今回は、敷金返還、原状回復義務 の裁判例を紹介します(つづき)。

オ これに対し、控訴人は、本件更新料の趣旨について理解しないまま本件更新料支払条項に承諾させられたものであるとして、そのような本件更新料支払条項は、消費者契約法の趣旨に反し、無効である旨主張する。
 しかしながら、賃貸借契約書(《証拠略》)及び重要事項説明書(《証拠略》)によれば、更新によって賃貸借期間が2年延長される一方で、更新時に旧賃料の2か月分を支払う旨が明記されている上、証拠(《証拠略》)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、本件賃貸借契約の締結時において、更新時に本件更新料の支払いが義務付けられており、礼金と同様、本件更新料が返還の予定されていないものであることについても認識していたことが認められるところであり、本件賃貸借契約の締結時において合意されていなかったものが後になって支払いを要求されたわけではなく、契約条項としてあらかじめ合意されていたものであることからすると、賃借人である控訴人としても、本件更新料が、賃借人である控訴人のために設定された賃借権が本件賃貸借契約の更新によって当初の賃貸借期間よりも長期の賃借権になったことに基づき、賃貸借期間の長さに相応して支払われるべき賃借権設定の対価の追加分ないし補充分であることを理解することが不可能ないし著しく困難であったとは認められない。そして、賃借人である控訴人が、本件更新料について、本件賃貸借契約が当初の賃貸借期間よりも長くなったことに伴って支払うべきものであるという認識を有していたのであれば、本件更新料の趣旨の理解として不十分であるとはいえず、それを超えて法的な見解に基づく説明を受けていなかったとしても、本件更新料支払条項を無効と解すべき程度まで本件更新料の趣旨について理解していなかったものということはできない。
カ また、控訴人は、本件更新料について、中途解約があった場合に精算されないことの不当性を主張するが、例えば、本来的には全額が返還されるべき敷金について、いわゆる敷引き条項によって返還を受けるべき金額が賃貸借契約の終了後まで確定せず、しかも、その控除分の明細及び具体的根拠が判然としないような場合は、敷金の返還を見込んでいた賃借人の合理的な期待に反するとして、敷引き条項の不当性を肯定する余地があるものの、本件更新料については、賃貸借契約書(《証拠略》)及び重要事項説明書(《証拠略》)において、本件更新料支払条項として月額賃料との比較をもって明確に記載されている上、前記オで認定したとおり、控訴人は、本件更新料が返還の予定されていないものであることを認識していたのであるから、中途解約をした場合に本件更新料の返還ないし精算を受けることができるという期待を抱いていたかのような主張をするのは、本件賃貸借契約の締結時における自己の認識と明らかに符合せず、到底採用することはできない。
 これに関し、控訴人は、本件更新料支払条項について、控訴人が本件賃貸借契約を中途解約した場合に更新料を精算しないものとしていることは、いわば賃料の二重取りに該当するとして、控訴人にとって信義則に反する程度にまで一方的に不利益となる旨主張する。しかしながら、前記判示のとおり、本件更新料は、賃借人である控訴人に設定された賃借権が本件賃貸借契約の更新によって当初の賃貸借期間よりも長い賃借権になったことに基づき、賃貸借期間の長さに相応して支払われるべき賃借権設定の対価の追加分ないし補充分と解されるところ、実際、本件賃貸借契約の更新によって、借地借家法26条1項但書による期間の定めのない


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