HITOMI -165ページ目

嫁ぐ日を前に・・・


Lactea



 味の記憶 


 あのときの音楽

 あのときの風景


 それとと同じように

 あのときの味を味わうことで

 鮮明によみがえるキヲク



 


川がに

この味は、嫁ぐ日の前夜、

しあわせと少しの寂しさが入り混じったキヲクをよみがえらせてくれる。

今はもちろん、私の結婚式の時代も

式場に直接いって、お仕度をすることが多いと思います。


でも、もっと以前は、実家でお仕度をしていたのではないでしょうか。

私は、自分の生まれた「家」から嫁ぎたいと思っていて・・・

花嫁姿で、家をでたかった。


母は、その気持ちを知っていたわけではないのですけれど

昔の風習が色濃く残る家でしたので

結婚式前夜から、親戚や友人とたくさんの方々が集まってきてくださって大宴会。

泊まっていただき、当日の朝は、お仲人さまにも来て頂き

祝杯と祝膳

その頃は、仕出しというのも一般的ではなかったので全部手作り。


当日の朝、花嫁衣裳を身にまとい

皆様に祝杯を頂き

嫁ぐ日のお歌にみおくられながら家を出る。


前を向いて玄関をでていた私に、「ダメよ!」と、伯母の一声がとぶ・・・

??

二度と帰ってこない覚悟をするために

後ろ向きで出るものです・・・と。

(そんな風習や作法なんて全く知りませんでした。)


式場のバスが待っていてくれるところまで

花嫁姿の私は、ご近所の方々に見送られ

生まれて育った地をあとにしました。


結婚式そのものよりも

このときの風景を思い出すと、泣けてきます。

感謝でいっぱいになります。


今、娘が20歳になって、今度は彼女が嫁ぐ番がくるわけですけれど

とても私には、母のようなことはできないと思います。



嫁ぐ日の前夜

伯父がもって来てくれたたくさんの小さな川かに。

から揚げにされたこのかにの味は

嫁ぐ日の

両親の娘でいられる最後の日の味。