ここ数年、地元のアウトリーチ事業に

弦楽四重奏で参加させて頂いています。

そこで時間を設けている質問コーナー、

主に5年生からの弦楽四重奏への質問と返答を

少し抜粋してみようと思います。

 

・練習時間はどの位ですか

練習時間は人によって様々です。

皆さんが家で勉強する時間も人によって違うように、

集中して1時間で終わらせる人もいれば、

LINEに返信したり、テレビを観たり、

間食したりしながら3時間の人も居るでしょう。

なので、目安になる時間は言えません。

ただ、ハッキリと我々(プロ)に共通している事は、

自分が納得いくまでは時間のある限り練習します。

 

・何年くらいでプロになれますか

バイオリンやチェロには分数サイズがあり、

身体の小さな子供の頃から弾くことができます。

幼稚園〜小学生くらいからスタートし、

音楽大学に進学、卒業後プロになる、

というのが一般的です。

 

・弦を押さえる指は痛くないですか

ほぼ毎日弾いているので、指先が少し分厚く、

指先が痛くなる事はありません。

(と、答えていますが、初心者の方からも

 指先が痛くなるとは聞いた事がありません)

 

・弦を弾く指は痛くないですか(ピチカート)

※1曲丸々ピチカートの曲を選曲しています

痛くなります!授業3コマは勘弁してほしい!

 

・楽器っていくらくらいなんですか

我々の持っている楽器の値段はお答えできませんが

例えば某通販サイトで数千円から、

某楽器店では初心者セット29800円から、

高いものだと数十億の値が付くものもあります。

※6年生〜中学生からの質問だと、

 一般的にプロが使っている弦楽器は

 7〜8桁くらいのものだとお答えします。

 

・弦は4本しかないのに音程はどうやって作っているのですか

同じ弦を同じ張力で半分の長さにした時に

1オクターブ上の音が出ます。

この長さの中に音が12個入っていて

弦を指で押さえて弦の長さを変えることにより

音程を作る事ができます。

 

↓これに付随してよくある質問

・印も無いのに、押さえる所はどうやってわかるのですか?

皆さんが階段で足元を見なくても登れるように

我々も練習によって手に感覚を染み込ませています。

 

↓さらにこれに付随してよくある質問

・どうやって音程を取る練習をするのですか

バスケットボールでシュートの練習をしますね?

あのカゴにボールを入れようと、

ただ闇雲に投げていたら上手にはならないけれど、

どうやったらあのカゴに入るかを考え、

あの四角のところを狙えば良いかもとか、

この距離だったらこのくらいの力加減とか、

だんだんわかってくるのでは無いでしょうか?

それとあまり変わらない練習をする事で、

バスケット選手がゴールに向けて投げたボールが

かなりの確率でカゴにシュートされるように、

我々も確実にその音が取れるような練習をします。

 

↑この答えかたは、

どうやって練習したら上手になれますか?

の質問にも使います。

何度も弾いて成功率が上がらなければ

下手になる為の練習をするのと同じこと。

まずはどうしたら良いか考え、

成功体験を身に付けさせる、を補足。

 

・壊れる事はありますか

弓の毛が切れたり、弦が切れる事はあります。

弓の毛は消耗品で定期的に替えてもらいます。

弦も消耗品、これは自分で交換します。

弦楽器は湿気や乾燥に敏感なので、

接着部が剥がれたり木が割れたりしないよう

管理にも注意を払っています。

 

・弦を押さえてる指を細かく揺らしているのはどうしてですか

ヴィブラート、といって(実演有り)

指を揺らして押さえている部分が

0.数ミリ変わる事で細かく音程をずらし、

音を豊かに聴こえるようにする技術です。

 

・指揮者がいないのにどうやって一緒に弾き始めているのですか

我々の息づかいが聞こえる人達もいるでしょう、

せーのっ!と息を吸うのを合わせたり、

楽器を上下しているのも見えると思います。

皆さんがじゃんけんをする時に

じゃん、けん(手をあげる)、ぽん(手を下げる)

こんな風にタイミングを合わせますよね?

それと同じような事をしています。

 

以上、よくある質問を思い出してみました。

 

 


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「音楽の世界にも、ゆとり世代を感じる事がありますか」

とのご質問を頂きまして。

 

私自身がゆとりに片足突っ込んでいるので

なんとも申し上げにくいのですが(^^;

時代だな、と思ったエピソードを1つ。

(音楽的な話ではありません)

 

とある若いエキストラの方。

楽団「依頼書と楽譜を送りますので住所を教えて下さい」

トラ「個人情報なので教えられません」

 

・・・えっ

  

 - - - - - - - -

 

真面目な話。

クラシック音楽にも流行があります。

私の学習した時代は原典研究が進み、

理論的に弾くように心がける癖がありますが、

ひと世代上になるとヴィルティオーゾ流行の時、

譜面の読み方や大事にする事も違ったりします。

 

学習した時代だけではなく新しい研究や情報で

上書きしていくかどうかは人によるので、

そういった部分にギャップを感じる事はあります。

 

 


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よく聴かれるのですが、

何が一番難しいですか、と。

 

私が難しいと思っている事は、

オーケストラには初心者マークが無い事。

でも仕事内容が同じなんですね。

大学を出たばかりのバイオリンTuttiと

40年働いているバイオリンTutti、

求められている仕事、譜面、全く同じです。

弾く所が少ないわけでもなく、

弾く曲が少ないわけでもなく、

間違えても許されるわけでもなく、

少しずつ慣れるという段階がありません。

 

絶対に無い過程を妄想してみましょう。

新人さんに向かって

「じゃぁ今週はまず、ここの一段を

 お客様の前で一緒に弾いてみようか」

一般の会社ならありそうじゃないですか?

 

かといって新人さんが「自分はまだまだ」

と思っているかというと、

おそらくそんな人は一人も居ない。笑。

私自身も13年前、自信満々の新人でした。

実力ではとても敵わない先輩方が多いけど、

オーディション受かったし私は私、みたいな。

子供の頃からアマオケで弾いてきた経験と、

大学や院、フリー時代の様々な経験を活かして

それなりに末席の仕事が出来ているつもり。

口ではどんなに謙虚でも新人とはそんなもの。

しかも私は謙虚でも無かったな…

当時20代の女性は私一人でチヤホヤされ、

黒歴史を思うと同僚達への感謝しか無いです。

なんかもう、すごく恥ずかしい。

オケの20代は多分皆忘れたい時代。

 

勿論、注意して貰うと有り難く受け取るし、

ハッと気付き善処する、他にも無いか考える、

皆良かれと思って懸命に努力していますが

何年も経って新人時代が黒歴史だと知る訳で。

本当に沢山の事を教えて頂きました、

それも自信を失わないよう、常に前向きに。

先輩方が暖かく見守ってくれていたので、

自分もそうしようと、守りたいと思うのです。

特に首席クラスの新人さんになると

期待が大きくて批判の的になったりもする、、

本当は慣れるまで見守って欲しいと思う、

でも。

舞台に立ってお客様の前に出る以上、

新人さんだから何かあっても許してね、

と堂々と言うわけにはいかないんですよね。

 

一般の会社で考えてみて下さい。

新卒が入社した4月、研修も無し、

年上のベテラン達を部下にして部長、

会議まとめて来週プレゼン行ってきてね!

仕事取れなかったらキミ、批判の的だよ!

・・えっと無理ゲー?ってなりませんか。

これが、オーケストラの新人さんだと、

優しい先輩方が軌道修正はしてくれるし、

会議の資料をまとめてくれて、お膳立て、

素晴らしいチームワークでまとまった、

プレゼンなんてした事ないけど

学校でやったスピーチ大会と同じよね、

得意だったしなんとかなるっしょ!

これくらいのメンタルが必要だと思います。

 

一番厳しい職業、コンサートマスター。

あの位置に座る人は大抵、

最初からコンサートマスターなんです。

2nd首席からコンマスになる人もいますが

Tuttiでオケの経験がある人はあまり無く、

オケをまとめるコンマスが新人さんだと

オーケストラの経験が最も浅いというわけで。

後ろのベテラン達から期待の眼差しを受け

バイオリンが上手ければ良いだけではなく

コンマスとしての仕事もする必要がある、

仲間の中にも厳しい人が少なからずいる、

お客様にも厳しい方々が沢山いらっしゃる、

そう、コンマスだから。

新人のコンマスって、一般で例えると、

22歳新卒で縁故無く常務取締役に就任とか、

そんな妄想も言い過ぎでは無いと思うのです、

そう考えると物凄く仕事が出来るでしょう?

 

某コンマスに聞いたことがあります。

最初に行ったオーケストラについて尋ねると

「あそこに居た時の自分は黒歴史しかない」

あー、コンマスもそう思ってるんだ、、、

と思って少し安堵。

 

プロのオーケストラに入る前に、

ユースオケや学生オケで弾いてるよね、

そこで経験積んでるよね、と思った方へ。

経験は自信になるし、ある程度役立ちますが

実際プロオケに入ってみるとわかるのです。

そこは今までの続きでは無い、という事を。

 

研修中、という腕章や名札を見ると

「だから許してね」と見えなくも無い、

それは出来ないのがオーケストラ。

これが難しい所、私も黒歴史を思い出します。

未来には"中堅の今"も黒歴史かもしれません。

勿論、最初からものすごーく出来る人もいます。

類稀な新人さんを見て「凄いなこの子」と思う、

自分の黒歴史を思い出すアラフォー。

 

とにもかくにも、

新人でもベテランでも仕事内容が同じ、

これが、最も難しい事だと思います。

 


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バイオリン奏者としてオーケストラのオーディションを受ける事を考えている方へ

という、

あまり需要のない解説です。

 

なぜオーディションをしてもしてもなかなか決まらないのか。

あの上手な人受けてくれてたと思うんだけど

(ブラインド審査の為受験生は全く見えない)

どうして残ってこなかったのかな、と。

それはもしかして受験生がオーディションで

「何を聴かれているか」を知らないからなのでは?

と、思い、

オーディションで我々は何を聴いているのか

という事について話してみよう思います。

因みに私が受験した時に徹底して心掛けた事は

審査員の気持ちを色々と考えた結果

「誰からも嫌われない演奏をする事」でした。

自由にソロや室内楽を弾く時と違って、

試験のニーズに対する演奏、という事です。

今となっては少し考え方が違ったな、

と思いますが、結果オーライです(^^;

 

※私はバイオリンTutti奏者ですので

 Tutti目線の評価基準となる旨ご理解下さい。

重要視する部分は人それぞれですが、

聴いている部分は大体同じです。

 

オーディションについて以前書いた解説は

コチラ

 

オーディションで聴いているのは勿論、

上手かどうかです。ただ、、、

コンクールで1位になった腕の持ち主でも

芸大を首席で卒業した人でも

受かるとは限らないのがオーディション。

単純に上手かどうかは基準の中の1つです。

 

次に、苦手な事が無いかどうかです。

これはオケスタで徹底的に聴いています。

例えば凄く上手だけど飛ばし弓は苦手とか、

上手なんだけどin tempoで弾けないとか、

そういった部分にも注目しています。

 

最も重要な審査基準は、

この人と一緒に働きたいと思う演奏かどうか、

オーケストラ奏者に向いていると思うかどうか。

※この解説では"Tutti奏者の場合"

普段オーケストラの中で弾いていて

「こういう弾き方の人、正直迷惑なんだよね」

という基準がオケマン皆夫々にあるわけで、

ダメなパターンがハッキリしているんですね。

 

Tuttiにオリジナリティ、求めていません。

・とにかくきっちり楽譜通り弾ける事。

・譜面上のルールを遵守する性格である事。

・何を求められているのか理解している事。

自由に弾く人は確かに一部の票は集めますが

人数で多数票となる弦楽器Tuttiの気持ちは

「この人とはちょっと一緒に弾けないな・・」です。

誤解の無いように申し上げておきますが、

一緒に弾きたいかどうかは室内楽とかではなく

あくまでオケTuttiとしての審査基準であり、

また、表現力を消して欲しいわけでもなく

まず楽譜通り弾けるかを聴いてるのよ!

という心の内があります。

※表現力を聴きたい曲がオケスタに1曲程度

 挿し込まれている事もあります。

 

さてその上手なのに基準に合わない人達。

本人は楽譜通り弾いているつもりなんだけれど

では一体どこが間違っているというのか。

オケスタのレッスンをしていて

「楽譜通り弾いてくれる?」と言うと

「え、どこか間違ってましたか?」と言う、

正確な音程だけが目標の人に知って欲しい。

試験で音程は合っていて当たり前です。

ここからは受験生によくありがちな、

無意識に弾いている部分を書いていきます。

 

・弓の使い方が適当で、音が中膨らみする。

 譜面上では「ターーー」と書いてある単純な音を

 弓の使い方が荒いせいで「ゥワアーァ」となる、

 なんとなく弾いている人にとても多いです。

 自分の演奏を録音して聴くと良いですね。

 

・テンポが揺れる。

 協奏曲でもオーケストラスタディでも、

 特にモーツアルトでありがちです。

 

・付点のリズム”ターンタ””ターータ”が甘く、

 ”タンタ””タータ”といい加減になる人。

 オケスタでは、これを判定する為に、

 付点のリズムが多く出てくる簡単な曲が1曲は出題されがちですが、

 曲が簡単な為に練習してこない人も。

 これはどのオケスタにも共通する事ですが

 「何故この(簡単な)曲が出題されたか」

 の想像力があると良いかなと思います。

 

・付点のリズムと同じように、

 音価を大事にせず、音符の長さが適当な人。

 8分音符と8分休符での1拍、この8分音符の長さと

 4分音符の長さの1拍、この4分音符の長さ、

 これを弾き分ける事なく同じ長さで弾く人、

 多いですね。作曲家が気の毒になります。

 

・spiccato指示に、ベタ弾き。

 跳ね弓が苦手だと思われます。

 出来る事はしないと出来ないと思われます。

 

・速く弾けるかどうか出している課題に対し

 ゆっくりテンポで弾く人。

 速く弾けないんだなと判断されがちです。

 

・アクセント付いているのを無視、

 逆に付いていない音に無意識に付くなど、

 細かな指示を守らない、

 また無意識な音がそこかしこに見られる。

 細かい部分は合奏で必ず注意されるので

 楽譜の情報をよく見て弾いて下さい。

 

・例えば、pは小さい音でという指示ですよ?

 fとffは音量が違うんですよ?

 というダイナミクスの無視も少なくありません。

 

・ターヤッパッパッという形のリズムを

 エンヤートットッと弾く。

 右手の技術を磨いて頂くか、

 弾ける腕を持っているなら意識を高く。

 

・タンタタというリズムがタァタタとなる。

 これも同じく右手に技術がないと思われるか

 細かいところを大事にしないと思われがち。

 

・フレーズの終わりの音が「バーン」と、

 謎の決めが入る人、意外と多いです。

 フレーズ感がない、もしくは意識が低いと思われます。

 

ザッとこんな感じでしょうか。

弦楽器は幼い頃から弾いている人が多い分、

なんとなく楽譜を見ている人も多いです。

管楽器は殆どの人が楽譜に正確ですね。

打楽器の人は最も楽譜に忠実且つ柔軟。

だからこそ、弦楽器だけではなく

管打楽器からの票を集める為にも、

楽譜通りとにかく正確に弾く事は重要なのです。

 

同僚たちを見ていると、

皆楽譜をよく見る事を心掛けている上に、

やはりきっちり弾けるほど表現力への余裕も感じられます。

そういった学習を持って、

何十年一緒に働くことになる同僚を

真剣に聴いて選んでいるのです、

頑張れ、と手に汗握りながら。

→オーディションは最も疲れる業務です。

 


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楽隊の舞台裏

という別のブログも書いています。

こちらと同じくあまり更新しておりませんが、

ヴィオラジョークや現場で面白かった事など

楽隊ならではのどうでもいいお話ですので

もし宜しければ覗いてみてください。

楽隊の舞台裏

 

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レッスンのご希望や演奏など"ご依頼"で

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恐れ入りますが、

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※匿名の方には対応しません。

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※Facebookでのお友達申請は受け付けておりません、ごめんなさい。

 

レッスンはバイオリンのみです。

ピアノやヴィオラ、楽典など専門外は

基本的にはお断りしております。

 

我が社のオーディションを受けて下さる予定で

オケスタなどのレッスンを希望される方は

いつも無料で聴かせて頂いております。

他オケを受験される方は別途ご相談ください。

 

※動画へのアドバイスなどは既に生徒さんの方のみ。