神手 [裁定の行方]
2010 FIFAワールドカップ 南アフリカ大会は、スペインの初優勝で幕を閉じました。
日本チームの活躍もあって、大変、盛り上がった大会でしたが、その立役者の一人は、様々な意味合いで大会に話題を齎してくれたアルゼンチン代表のディエゴ・マラドーナ監督であったと思います。
さて、アルゼンチンチームですが、スーパースターのメッシ選手を始めとした充実した選手層もあって順調に予選を勝ち上がりました。
決勝トーナメント1回戦では、メキシコと対戦。
立ち上がり、メキシコのボール回しにより得意の攻撃の形がつくれないまま苦戦しました。
しかし、26分を経過したところでアルゼンチンのメッシ選手のスルーパスからテベス選手がシュート。
ゴールキーパーが弾いたボールを再びメッシ選手が浮かして、ゴール前にいたテベス選手にパス。
「重要なゴールを決められて良かった。」とのコメントの通り、テベス選手がヘディングで先制点を上げました。
ところが・・・
VTRを見ても、メッシ選手が浮き球のパスを出した時点で、オフサイドなのは明らだったのです。
しかし、判定は覆りませんでした。
結局、この1点でアルゼンチンが落ち着きを取り戻したからなのか、メキシコが納得の行かないゴールで同様したのかは判りませんが、アルゼンチンが2点を追加して、最終的には、3-1でアルゼンチンがベスト8に進出しました。
ご存知の方が多いかと思いますが、マラドーナ監督には、「伝説の5人抜き」と呼ばれる逸話があります。
1986 FIFAワールドカップ メキシコ大会。
大会はアルゼンチンが決勝で西ドイツを3-2で下して、2度目の世界王者となっています。
この「伝説の5人抜き」は、準々決勝の対イングランド戦の後半8分で起きました。
センターライン付近でボールを奪ったマラドーナ選手が、ドリブルで、次々とイングランドの5人のフィールドプレーヤーとゴールキーパーをかわして無人のゴールにボールを蹴り込んだのです。
誰もが度肝を抜かれるようなスーパープレーでした。
今回のワールドカップでも、土壇場で、ハンドなどの反則プレーで危機を免れた場面もありました。
この「伝説の5人抜き」をした試合後のマラドーナ選手は、「イングランド代表がフェアだった。」から実現できたプレーだったともコメントしています。
しかし、実は、この4分前には、マラドーナ選手のもう一つの伝説が起きていたのです。
それが、「神の手」とも「悪魔の手」とも言われるプレーです。
イングランドのディフェンダーがゴールキーパーへバックパスを送った瞬間、マラドーナがペナルティーエリア内に走り込んだ。
焦ったゴールキーパーとマラドーナとの競り合いになったが、ヘディングを狙いにいったマラドーナ選手が左手で素早くボールを叩き、ボールはそのままゴールインしたのです。
今、大会でも、マラドーナ監督と言うこともあって、誤審による運の良さからアルゼンチンが優勝するのではないかとの意見も少なくありませんでした。
しかし、アルゼンチンは、次の順々決勝で、ドイツにまさかの1-4と大敗してしまいました。
運も実力の内と言う考えもあります。
しかし、勝ち負けで、人生が大きく変ってしまうプロスポーツ選手のことを考えると、裁定の運、不運は決してあってはならないことと考えます。
しかし、裁いているのが人間である以上、絶対ではない。
また、絶対ではない人間が裁いているからこそ、趣きがあると評ずる方もいます。
様々な競技で裁定に、VTRなどが導入されている中、今後、サッカーがどの様な方向に進むのかを見守るのも楽しみでもあります。