すずきさんに、前妻に手紙を送れ、
要求は資金の返却と苗字をかえさせること。と指示をしてそれを書かせた。
文面は彼が考えた。
返ってきた一通目の手紙は、わたしが初めて触れる前妻の姿だった。
・・・
前略
手紙を受け取りました。とても驚きました、そして読みながら手が震えてきました。怖くなってきたのです。
正直な気持ちを書きますね。
苗字について。離婚の際、「子供たちが離婚を公表したくないと言っているし、すずきという苗字をもとに考えた名前だから、そのまま使ったらいい。実家にも了解を得た」と言っていたのは、お父さんでした。
またお金の件。マンションを購入する際に、このマンションを探してくれたお父さん。
高いのではないかと迷っていた私に、新しい人生のスタートを切るんだからいいんじゃないかと背中を押してくれたのもおとうさんでした。何かを急いでいる感じもしたのですが。
財産分与の金額についても、最初は不安だったわたしですが、高すぎないか。というお父さんに、ではどうしますかと、私は聞く耳をちゃんと持っていたと思います。最後に金額を決定したのはお父さんでした。
今回の離婚に関して、
お父さんの主導で意見を聞きすすめてきました。
協議書をつくってくれたのも、お父さんでしたね。
昨年の〇月〇日の夜に離婚を提案され、それ以来胃が痛み、
不安で胸がざわつく毎日を送ってきました。
良そうもつかない自分の未来に、どうしていいかわかりませんでした。
が、4月以降、わたしはあることを決めたのです。
お父さんの言うとおりにしようと。
お父さんが再出発をしたいのなら、最後はお父さんが後悔しないよう、
意見を言うのをやめようと。
そして〇月〇日に私たちが家を出た後・・・きっぱりと新しい毎日を送れるように。
あまりに私がどうしていいのかわからない時期には、
「もっとできることをやったらどうだ!」と怒られたこともありましたが、
なんとか当時のご希望通り、手続きをすべて踏んできたのではないでしょうか。
私はてっきり終わったことと、
再出発をされているものだと思っていました。
それが、1年も経たないうちに変更を。
苗字の変更の話では「実家の父も同じ意見」だと。
離婚の際には、もう大人なんだから手続き後に報告するだけでいいだろうと言っていたお父さんが、
今回の手紙に義父様のご意見を書くのも信じられず。
一般のサラリーマンと比べられるなんて心外だといっていたお父さんが、
自分をサラリーマン生活者だという。
なんだか信じられなかったです。この一年に何があったのか。
私に対しての不信感、不合理な気持ちが大きくなっていたことが私にとっては何より残念で、
読みながら怖くなったのです。
前置きが長くなりましたが相談の件について返答しますね。
これもわたしの素直な気持ちで。
苗字の件については、できればこのまま使わせてください。
あえて離婚を公表せずに暮らしている横浜にいる間は、すずきの苗字を使いたい。
もし向こうに帰ることがあれば、その時に考えても良いことかもしれませんが、
私は良くても子供たちの名前を変えるのはとても抵抗があります。
やはり画数などをとても吟味してつけた名前でしたからね。
そしてお金の件。
これは財産分与の金額のうち全額でしょうか。
全額なら今現在の預貯金を合わせてもたりず、
マンションを売却しないといけません。
一部でしたらどれくらいをお考えでしょうか。
そのあたりがお手紙から私は読み取れませんでした・・・
今現在、私の収入は不定期のアルバイトと、
今年の〇月にやっと当選した、ひとり親を対象とした就業支援での訓練手当。
月に5万くらいでしょうか、それも今年に入ってやっと当選したのです。
それまでは夏あたりから短期や不定期のアルバイトを3つほど掛け持ちしておりました。
子どもたちの帰宅時間を考えると働く時間も短く、月に3-4万ほどの収入でした。
それでも私は14年ぶりの社会復帰が嬉しかったのですが。
この後、在宅就業をするのか、外に働きに出るのかはわかりませんが、
勉強したことが活かせる職に就けたらいいなと思っています。
そして〇〇が高学年になる頃には、私の働くお金で日々の生活ができるようになるのが今の目標です。
なので、暫くは資金の返還を待っていただけないでしょうか?
待つことが嫌いなお父さんのこと、よくわかっているのですが・・・
私の体調が悪くなったときにいつも思うのです、もし私に何かあったらこの子たちはどうなるのか?病気だけでなく事故にあっても・・それは私だけでなく、すべての親がそう思うのでしょうが。
まだ離婚から1年もたたず、何のめどもたっていない私には、はいどうぞ、と返却することができないのです。
もうしばらく待ってください。金額によって、考えていきたいと思います。
昨年から考えると、まだ一年も経っていないことが不思議なくらい、
いろんなことがありました。
私なりにお父さんに気を遣っていた結婚生活でしたが、今は自分ですべてを決断しなければならないことが自由でもあり、不安であり…お父さんならどうするか?と思ったことも何度もありました。
また、お父さんに怒られる夢を何度も見ました。
本当に最近ですよ、そういう意識がだんだん薄くなり、お父さんの夢も見なくなったのは。
できれば、また手紙にて返信を頂けると助かります。
私に対して大きな嫌悪感を持たれていると思うと、お父さんと面会したり声をきくのが怖いのです。
最後になりましたが、お父さんの再婚の話。
私は、そうされるだろうと思っていました。もしかしたらもう再婚されているのかもと思っていました。
子どもたちも少し複雑かもしれませんが理解はするでしょう。
この子たちは本当にいい娘です。
いつも笑ってくれています。
私はただただ、この娘たちの笑顔が消えないよう、それだけを考えているかもしれません。
いろんなことを今、3人で乗り越えています。
まだまだこれからだとは思っていますが、3人なら頑張れる気がしています。
早々
・・・
これを読んだ瞬間・・・わたしは発狂して手紙をやぶり、床にばらまいてふみじった。
わたし「なによ?この舐めた手紙は?」
すずき「え・・・」
わたし「あんたの文面がなまぬるいから、この女はこんなに勘違いしてるんじゃないの??何、再婚に対して娘たちは理解するでしょう・・・って?理解?おまえの娘が理解する、しない、なんてことは、私たちには全く関係ないってことが、どうしてわからないのかしらね??」
すずき「そんなこと俺にいわれても」
わたし「グダグダと長ったらしい、不快な手紙だわ。ところであなたはこんな文面にほだされてないでしょうね?」
すずき「ほだされるって?」
わたし「就業支援がどうこうだの、眠れないだの夢に出てくるだのって話よ。いーい?家でPCいじくってるだけで月5万円受け取って、母子家庭手当を受け取って、子ども手当を受け取ってるのよ。情報系の専門技術がある人間でも、中々在宅ワークで食べていくのは難しいっていうのに、そんな在宅支援程度の講習受けたところで、内職だけで食べていけるわけないでしょ?それに、高学年になるまでマトモに働く気はありませーんっていってるのよ?わかる?ほんとに自立したいなら、朝も夜もなく働けばいいじゃない?子どもったって上の子に面倒みさせればいいでしょ??身を粉にしてフルタイムで働いてますって話なら、同情の余地もあるけどね。
ずいぶん、悠長な話だと思わない???この女は社会に、そしてあなたにたかろうとしてるのよ。」
すずき「・・」
わたし「あなたはバカだから、文面だけサラっと読んで騙されるかもしれないけどね。わたしにはわかるわ。この女が怠け者だってね。怠け者のくせに、妙にへりくだって自分に同情させるのはうまい、狡猾な女よ。それにあんたは騙されてきたってわけね。」
すずき「そうかもしれない」
わたし「そうかもしれない、じゃなくてそうなのよ。要りもしないガキの情報をつらつら書いてきて、もしかして、あなたにその情報が必要だって勘違いしてるんじゃないの?えらい勘違いだわね。でも、そう思わせたのにはあなたにも責任があるのよ。どんな手紙を送ったんだか知らないけど、ヌルいことを書いたんでしょうね。ほんとに、あなたに任せておくとすべてがグダグダだわ」
すずき「ごめんなさい・・・文面は普通のつもりだったんだが…。」
わたし「要はナメられてるのよね。次から手紙を書くときは文面チェックもさせてもらうから」
すずき「はい・・・」
そしてすずきさんは、返信を書き、わたしに封筒を渡してきた。