高山観光の後は、いよいよ抽出に向かいます。
市街地からバスで約15分、抽出現場である家具メーカー「オークビレッジ」さんへ。
車から降り立つと、市街地とは、まったく違う空気…!
おりしも例年なら終わっているはずの紅葉は、今年は夏が長かったため、ちょうど見頃。
ロッジのようないくつかの施設に分かれている敷地内は、美しい秋色でした。
精油抽出は、その一角の小さな別棟で行われています。
ちょうどこの日はクロモジの抽出が行われていて、小屋に近づく度に、
ふんわ~り、あの清々しい木の香りが漂います。
よく見ると2層にわかれ、上が精油、下は芳香蒸留水。
コックをひねると、特殊な管の形状で、無駄なく水だけ抜く事が出来、最後に精油が残ります。
注目すべきは、地元の工場に特注したという抽出機械が、3台ずらり。
歴代の抽出機器も見せて頂きましたが、
試作を重ねて、現在のこのような形になり、
よりズムーズに精油とその下にたまる蒸留水をわけることが可能、という事でした。
抽出現場の責任者、Kさん。
以前は林業のお仕事をされているところをハンティングされて今のお仕事に就いたそうですが、
抽出だけでなく、森では、経験がないと見分けるのが難しい木の判別まで行う、木のスペシャリストです。
詳しい説明を頂きましたが、印象に残ったのは、
「有名なウィスキーのCMで、
『何も引かない、何も足さない』というのがあるけれども、
私たちは、『何も引けない、何も足せない』んですよ(笑)
アロマの専門家ではなかったから、
そんな技術や知識は、そもそも私たちにはないんです」
というお言葉。
そもそも精油とは、瓶に既に入った状態で出荷され手元に届く「加工品」。
人工的な香りの主要成分を足して出荷する事も、しばしばまかり通ってしまうのが、残念ながら昨今のアロマセラピー精油事情と言われています。
抽出現場を公開する事で、何も手を加えていない、まっさらな精油である事を、伝えたいという姿勢は、
トレーサビリティ(生産工程を公開し、安心•安全を消費者にわかりやすく示す)の現れといっていいですし、
それを現場で感じる事が出来るのは、この【Yuica】の精油が、アロマセラピストたちに支持されている大きな魅力になっているのを感じます。
クロモジの枝は細いため、この釜いっぱいに材料を集めるとなると、かなりの量が必要ですね。。
値段が他の木の精油に比べ、割高なのも、実際目の当たりにすると、納得ですね。
また実は精油は、たとえ原料には忠実でも、その抽出技術によって、出来上がるクオリティが全く違うという、非常にデリケートなものなのです。
蒸気や温度管理、まだどの段階まで抽出を行うか
(例えば時間をかけると、抽出時間の遅い揮発速度の重い成分まで完全に蒸留できる)など、経験と、熟練の技術が問われます。
地域により生育状態もちがうので一概にはいえませんが、
実際例えば同じクロモジ精油でも、Yuicaさんの精油と他の地域の精油では、香りがかなり、異なります。
アロマセラピストにとって、精油のクオリティは、いのち。
国産の精油は近年いろんな地域で、特産品としてアロマが生産されることも増えてきていますし、
同じ香りでもなるべく色んな地域のものを試すようにしていますが、
こういった、抽出のクオリティまで含めて製品を作っているのは、大変貴重な現場と言えると思いますし、
これから新しく生まれてくる国産精油の、目標となるひとつの理想のかたち、と言っていいのではないでしょうか。
夕暮れも近づいていたのですが、すぐ近くの、クロモジの木のあるフィールドも案内して頂きました。
同行させて頂いた、立教大学のシニア生徒さんたちも、削りたてのクロモジの香りの良さに、喜んでいた様子。
また、建物のすぐ裏手には、黄色く色づいた、ミズメザクラの木。
サクラの仲間ではないけれど、樹皮が限りなくサクラに似ているところから、名付けられた木ですね。
別名、梓(あずさ)。と聞くと、ああ、聞いた事ある!って感じでしょうか^^
かつて山の男たちは、この樹皮を、湿布代わりに木を運んで疲れた肩や足に貼ったそうです。
折った枝からは、あの、湿布の香り!
しかし、精油だときつく感じるあのサリチル酸メチル(湿布の特徴的な香りで、ミズメザクラ精油は100%この成分)も、
生だとこんなに優しくすっきりした香りなのだ!と、
個人的にはこちらにも感動しました。
ちなみにこちらは、家具ショールームにあったそのミズメサクラを使った大きな一枚板のテーブル!
木目が美しいですね。。ちなみにお値段は、約100万円ほどです!!
ショールームの脇には、ちょっとした「木の博物館」が。木目の違いなどが、一目で分かりますね。
そして最後のお楽しみは、こちら。
抽出し終わった残渣(ざんさ)での、足浴体験です!
この時既に、クロモジのリラックス効果で、眼がとろんとろんです(笑)
総勢30人近い人数で、一斉に足をつっこんで温まるのは、なんとも楽しい行事ですね!^^
そして、思いのほか…熱い!!
冷めてきても、少し掘り返してみると、かなり熱々です。
下からあっためてるの?と思った方もいたようですが、抽出が終わった残りの熱を、上手に利用しているのですね。
そして…予想はしていたのですが…クロモジの有効成分リナロールのため。。
すっごく、眠くなりました…zzz!!
精油なんかより、もうすこし、木の香りが濃くて、「酔わされる」と言った感じ。
リナロールは、アルコールの仲間の成分だという事が、アタマではなくカラダでわかった気がします。。
クロモジの疲労回復、安眠効果はメディカル的にも注目されてきているそうですが、それを身をもって味わえました。
そして嬉しかったのは、足浴中は、スタッフの方お手製の、シフォンケーキ!
このケーキ、なんとニオイコブシの葉っぱが練り込んであるそうで、
ほんのりあのすっきりとした香りが!
ニオイコブシは、別名、タムシバ(噛む芝)と呼ばれ、メントールに似たすっきりとした風味があります。
新進気鋭の料理シェフは、これをデザート(確かアイスクリーム?)に使ってしまうとか。
添えて頂いた本物の「クロモジ」も、もちろん香りをより深いものにしていました。
『森を味わう』っていうのは、これから注目の面白い取り組みの一つですね。
次回訪ねる時は、ぜひビレッジ内のレストランで、お食事も味わってみたいと思います。
紅葉の美しさ、空気の素晴らしさ、生の香りの奥深さ。
足裏に伝わった熱と心地よさ、下に残る森の味わい。
など、短い時間ながら五感をフル回転して、森の精油が生まれる現場を味わいました。
また、いつもお世話になっており現地スタッフの方の生産における真摯さ。
以前にもお会いしている事を覚えていて下さり、また出荷の際お世話になっているスタッフさんも含めて近況などお話しさせて頂くと、
だいぶ離れた東京で使っている私のようないちセラピストに過ぎないものでも、まるで親戚のような、親しみある感覚でした。
あらためて、生産者の「顔が見える精油」を使ってお仕事をさせて頂いていることを嬉しく感じましたし、
この香りたちをより多くのお客様に、ご紹介、ご提供したいという気持ちも芽生えました。
サロンを立ち上げるにあたって、大きなきっかけとなった、この国産精油との出会い。
自身のサロン活動のルーツを、しっかりと確認できた事は大きな収穫となりました。
また、今度は緑の多い季節に、改めてお伺いできたら嬉しいなと思っています。
ありがとうございました!
※翌日の白川郷観光については、また次回。。
アロマ生産よりももっと昔から受け継がれてきた「木を扱う匠たち」と、
Yuicaの名前にも含まれている「結」(ゆい)について、触れたいと思います。