声がする         知花

 

 夕立や牧場の匂ひたちこめる        地平線

 

 梅雨晴間スワンボートの泳ぎ出す      夜空

 

 夏座敷グリーンティーを傾けし       むらさき

 

 ふるさとの友と語らふ夏座敷        地平線

 

 夕立や海も林も印象派           むらさき

 

 白和への小鉢染付夏座敷          桃兎

 

 とほくよりとどく川音夏座敷        桃兎

 

 雨だれを見つめていたり夏座敷       陶青子

 

 読みさしの本の伏せある夏座敷       旅男

 

 夕立の和音に成らぬ雨音よ         知花

 

 夏座敷爪先立ちに海を見る         夜空

 

 

 

[陶青子 特選]

 夏足袋を吐息と共に緩めけり        夜空

 

[地平線 特選]

 忙しきことを遠ざけ夏座敷         静魚

 

[知花 特選]

 スマッシュの跳ねたる先は夏の雲      毬

 

[むらさき 特選]

 ペディキュアの少し剥がれし夕立あと    毬

 

[夜空 特選]

 ふるさとの友と語らふ夏座敷        地平線

 

[旅男 特選]

 いつせいに扇の止まる笑ひかな       静魚

 

[桃兎 特選]

 嵩無しの着物たためば月涼し        夜空

 

[美歩 特選]

 夏座敷遠くでサティのピアノ曲       陶青子

 

[分水嶺 特選]

 はつきりと街の匂へり夕立あと       静魚

 

 

以上でした♪

 

 

次回、2024年8月の句会の兼題です。

 

[海月(くらげ) 水母、鰹の烏帽子] 

 腔腸動物や有櫛動物の仲間でほとんどが海に棲み、肉質は寒天質で、骨格がなくぶよぶよしている。傘形の体型をしており、傘を開いたり閉じたりするようにして海中を浮遊する。傘の下には触手をもち、鰹の烏帽子や赤海月・行燈海月のように毒を有するものもあるが、備前海月などは食用にする。大きさはさまざまで大きなものは直径一メートルにもなり、色も透明なものから白っぽい半透明・水色・赤色などがあり、また一色とかぎらず、水玉などの模様をつけたカラフルなものもいる。クラゲを海の月と書くのは、海面にぽっかりと浮くクラゲを月に見立てたからであろう。

 

[月見草 待宵草、大待宵草]

 アカバナ科の多年草。高さ六〇センチほど。夏の夕方、細長い蕾が徐々にほどけて、純白の四弁花を開く。中央に柱頭が十字型の長い雌しべを立てる。夜半、花は淡紅色に変わり、朝方にはしぼむ。江戸期に渡来し栽培されたが、ほとんどが姿を消してしまった。一般に黄色い花を開く待宵草、大待宵草を月見草と呼んでいる。

 

 (「合本現代俳句歳時記」角川春樹編 より)

 

  乳いろの水母流るるああああと   吉田汀史

 

 

 

●次回:2024年8月3日土曜日 13:00〜  会場:赤坂いきいきプラザ(千代田線赤坂駅 7番出口より徒歩5分) 集会室B

●兼題で四句、当季雑詠で三句、の計七句お持ちください。

 

 

 

 海底に光る真珠や晶子の忌

 

 くちなしの罪問ふやうな甘き香よ

 

 大ジョッキ傾けビール横長に

 

 噴水やずつとずうつと好きなひと

 

                      静魚



 令和六年六月のSHIROKANE句会のご報告です。 参加は静魚先生、走流さん、分水嶺さん、地平線さん、陶青子さん、綺羅里さん、美歩さん、火水さん、知花さん、旅男さん、むらさきさん、鳥子さん、桃兎の13名。 毬さん、夜空さんからの投句を含め、全百二句の中から、先生の特選、選と参加者それぞれの特選を清書順にご紹介いたします♪ 

 

 

今月の兼題

[梔子の花(くちなしのはな) 梔子(くちなし)、花梔子(はなくちなし)、山梔子(くちなし)] 

[晶子忌]

 他当季雑詠

 

 

 

 

 

 

 

 

 [河内静魚 特選]※全六句 ◎は特選中の特選です♪

 

◎思ふまま花を生けたし晶子の忌       地平線

 

 晶子忌の誰も心に火種持つ         走流

 

 香水や鏡に映る別の顔           毬

 

 晶子忌や硝子の皿に浮かぶバラ       火水

 

 梔子の香りて夜の崩れゆく         毬

 

 見て楽し食して楽しやなの鮎        むらさき

 


[河内静魚 選]※全十六句
 

 蛍狩遠き思い出たぐり寄せ         むらさき

 

 くちなしや憂ひしことの薄らいで      桃兎

 

 相馬野馬追

 大地揺れ空に吸はれし馬蹄かな       夜空

 

 十薬や叢に打つ句読点           陶青子

 

 仰ぎ見し晴れ間の快や晶子の忌       むらさき

 

 闇に咲く花火のやうに晶子の忌       むらさき

 

 夏兆すエナジードリンク一ケース      走流

 

 晶子忌や愛さなければ愛されぬ       桃兎

 

 梔子の白に潜みし裏の顔          毬

 

 くちなしや胸に落ちたる思ひあり      陶青子

 

 意志強き母の髪型晶子の忌         毬

 

 梔子の花水色の雨吸ひし          綺羅里

 

 晶子の忌フォルテッシモを奏ず弦      陶青子

 

 新緑の眼裏までの近さなり         美歩

 

 なつかしきことのうすらか額の花      桃兎

 

 情熱と文の人なり晶子の忌         美歩

 

 

 

[陶青子 特選]

 運針の遅き手許や晶子の忌         桃兎

 

[美歩 特選]

 しなやかなものに声あり夏兆す       走流

 

[走流・桃兎 特選]

 くちなし剪る心に鍵をかけたき日      静魚

 

[むらさき 特選]

 月ありて雲のたなびく初夏の夜       綺羅里

 

[火水 特選]

 水指のふたの黒塗り薄暑光         美歩

 

[地平線 特選]

 意志強き母の髪型晶子の忌         毬

 

[分水嶺・鳥子 特選]

 噴水やずつとずうつと好きなひと      静魚

 

[知花 特選]

 愛あれば地球は狭し晶子の忌        分水嶺

 

[旅男・綺羅里 特選]

 新緑の眼裏までの近さなり         美歩

 

 

以上でした♪

 

 

次回、2024年7月の句会の兼題です。

 

[夏座敷] 

 湿気の多い夏に備えて日本の家屋は間口を広くとり、風通しよく造られている。梅雨が上がり日ざしが強くなると、障子や襖を取り払って簾をつり、葭屏風で仕切られた座敷に籐筵を敷いて涼しい雰囲気を作る。行水で汗を流し、水を打った庭に目を遣りながら聞く虫の音は涼味満点。冷房が完備された現代では忘れられた風情だが、夏の風流として味わってみたい。

 

[夕立(ゆふだち) ゆだち、よだち、白雨、夕立晴、驟雨、夕立雲]

 夏の強い日ざしにより発生した対流性の雲から降る局地的な大雨をいい、雷を伴い、主として午後に降るので夕立という。また「夕立つ」と動詞に用いると、雨だけでなく、波・風・雲などが夕方にわかに起こり立つことにも用いる。「立つ」とは、自然界の動きがはっきり目に見えること、「顕(た)つ)」の意。「夕立」と名詞に使ったときは、雨または雨を起こす雲で、「暮立(ゆふだち)の雨落(ふ)るごとに春日野の尾花が上の白露念(おも)ほゆ 作者不詳」(『万葉集』)と、詠まれている。

 

 (「合本現代俳句歳時記」角川春樹編 より)

 

  鏡中に西日射し入る夕立あと   山口誓子

 

 

 

●次回:2024年7月6日土曜日 13:00〜  会場:白金台いきいきプラザ(白金台駅 1番出口向かい) 2F-B室

●兼題で四句、当季雑詠で三句、の計七句お持ちください。

 

 

 春惜しむグラスの縁を指なぞり

 

 春惜しむ手紙の結び書き了へて

 

                      静魚



 令和六年五月のSHIROKANE句会のご報告です。 参加は静魚先生、結女さん、夜空さん、分水嶺さん、綺羅里さん、美歩さん、旅男さん、鳥子さん、悠悠さん、桃兎の10名。 毬さん、走流さん、地平線さん、知花さんからの投句を含め、全九十八句の中から、先生の特選、選と参加者それぞれの特選を清書順にご紹介いたします♪ 

 

 

今月の兼題

[春惜しむ 惜春] 

[長閑(のどか) のどけさ、のどけし、駘蕩(たいとう)]

 他当季雑詠

 

 

 

 

 

 

 

 

 [河内静魚 特選]※全八句 ◎は特選中の特選です♪

 

 アルバムの時を手繰りて春惜しむ      毬

 

 夏隣出窓をノックしたる風         走流

 

◎結女句

 

 惜春やゆつくり上る明治坂         夜空

 

 羽衣のやうなおかきや春惜しむ       桃兎

 

 丸刈りを飛び出してゐるつつじかな     分水嶺

 

 雛の日の酢のやはらかきちらし寿司     美歩

 

 結女句

 


[河内静魚 選]※全十八句
 

 寂しくも独りがよくて春の宵        毬

 

 高気圧の笑顔連れ来る夏隣         走流

 

 春惜しむ無音の雨の一日かな        毬

 

 惜春や背を押されて行くやうに       旅男

 

 春愁をシャッター音にとじ込めし      美歩

 

 夏隣ときをり銀の光降る          桃兎

 

 惜春や海辺まで押す車椅子         分水嶺

 

 のどけさや東海道で真鶴へ         悠悠

 

 春雷や旅を見守る道祖神          地平線

 

 軽口に笑ひさざめく花水木         夜空

 

 亀鳴くや聞こえしふりの生返事       旅男

 

 山吹の黄の浮びけり日照雨         旅男

 

 種案山子万葉人が見えてくる        鳥子

 

 うす塩の菜めしおむすび春惜しむ      桃兎

 

 結女句

 

 鳥の声聴き分けながら春惜しむ       悠悠

 

 春惜しむ草の匂ひのスニーカー       毬

 

 聞き慣れし妻の呼ぶ声桃の花        旅男

 

 

 

[結女 特選]

 惜春やひと駅前に降りたちぬ        夜空

 

[鳥子 特選]

 今治に着く

 出迎へのバリーさんゐる駅のどか      走流

 

[分水嶺 特選]

 天秤の揺れて平らや長閑なる        桃兎

 

[悠悠 特選]

 花吹雪夢の中まで降り注ぐ         夜空

 

[綺羅里 特選]

 山吹の黄の浮びけり日照雨         旅男

 

[桃兎 特選]

 結女句

 

[旅男 特選]

 鳥の声聴き分けながら春惜しむ       悠悠

 

[夜空 特選]

 春惜しむ草の匂ひのスニーカー       毬

 

[美歩 特選]

 春惜しむ手紙の結び書き了へて       静魚

 

 

以上でした♪

 

 

次回、2024年6月の句会の兼題です。

 

[梔子の花(くちなしのはな) 梔子(くちなし)、花梔子(はなくちなし)、山梔子(くちなし)] 

 雨の降りそうな夜、どこからともなく清楚な匂いがただよう。アカネ科の常緑低木で一〜三メートルくらい。葉は光沢のある長楕円形で革質、梢に白色六弁の花を咲かせ、形が盃に似ているので梔子の字が当てられた。和名のくちなしは実が熟しても口を開かないところからつけられた。咲き始めは純白だが黄変して散る。本州中南部から四国・九州にかけて野生も見られる。実からは黄色の染料がとれ、乾燥させた山梔子は解熱剤として用いられる。

 

[晶子忌]

 五月二十九日。歌人与謝野晶子の忌日。本名しよう。明治十一年(1878)、大阪堺市に生まれる。与謝野鉄幹に嫁し、夫とともに「明星」派浪漫主義運動を推進した。歌集に『小扇』『舞姫』『佐保姫』など。源氏物語訳書の『新源氏物語』も「与謝野源氏」と呼ばれ、読み継がれている。昭和十七年(1942)没。六十三歳

 

 (「合本現代俳句歳時記」角川春樹編 より)

 

  月の夜を経し山梔子は月色に   永井東門居

 

 

 

●次回:2024年6月1日土曜日 13:00〜  会場:白金いきいきプラザ(白金高輪駅 徒歩7分) 3F-C室

●兼題で四句、当季雑詠で三句、の計七句お持ちください。

 

 

 

 

 愛にある形と深さ春の雷

 

 サイネリアすぐに会いたくなるひとよ

 

 思ひやり人は欲しがりサイネリア

 

                      静魚



 令和六年四月のSHIROKANE句会のご報告です。 参加は静魚先生、夜空さん、結女さん、走流さん、分水嶺さん、地平線さん、陶青子さん、綺羅里さん、美歩さん、むらさきさん、鳥子さん、桃兎の12名。 毬さん、知花さんからの投句を含め、全九十八句の中から、先生の特選、選と参加者それぞれの特選を清書順にご紹介いたします♪ 

 

 

今月の兼題

[春の月 春月、春月夜、春満月] 

[シネラリア サイネリア、白妙菊、富貴菊、蕗菊、蕗桜]

 他当季雑詠

 

 

 

 

 

 

 

 

 [河内静魚 特選]※全六句 ◎は特選中の特選です♪

 

 新品のPC起動春の月           陶青子

 

 キッチンカーのどこか控へ目サイネリア   走流

 

 春月や大島紬のにぶき艶          美歩

 

 富貴菊同じ顔して咲き誇る         鳥子

 

◎結女句

 

 花冷えや肩のあたりに足りぬもの      美歩

 


[河内静魚 選]※全十九句
 

 どこ迄が咲けば満足サイネリア       分水嶺

 

 春ショール押さへつ上る錦帯橋       夜空

 

 花冷やチョコレートボンボン剥きかけて   桃兎

 

 サイネリア焼き立てクッキーつまみ喰い   知花

 

 推敲を重ぬる脇のサイネリア        陶青子

 

 花冷や旅の地酒を少し酌み         地平線

 

 サイネリアふはりと坐るチマチョゴリ    夜空

 

 湯の町の海に上りし春の月         地平線

 

 うつすらと雲の色づく春の月        分水嶺

 

 サイネリアエキゾチックな港町       毬

 

 帰り道のいつも上りや春の月        桃兎

 

 先頭はもう陽炎の中にゐる         結女

 

 ホーチミンにて

 春の月サイゴン川に舟連れて        毬

 

 教会の十字にかかる春の月         分水嶺

 

 ホーチミンにて 

 サイネリア多国籍語の裏通り        毬

 

 庭先に朝日あつまりサイネリア       地平線

 

 たんぽぽや自由は私の一部なり       むらさき

 

 ほどほどに寂しくて良し春の月       綺羅里

 

 彩どりを揃えて贈るサイネリア       分水嶺

 

 

 

[夜空 特選]

 生湯葉のふつくり炊かれ春の月       桃兎

 

[むらさき 特選]

 春の月兎の尻尾先丸し           知花

 

[走流 特選]

 シネラリア好きといはれて好きになる    結女

 

[分水嶺 特選]

 さういへばお手玉は何処サイネリア     桃兎

 

[陶青子 特選]

 キッチンカーのどこか控へ目サイネリア   走流

 

[桃兎 特選]

 春の月煮切りみりんに溺れけり       結女

 

[綺羅里 特選]

 春月や大島紬のにぶき艶          美歩

 

[結女 特選]

 花冷えや肩のあたりに足りぬもの      美歩

 

[地平線 特選]

 彩どりを揃えて贈るサイネリア       分水嶺

 

[美歩・鳥子 特選]

 水桶に一滴の墨春の月           桃兎

 

 

以上でした♪

 

 

次回、2024年5月の句会の兼題です。

 

[春惜しむ 惜春] 

 行く春に名残を惜しむ心で、主情的な季語である。自然も生活も明るく活気に満ちた季節だけに、過ぎゆく春への思いは、寂しさひとしおの感がある。

 

[長閑(のどか) のどけさ、のどけし、駘蕩(たいとう)]

 長い春の日の、穏やかな気分のことである。天も地も人も、この世のすべてがのんびりとゆったりしているのである。春の季感の一つにのどかなこころの状態を発見し、うらうらとともに『枕草子』の頃から使っている形容だが、いまは春の陽光の明るさをうららかとして用い、ゆったりとした春の一日をのどかとして使っている。駘蕩はそのような春の景色の様相を指している。

 

 (「合本現代俳句歳時記」角川春樹編 より)

 

  ことごとく箱空にして春惜しむ   川村智香子

 

 

 

●次回:2024年5月4日土曜日 13:00〜  会場:白金台いきいきプラザ(白金台駅1番出口向い) 2F-B室

●兼題で四句、当季雑詠で三句、の計七句お持ちください。

 

 

 

 古来より変らぬ愛のセリフ春

 

 あたたかや銀座の裏の隅田川

 

 好きになることは簡単霞草

 

 日のひかりみな夜へ帰す春夕べ

 

 山門を下りる頃より春しぐれ

                      静魚



 令和六年三月のSHIROKANE句会のご報告です。 参加は静魚先生、夜空さん、走流さん、分水嶺さん、地平線さん、陶青子さん、綺羅里さん、美歩さん、知花さん、旅男さん、むらさきさん、鳥子さん、桃兎の13名。 毬さんからの投句を含め、全九十八句の中から、先生の特選、選と参加者それぞれの特選を清書順にご紹介いたします♪ 

 

 

今月の兼題

[春夕べ 春の暮、春の夕(ゆうべ)]

[霞草 群撫子、花糸撫子]

 他当季雑詠

 

 

 

 

 

 

 

 

 [河内静魚 特選]※全七句 ◎は特選中の特選です♪

 

◎永き日や箪笥ひと棹空にして        夜空

 

 寒月や磨きこまれしカウンター       美歩

 

 小澤征爾逝く

 あたたかや「ボクの音楽武者修行」     桃兎

 

 霞草抱きて白き日曜日           毬

 

 カーテンの丸くまとはる春夕べ       知花

 

 春宵やシェリーの琥珀とろけゆく      走流

 

 寒月やオンザロックの音透けて       美歩

 


[河内静魚 選]※全十三句
 

 石段を踏み外したり冬夕焼         美歩

 

 逝く人も逢ふ人もあり春の宵        陶青子

 

 春夕べローストオニオンの甘き       走流

 

 花嫁に降り注ぐ愛かすみ草         鳥子

 

 霞草掴んでみれば消えにけり        綺羅里

 

 保育園迎へ待つ子や春夕べ         旅男

 

 絵のやうな字配りの文うららけし      桃兎

 

 つつましき陽の中にあり蕗の薹       走流

 

 脇役の光るドラマや霞草          分水嶺

 

 式の後思ひあふれしかすみ草        知花

 

 でこぼこの心溶けゆく春夕べ        毬

 

 シクラメン鉢より溢るハートの葉      夜空

 

 クラリネットの軽き響やクロッカス     地平線

 

 

[鳥子 特選]

 宙に舞ふワルツのごとし霞草        むらさき

 

[旅男 特選]

 お台場はいまクレヨン画春夕べ       静魚

 

[桃兎 特選]

 永き日や箪笥ひと棹空にして        夜空

 

[走流 特選]

 春夕べ余韻ばかりの空あふれ        むらさき

 

[綺羅里 特選]

 扉閉づ音のしてをり春ゆふべ        桃兎

 

[美歩 特選]

 春の宵ふはりふはりと紗のかかる      夜空

 

[むらさき 特選]

 霞草抱きて白き日曜日           毬

 

[知花 特選]

 セロファンの中は窮屈霞草         毬

 

[分水嶺・地平線 特選]

 日のひかりみな夜へ帰す春夕べ       静魚

 

[夜空 特選]

 子の声の柔らかになり春夕べ        鳥子

 

[陶青子 特選]

 山門を下りる頃より春しぐれ        静魚

 

 

以上でした♪

 

 

次回、2024年4月の句会の兼題です。

 

 

[春の月 春月、春月夜、春満月] 

 一般に春の月といえば、もっぱら朧月のイメージが強いが、春の月が、朧月と別に季語として立てられているのは、朧に包まれた月に限らない、すべての春の月を指しているということである。春の月の中でも、とくに満月は全体に橙色をたたえてぽってりとした重量感がある。春の月には秋の月のような透明なさやけさがない代わりに、ほのぼのとした親しみとあたたかい艶がある。

 

[シネラリア サイネリア、白妙菊、富貴菊、蕗菊、蕗桜]

 キク科の多年草でアフリカ原産。栽培されて四、五月ごろ野菊に似た紫・赤・白・絞りなどの花を開く。病人の見舞の際「シ」の音を避けて「サイネリア」と呼ぶ。

 

 (「合本現代俳句歳時記」角川春樹編 より)

 

  蹴あげたる鞠のごとくに春の月   富安風生

 

 

 

●次回:2024年4月6日土曜日 13:00〜  会場:白金台いきいきプラザ(白金台駅1番出口向い) 2F-B室

●兼題で四句、当季雑詠で三句、の計七句お持ちください。

 

 

 

 風花や一点見つむマリアの眼

 

 春待つや浅き呼吸を二回して

 

 春待つやきれいな風に声かけて

 

 早梅や濁音まろき京女

 

 春待てり化粧しづかに落としつつ

 

                      静魚



 令和六年二月、節分の日のSHIROKANE句会のご報告です。 参加は静魚先生、夜空さん、走流さん、分水嶺さん、地平線さん、陶青子さん、綺羅里さん、美歩さん、知花さん、むらさきさん、鳥子さん、桃兎の12名。 毬さんからの投句を含め、全九十一句の中から、先生の特選、選と参加者それぞれの特選を清書順にご紹介いたします♪ 

 

 

今月の兼題

[春待つ 春を待つ、待春]

[早梅 早咲きの梅、梅早し]

 他当季雑詠

 

 

 

 

 

 

 

 

 [河内静魚 特選]※全六句 ◎は特選中の特選です♪

 

 日脚伸ぶ三つ子のやうな老婆達       夜空

 

 早梅やあかるき風のとほりくる       地平線

 

◎遺されし春手袋の長き指          桃兎

 

 春待つやあはきとろみのスロー・ジン    桃兎

 

 節分や羽織にひとつ遊び紋         桃兎

 

 早梅や咲きて物音軽くなり         綺羅里 



[河内静魚 選]※全十一句
 

 春スキー空色のウェア白く照り       むらさき

 

 待春やチェロのくびれの艶めかし      毬

 

 早梅や微笑むときのかたゑくぼ       走流

 

 眼裏に早梅の朱をとどめ置く        夜空

 

 梅早し彼はクラスの人気者         むらさき

 

 あちこちの土膨らみて春を待つ       鳥子

 

 人形に鼻筋一つ寒灯            走流

 

 春を待つ芝の芽吹きの暖かし        知花

 

 待春の想ひ一つに句座弾む         夜空

 

 私には私の生き方梅早し          鳥子

 

 早梅やほつとかほだす奈良ことば      走流

 

 

[分水嶺・夜空 特選]

 風花や一点見つむマリアの眼        静魚

 

[美歩 特選]

 早梅やバギーに眠る双生児         陶青子

 

[走流 特選]

 春待つやきれいな風に声かけて       静魚

 

[桃兎 特選]

 待春やチェロのくびれの艶めかし      毬

 

[陶青子 特選]

 眼裏に早梅の朱をとどめ置く        夜空

 

[綺羅里 特選]

 啼き声の数の中より冬鷗          静魚

 

[地平線 特選]

 春待つや左右のてのひらゆるく組み     走流 

 

[鳥子 特選]

 人形に鼻筋一つ寒灯            走流

 

[知花 特選]

 蕗味噌や出来を喜び酒深し         むらさき

 

[むらさき 特選]

 早梅や花なき枝のショコラ色        桃兎

 

 

以上でした♪

 

 

次回、2024年3月の句会の兼題です。

 

[春夕べ 春の暮、春の夕(ゆうべ)] ※「合本現代俳句歳時記」では「春の暮」が見出し季語になっています。

 暮には、時刻と、時候の両義があるが、近代になっての春の暮は、春の夕暮のほうに重点が置かれはじめた。春の宵と差がないが、春の宵のもつ浪漫的雰囲気は薄い。

 (「合本現代俳句歳時記」角川春樹編 より)

 

[霞草 群撫子、花糸撫子]

 コーカサス地方原産のナデシコ科の一年草。切花用として広く栽培されている。茎の高さ約三〇〜五〇センチ。茎は円柱形で直立し、上方で再三、二又分岐して枝を広げる。葉は皮針形で対生し、先が長く尖り、基部は浅い心臓形。

 三、四月ごろ白く小さな花を細い枝にいっぱいつける。カスミ草は俗称で、群撫子が正しい名。花柄が糸のようなので、花糸撫子ともいう。シソ科のホトケノザを、一名カスミ草というが、本種とはまったく別の植物である。

 (新訂「現代俳句歳事記/石田波郷・志摩芳次郎編」主婦と生活社 より)

 

 

 しろがねのやがてむらさき春の暮   草間時彦

 

 

 

●次回:2024年3月2日土曜日 13:00〜  会場:白金台いきいきプラザ(白金台駅1番出口向い) 2F-B室

●兼題で四句、当季雑詠で三句、の計七句お持ちください。

 

 

 

 

 浅草の板めく空や松の内

 

 切なさはいつも直線水仙花

 

 崩れたる波の力や野水仙

 

                      静魚



 令和六年一月、SHIROKANE初句会のご報告です。 参加は静魚先生、夜空さん、走流さん、分水嶺さん、地平線さん、陶青子さん、綺羅里さん、火水さん、知花さん、旅男さん、むらさきさん、桃兎の12名。 毬さん、美歩さんからの投句を含め、全九十八句の中から、先生の特選、選と参加者それぞれの特選を清書順にご紹介いたします♪ 

 

 

今月の兼題

[松の内 注連の内、松七日]

[淑気]

 他当季雑詠

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 [河内静魚 特選]※全七句 ◎は特選中の特選です♪

 

 引くやうに寄するかなしみ冬すみれ     桃兎

 

 品書の紙の白さや松の内          走流

 

 何事も淡々として松の内          綺羅里

 

◎前髪の少し伸びたる松の内         火水

 

 粗塩で洗ふまな板淑気満つ         毬

 

 葛湯とく母の眼差し稚児のごと       地平線

 

 何気ない仕草好もし初笑          走流 



[河内静魚 選]※全二十二句
 

 買ひ物に妻粧へる松の内          走流

 

 祝箸水引かけてしめやかに         地平園

 

 似合ふのに父ついぞ着ず赤ジャケツ     桃兎

 

 まな板の音広がりて淑気満つ        毬

 

 紙香の栞ひとひら淑気満つ         桃兎

 

 代筆の一語添へある賀状かな        旅男

 

 正月に身を寄せ合つて余震なほ       火水

 

 龍の字の墨黒々と淑気かな         分水嶺

 

 晩年のかくありぬべし冬紅葉        分水嶺

 

 参道の香具師の口上淑気満つ        走流

 

 松の内足袋の硬さのありにけり       知花

 

 年寄りの二日掛りの福詣          分水嶺

 

 角帯の角の先より淑気かな         夜空

 

 しやぶり食ふ骨付き肉や虎落笛       旅男

 

 秒読みのタクトの先の淑気かな       毬

 

 大地震に一気に醒める屠蘇の宵       夜空

 

 青竹に朝日の射せる淑気かな        地平線

 

 一幅の龍と目の合ふ松の内         夜空

 

 白煙のまつすぐ昇る冬至かな        綺羅里

 

 身の内もはればれとして松の内       美歩

 

 美しき耳のありけり初句会         走流

 

 気がつけばカレー連食松の内        むらさき

 

 

[知花 特選]

 黒猫の瞳の奥に淑気あり          陶青子

 

[陶青子 特選]

 まな板の音広がりて淑気満つ        毬

 

[むらさき 特選]

 初フラメンコヒールの音の軽やかさ     火水

 

[火水 特選]

 しわくちやの人生でよし初鏡        毬

 

[走流 特選]

 プリズムをぬけきしやうな淑気かな     桃兎

 

[旅男 特選]

 切なさはいつも直線水仙花         静魚

 

[綺羅里 特選]

 山茶花の白静寂の白き夜          毬 

 

[地平線 特選]

 参道の砂利踏む響き淑気満つ        旅男

 

[夜空・桃兎 特選]

 粗塩で洗ふまな板淑気満つ         毬

 

[分水嶺 特選]

 崩れたる波の力や野水仙          静魚

 

以上でした♪

 

 

次回、2024年2月の句会の兼題です。

 

[春待つ 春を待つ、待春]

  春の近い訪れを待つ心。「春近し」よりも主観的で、待ちわびる気持ちが強い。ことに北国で、雪に閉ざされている人たちや、寒さに弱い人たちは、「待春」の情はひとしおであろう。

 

[早梅 早咲きの梅、梅早し]

  冬季の早咲きの梅の花をいう。風の当たらない暖かい地などに、季節にさきがけて開く梅。寒紅梅や冬至梅は早く開花する品種であるが、早梅は品種の相違ではないので注意が必要である。

 

 (「合本現代俳句歳時記」角川春樹編 より)

 

 

 早梅やくちびる朱き童女仏    沢木欣一

 

 

 

●次回:2024年2月3日土曜日 13:00〜  会場:白金台いきいきプラザ(白金台駅1番出口向い) 2F-B室

●兼題で四句、当季雑詠で三句、の計七句お持ちください。

 

 

 

 暮れかけの島浮きあがる小春かな

 

 うるはしや障子を閉ずる手のかたち

 

 思ひ出はいろいろな色木の葉降る

 

 障子越し波うつやうな加賀言葉

 

                      静魚



 令和五年十二月、ことし最後のSHIROKANE句会のご報告です。 参加は静魚先生、夜空さん、分水嶺さん、綺羅里さん、美歩さん、知花さん、旅男さん、むらさきさん、鳥子さん、桃兎の10名。 毬さん、走流さん、地平線さんからの投句を含め、全九十一句の中から、先生の特選、選と参加者それぞれの特選を清書順にご紹介いたします♪ 

 

 

今月の兼題

[小春 小春日、小春日和、小春風、小春空、小六月]

[障子 冬障子、腰障子、明り障子]

 他当季雑詠

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 [河内静魚 特選]※全六句 ◎は特選中の特選です♪

 

 小春日や東京時間忘れましよう       分水嶺

 

 鮟鱇鍋競ひあつたり不仕合せ        桃兎

 

 七五三宝尽くしの帯締めて         夜空

 

 あはあはと闇浮いてゐる障子かな      走流

 

 空間に花の香満つる白障子         綺羅里

 

◎かるく寄す波に背ある小春かな       走流 



[河内静魚 選]※全十三句
 

 不可思議な男と女小春の日         鳥子

 

 日のいろのほどけしいろや小春空      走流

 

 ひもすがら小春の寺を巡りけり       旅男

 

 しづかさや小春の里の石畳         地平線

 

 鍋裏をぴかぴかにして小六月        桃兎

 

 鮟鱇や用意周到なる君と          むらさき

 

 父の詠み遺せし川柳小春風         桃兎

 

 小春日や側にあの人居るごとし       分水嶺

 

 旅の宿障子の奥の鳥の声          地平線

 

 小春日の仔犬のしつぽ二重丸        知花

 

 障子開け猫と目のあふ夜半かな       綺羅里

 

 熱燗の湯気の目にしむ薄明り        旅男

 

 子が開けし障子の穴はそのままに      分水嶺

 

 

[桃兎 特選]

 京しぐれなり男箸女箸           静魚

 

[鳥子 特選]

 子狐のこんと鳴きさうな障子かげ      夜空

 

[旅男 特選]

 鍋裏をぴかぴかにして小六月        桃兎

 

[綺羅里 特選]

 小春日や側にあの人居るごとし       分水嶺

 

[夜空 特選]

 白障子銀座の音のやはらげる        桃兎

 

[美歩 特選]

 潔き鋏の音や松手入            地平線

 

[むらさき 特選]

 小春日の音美しく転がるる         鳥子

 

[分水嶺 特選]

 障子越し波うつやうな加賀言葉       静魚 

 

[知花 特選]

 七五三宝尽くしの帯締めて         夜空

 

 

以上でした♪

 

 

次回、2024年1月初句会の兼題です。

 

[松の内 注連の内、松七日]

  門松を立ててある期間をいう。普通は七日までであるが、十五日までのところもある。松のある門は正月気分がただよう。この期間が過ぎて門松や注連飾りが取り払われることを松明・注連明けという。

 

[淑気]

  新春のめでたい気配を指す。新年をことほぐ天地の間には、瑞祥の気がみなぎっている感じを受ける。新年だからといって天文気象に特別な変化はないが、荘厳の気のただようめでたい気分を感覚的に捉えたもの。

 

 (「合本現代俳句歳時記」角川春樹編 より)

 

 

 青墨をやはらかに磨る淑気かな    加藤三七子

 

 

 

●次回:2024年1月6日土曜日 13:00〜  会場:未定

●兼題で四句、当季雑詠で三句、の計七句お持ちください。

 

 

 

 秋灯の届かぬ闇は敵のごとし

 

 出迎へのやうな匂ひや金木犀

 

 なんとなく家族があつて秋灯

 

 細き雨降るやうな月明りかな

 

 ひとり居のひとりを照らし秋灯

 

                      静魚



 令和五年十一月、SHIROKANE句会のご報告です。 参加は静魚先生、夜空さん、分水嶺さん、地平線さん、綺羅里さん、美歩さん、知花さん、旅男さん、桃兎の9名。 毬さん、走流さん、むらさきさんからの投句を含め、全八十四句の中から、先生の特選、選と参加者それぞれの特選を清書順にご紹介いたします♪ 

 

 

今月の兼題

[夜寒 宵寒、夜寒し]

[秋の燈 秋燈、秋燈(あきともし)]

 他当季雑詠

 

 

 

 

 

 

 


[河内静魚 特選]※全六句 ◎は特選中の特選です♪ 

 

 秋の燈やカランとしづむおもきこと     美歩

 

 しつぽだけ動くロボット夜寒し       桃兎

 

 ひとり居の無色透明宵寒し         桃兎

 

◎秋果盛るセザンヌよりも美しく       分水嶺

 

 十月の風の便りは着くかしら        夜空

 

 銀を研ぐ指先にある夜寒かな        毬 



[河内静魚 選]※全十四句
 

 秋の燈や老眼鏡の似合ふ人         むらさき

 

 晩秋の耳にやさしき風の息         毬

 

 秋燈や妣の写経の薄き墨          旅男

 

 紅葉見て酒なめてまた紅葉見て       むらさき

 

 山の端の空の最も夜寒かな         走流

 

 見る度に傾いてゐる薄かな         分水嶺

 

 秋の夕幼児の靴裏干してをり        美歩

 

 人影のかげに重なりやすき秋        走流

 

 秋燈や笑ひさざめく家に居り        夜空

 

 銭湯は早目に済ませ秋の暮         地平線

 

 サイフォンの小き炎の夜寒かな       知花

 

 秋灯を消して新酒の時を待つ        地平線

 

 鳥の声秋夕焼にしづみをり         美歩

 

 缶コーヒー飲めば夜寒の部屋広し      走流

 

 鳥渡る智恵子の空のあり処         旅男

 

 宵寒や野外音楽へと向かひ         むらさき

 

 

 

[美歩 特選]

 音も無し宵の寒さの衣着て         知花

 

[知花・旅男 特選]

 ひとり居の無色透明宵寒し         桃兎

 

[分水嶺 特選]

 湯豆腐やつひにこの世に二人きり      桃兎

 

[桃兎 特選]

 猫の背のつやつや光る夜寒かな       静魚

 

[夜空 特選]

 秋果盛るセザンヌよりも美しく       分水嶺

 

[地平線 特選]

 秋あかり他愛なき事楽し事         むらさき

 

[綺羅里 特選]

 銀を研ぐ指先にある夜寒かな        毬 

 

 

以上でした♪

 

 

次回、2023年12月の句会の兼題です。

 

[小春 小春日、小春日和、小春風、小春空、小六月]

  小春は「小六月」ともいい、陰暦十月の異称ともなっている。立冬を過ぎて日ごとに寒さが加わってくる中にも、よく晴れて風も穏やかな日和が続くことがある。移動性高気圧にすっぽり覆われるからで、これを「小春日和」という。「小春日」というとその中の一日のことをいい、またその日差しの意ともなる。小春風・小春空・小春凪などと使う。寒さに向かう中でほんのひととき迎える暖かい日々を、春のようだというので小春と可憐に呼んだものと思われる。

 

[障子 冬障子、腰障子、明り障子]

  日本家屋特有の建具である。細い木を格子に組んで骨とし、紙を張って、風や寒気を防ぐのである。冬の住居にはなくてはならぬものである。

 

 (「合本現代俳句歳時記」角川春樹編 より)

 

 

 めがね拭くことを幾度も小春かな    細見綾子

 

 

 

●次回:2023年12月2日土曜日 13:00〜  会場:会場:火水さんのマンション ファミリールーム

●兼題で四句、当季雑詠で三句、の計七句お持ちください。