【石畳と赤さびのゴールの下で】 | 侍BALLERS U-LAW OFFICIAL BLOG

【石畳と赤さびのゴールの下で】

「家を飛び出し24時間も掛けて向かうその先ってどんな場所だろう。」


それはきっとオーロラのような神秘を感じるようなモノを求め足を進める場所なのだろう。


「前日に到着してまで満を持して臨む場ってどんな場所だろう。」



それはきっと来日を果たす大好きな海外アーティストを目に焼き付けたいからといった周到な準備で迎えたい場所なのだろう。大抵はそういったところだ。


でも僕が知る全国からやってくる彼らがそうまでして向かう場所はどれも違う。


そこは、ネオンに彩られるどころか街灯、いや灯りすらままならない街から離れた暗がりの公園。それも平日の夜にだ。



そしてこれは大人に限った話ではない。少年はなけなしのお金をはたき電車を乗り継いでやってくる。まさに、映画"stand by me"のソレであり、帰りのことはその時に考えるような粗末な計画というより最初っから考えてなかったりする旅。それ位に夢中になっているようだ。



そこには何があるのか?



数十年もの間、陽にさらされ続け、赤さびが目立つ古びたバスケットゴールが一基、お世辞にも良いコンディションとは言えない浜風に乗ってやってくる砂にまみれた石畳だけ。


昨日この石畳には、気が付けば50を越えるほどの人がいるではないか。そこで初めて出会った小学生から40代後半までの大人たちは即席チームを結成し鎬を削り合う。


とは言え、初めて出会った者同士また、即席のチームでは動きはもちろんお互いのプレイなど分かりっこない。ましてやバスケットボールはいくら才能溢れる1人がいたとて簡単には勝てない。でも一度敗北するとそこで終わる。だからこそ彼らはどうしても勝ちたい。



ここで僕は促す。「チームメイトと話し合うんだ。とにかく喋るんだ。プレイ中に声を出せ。もっと自分を知ってもらい、仲間を知るんだ。」これらをしつこい位に僕は言い放つ。



始めはよそよそしかった彼ら。初見でもあるからそれは仕方がないといえばそうかもしれない。だが、口うるさくしつこいラーメンマン野郎の声で渋々話し合いを持ちだす。



そして僕はその様子を見ながらいつもニヤけてしまう。何故ならそこから驚くほどに彼らが変わっていく事を知っているからだ。



互いに一度話しだすと、そこから試合前には互いにマークする相手や、チームメイトと作戦まで練りだすのだ。そして、彼らで考えた思いがプレイに伝わったとき、彼らはとんでもない表情を生む。



また、それに拍車をかけるように褒め言葉も罵声も遠慮なしに拡声器から放つものだから彼らはどんどん感情的になっていくわけでそこへ誘うために僕は喋り続ける。



気が付けば互いを名前で呼び合い、苦しい状況にでもなれば気が沈みそうな仲間を励まし鼓舞しあい高め合っているではないか。



すると、こんな素晴らしい瞬間に立ち会える。始めはボールを持てばパスする相手を探すといった消極的に感じられたプレイヤーが仲間に後押しされ意を決し、初めて自らゴールにむかいアタックした。残念ながらシュートは外れた。でもそこで終わりではない。むしろ始まったのだ。



彼の目つきが変わった。そしてそれから彼は何度も何度も挑戦していく、そしてとうとうそのシュートが入った瞬間。



周囲の割れんばかりの称賛の歓声が鳴り響く。自らのシュートで勝利を掴んだ彼は周りを気にするどころか、コートに響き渡るほどに言葉にならない程の思いを大きな声で叫んだ。



彼は、今までは周りばかりを気にしていたとか、周りと違ったことをするのが怖かったと話していた。だけれどあの瞬間、周りを気にするどころか自らの意志で向かい続け、周りが驚くほどに声を上げた。そして、何故だか知らないけれど涙が出てきたんだよな。僕はそんな君を見て涙が溢れていたんだ。でもね、キミは知っただけなんだ。



今までのキミは本当に"かっこいいキミ"を知らなかっただけなんだ。

僕は本当にかっこいいキミを"キミ自身"に知って欲しかっただけなんだ。



彼のように真っ直ぐな眼差し、意を決し向かう"あの表情"に変わる瞬間をこれまでに幾度となく見てきた僕は彼らから大きな力をもらっている。そして彼らに出来ないことなんて絶対になく、思いを貫き続ければそれがどんな分野であれ世界を変えるんだと信じて止まないのです。



隣の住人の顔ですら知らないといった人間関係が希薄になっていく現代社会において、



未知なるコミュニティを目指し自らの足でやってくる彼らに対し、僕は伝えたいことがたくさんあります。そんな彼らに対してこうした場所だから得られることがあります。



また、マチの兄ちゃんが1番かっこよく1番すげ~って存在でなければいけないとも思っています。そしてそれに自分もなれるんだって気付いてもらうため、"カッコイイ自分"を知ってもらうため彼らにきっかけを創れるのは学校や部活だけでなくマチも重要なエレメントなのです。


「1本のシュートで自らの世界が変わることを知った彼らはこんな暗がりな場所に全国から冒険にやってくるのです」



だからこそ、マチの兄ちゃんはマチの小僧たちの前では、ぶっ飛んでて馬鹿でうるさくてしつこくてスーパーヒーローでなければ。



まだまだ幾千にも足りない僕はこれからも積んでいかなければなりません。



20数年通い慣れた[石畳と赤さびのゴールの下]から世界へ

旅を続けます