原子力発電を考える石巻市民の会 日下郁郎

原子力発電を考える石巻市民の会 日下郁郎

「原子力発電を考える石巻市民の会」(近藤武文代表)は、東北電力の女川原子力発電所が立地している宮城県石巻市で、1979年より原発問題に取り組んでいる市民団体です。

Amebaでブログを始めよう!
きのうから衆院選が始まった。認知症の母(92歳)の寝床のそばにいる私の耳にも宣伝カーの声が響いてくる。しかし、耳を傾ける気にはなれない。

母は10月物を食べることができなくなってからは、看護婦だった妻が取り替えてくれる点滴で命をつないできた。だがついに、大きく口を開けたまま息を吸いそして吐きそれを繰り返して、この世とは別の世界へと前進を始めた・・・

きのうの夜、盛岡で仕事についている娘のまどか(和)が帰ってきた。先ほど盛岡に帰っていったが、このひと時の帰郷のおかげで久しぶりに気持ちが楽になり、このところ自分の心が石のように頑なになっていたことに気づかされた。

この頃時々本屋に行ってはあるかどうか確かめていた本があった。最近読んで圧倒され、何故か是非三人の娘たちに読ませたいと思っていたものだ。
市内のどの書店でも見つけられなかったがその本は、読売新聞の記者たちが調査報道し一冊の本にまとめ直した『東電OL事件 DNAが暴いた闇』(中央公論新社)である。この10年ほどに読んだ本の中で、これほど圧倒されたものはなかったような気がする。是非読んでほしいので、以下、簡単に紹介してみよう。


東京電力本店で企画部経済調査室副長として電力事業と日本経済の関係について論文を書くなどする一方、仕事が終わると渋谷の円山町で道行く男性に声をかけたり、なじみになった客と待ち合わせたりして売春行為を繰り返していた女性が殺された事件(事件からもう15年も経つ)を覚えていないだろうか。
この事件の犯人とされたネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリさんは15年間も獄中に閉じ込められた末、今年6月釈放された。この釈放や帰国は大きく報道されたので、ご存知の方は多いのではないだろうか。
この事件の再審の扉を開いたのが、こ本をまとめた読売新聞の記者たちの調査報道だった。この本は、最近珍しい傑作ルポルタージュだ。

息子の無罪・釈放を見届けることなく亡くなった父親ザヤと、長い間ひたすら息子の無罪を信じて待った母親チャンドラカラの思いが偲ばれる。
父親の顔もみることなく育ち、ネパールで犯罪者の子ども扱いされて成人した二人の娘、ミティラとエリサが不憫でならない。
二人の子供を抱え、夫の無罪を信じて生きてきた妻ラダのひたむきさに心打たれる。
しかし何より、外国人を取り調べる日本の警察・検察の横柄さ、無法ぶりには驚かされる。
そして、ネパールを初めとする多くの「途上国」の人々が、日本という国をどういう目で見ているか、世界の国々の中で日本はどんな国なのかを、外の目で知ることもできる。
それらの点で目を開かされることの多い、しかも、いったん読み出したら最期まではらはらしながら読まされる本だ。
是非、この本を手に取って、世界と日本の現実に目を向けてほしい。