自民党総裁選は両院議員総会のかたちで行われると言われていますので、一般党員選挙にはならないということでしょう。この場合、地方票は都道府県連単位の範囲に留まるので、現国会内の派閥勢力が次期総裁総理を決定する基礎票になるわけです。
 

つまり、この時点で残念ながら、次期総裁総理候補から石破さんは外れます。

 

次に、安倍さんの辞意や、辞意表明を受けて、安倍政権への評価も自民党の支持率もV字回復しています。

 

これに加えて、新総理が新内閣を組閣すると「ご祝儀相場」という支持率上昇がほぼ例外なく期待できます。つまり、V字回復した自民党支持率がさらにアップするということです。

これを加速させる次期内閣は、

 

菅内閣です。

 

菅さんは表面上無派閥なので、各派が相乗りしやすいこと。安倍政権を支え続けてきたこと。政権運営能力に結果的に実績があること。派閥の力学として、安倍さんが所属する最大派閥の細田派がまず乗ります。次に麻生派も、麻生さんが総裁選不出馬を既に表明しているので、乗りやすいでしょう。そこに二階派が乗ると言う構図です。二階幹事長も、次期、副総裁副総理のポストを約束すれば、政権への影響力が維持できるので、そのようなアプローチを既に菅さんに対して、表明している節が見受けられます。

 

さらに、次世代を担う二人を以前にも懸念として述べた「官邸主導」固めのために起用するのです。

 

官房長官に河野さん。

 

官房副長官に小泉さん。

 

発信力と地味な仕事師である菅総理の脇を若手のホープが固める。

 

以上の組閣に伴い、

 

党務の要の幹事長ポストには、二階さんを副総裁副総理に引き上げ、安倍さんの意中の人と言われた岸田さんを希望通り抜擢すれば、岸田派も協力できるでしょう。

 

閣僚には、女性を抜擢する。

 

衆議院から野田さん、小渕さん、参議院から三原さん、あたりを入閣させれば、内閣の好感度がアップするのではないでしょうか?

稲田さんにも菅さんは配慮するかもしれませんし、日本会議に配慮して杉田さんにも副大臣ポストが用意されるかもしれません。

 

麻生さんの処遇をどうするか、二階さんの処遇をどうするか、岸田さんの処遇をどうするか、そのような派閥の力学に配慮した布陣と、以上のような組閣方針を立てれば、菅内閣の支持率は発足直後に頂点をむかえ、その任期を来年9月とする「暫定政権」的状態から、「本格政権」に再起動するため、解散総選挙を打つ。

 

こういうシナリオになるのではないでしょうか?

 

日程的には当初から噂されてきた10月13日(火)公示、25日(日)投開票。

 

組閣の時期は、野党合流にぶつけてくるでしょう。(9月16日前後)

 

私の愛妻・山川ゆりこがこの激流に呑み込まれないで、戦っていく野党にとっての最大の課題は「政党交付金」です。国民民主党が民主党時代から蓄えている50億円の交付金のいくえが論点になります。玉木さんを含む国民民主党全員が立憲民主党に合流するのであれば、新・立憲民主党にこの交付金が移行し、大所帯になっても、合流新党が選挙に耐えるだけの資金力が確保できたはずですが、玉木さんが別の党を立ち上げると言っていますから、このことが未解決の問題になっていきます。

 

きれいごとではなく、選挙にはお金がかかるのです。小選挙区内の30万世帯、60~70万人市民への国政報告や、印刷物配布、各地にポスターを貼り、街頭演説活動をしたり、タウンミーティングをしたりするには、人材も抱えなければなりませんし、実際の広報物などを整えるだけでも気の遠くなるような資金がかかります。だから、河井夫妻が党から受け取っていたとされる1億5000万円もの資金が自民党内からリークされる原因だったわけです。

 

この合流新党の資金処理が決まらず、各候補者の調整が決まらない野党結党直後こそが、解散の好機であると政権が判断するのは政治の厳しい現実だというわけです。

 

自民党には合流新党や野党各党には比較にならないほど多額の政党交付金が、所属議員数に比例して蓄積されています。さらに、政権政党ですから、経済団体からの献金も集まってきます。

 

この事実だけを見ても、自民党は選挙戦に勝利するための格段に大きな原資を蓄積しており、野党がどう集まっても太刀打ちできないほど大きな物量戦を展開することが可能なのです。

 

その資金力を電通という巨大広告代理店に投入して、自民党の選挙戦略をバックアップしているわけです。ネット戦略も含めて・・・

 

これが日本の政治の現実です。

 

どうぞ、このことを踏まえて、この政局を見つめていきましょう。

 

厳しい秋の政局を思いつつ

 

瀬戸健一郎
ポリティカル・セオリスト
MA Political Theory 2019-2020
Dept. of Government, Univerisyt of Essex