海辺の奇岩城 -2ページ目

海辺の奇岩城

イタリアのパイプメーカー CASTELLO のラスティックグレード SEA ROCK BRIAR を中心に紹介していきます。
その他のパイプもたまにはあるかも。
不定期、のんびり更新で。


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サイズコードもREG.No_も持たない無印の74F。今回は荒唐無稽な仮説でこの個体に迫りたいと思います。

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74番は高さ67ミリにも達するチムニーシェイプ。以前ご紹介したSC 74Fと同じくアーミープッシュのステムを装備しています。

photo:03


刻印は 74F MADE IN CANTU' CASTELLO SEA ROCK BRIAR

ステムに HAND MADE CASTELLO 5

と打たれています。
先にも触れた通りサイズコードが無く、刻印の順序もSレターサイズコード期の中期以降と違っています。
ダイアモンドシャンクに並行四辺形の刻印スペースを持つ個体や比較的新しい物でシャンクサイドに楕円形の刻印スペースを設けた物には、その刻印スペースの面積や形状の制約からか刻印の並びが通常と違う物やその製造年代からしてあるべき幾つかの刻印が省略されている物も散見されますが、当個体のようなストレートシェイプのシャンク下面に帯状の刻印スペースを持つ個体に於いては打刻の抜けは極めて稀な物と感じます。
まあ、カステロのことですから、刻印が抜けていたとしても“カステロらしさ”として好意的に(?)受け取られてしまい、あまり気にされる事はないのではないでしょうか。
しかしながら、自分なりに少ないとは言え複数のカステロを見てきた印象では、カステロというメーカーは刻印に関して極めて几帳面なファームであると感じています。
自分も含め少なくない日本人が20世紀中盤のイタリア製品に対して『魅力的ではあるが造りはいいかげん』であり『ダメなところも可愛さのうち』という印象を持っているのではないでしょうか。
例えば同時期のイタリア製の自動車について、『新車当時からドアの建て付けが悪かった』とか『慣らし運転中にエンジン故障した』などという評判は聞いたように思います。でも『最初からドアが付いてなかった』とか『故障かと思ったらエンジンが載ってなかった』等という話は聞いた事がありません。
カステロの刻印についても薄い物やダブルスタンプなどはあれど抜けている物はまずお目にかかれません。それどころか他の文字列に重なっても打たなきゃならない物は打つんだ、という使命感すら感じる程なのです。

この事から僕は一つの仮説を立ててみました。
つまり、『カステロにはサイズコードを持たない製造時期がある』という事です。
期間としてはREG.No_期とSレターサイズコード期との間、1949年から1951年に始まり1951年から1955年、つまりSレターサイズコード期が始まるまでのほんの短い期間、無印シーロックの時代があったのではないかと考えます。

推測の根拠としては

① それ以前のREG.No_期はサイズコードが無かったのでその仕様をそのままキャリーオーバーしたと考えられる事。

② SEA ROCK BRIARの書体等の条件からSレターサイズコード期の比較的早い段階で製造されたと思われる個体にも、この様な刻印の並びが見られる事。

③ 復刻REG.No_ではない真性REG.No_期の物もMADE IN CANYU'とCASTELLO SEA ROCK BRIARの並びが当個体やSレターサイズコード初期の物と思しき個体と同じになっている事。

です。
但し③についてはREG.No_期の物はシェイプナンバーが最後尾になっており、根拠としては弱いかもしれません。

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そしてこのラスティックのテクスチャー。
刻まれたギザギザは現行よりも更にきめ細かく、REG.No_期の物と酷似しています。更に大胆な溝彫りを備えており、これはSレターサイズコード期に通じる物を感じさせます。

これを根拠の④に挙げたいと思います。

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今回はトンデモ仮説の与太話に終始してしまいパイプの紹介としては不充分な物となっておりますが、このシェイプにつきましてはSC 74Fのエントリをご参照いただければ幸いです。



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