誰にも言った事が無い。
誰もそれを疑わなかった。
1年の時も2年の時も、担任の先生は『お前の両親医者だもんな』と言うだけで、
理由も聞かなかったし、ただ『今の成績だとここの大学が目指せるんじゃないか』と持ちかけてくるだけだった。
しかし、山田先生は私の思いに気づいた。
私が目を見開いて山田先生を見ていれば、
山田先生は『…星野?』と探るように私を呼ぶ。
「お前、親が医者だからとか親に言われたからとかで自分の将来決めるなら間違えているぞ?
最終的にそれが自分に合っていたら良いとして、
もし自分に不向きだったり嫌になった時、『親が言ったから』とか親のせいにしないか?
『自分のやりたい事できなかった』って後で後悔するんじゃないか?」
「っつ!!」
図星だった。
私はこれで医療系の大学を進んで医者になったとして、
もしも自分に不向きだった時『親が進めてやったから』と都合よく親のせいにして逃げるんじゃないか…やっぱり自分のやりたい事やればよかったって後悔し続けるんじゃないのか。
「なら自分の夢からも親からも逃げないでちゃんと向き直れよ」
真剣な先生の言葉にグサッと刺された気分だった。
口の中がピリピリして辛い。
先生がぼやけて見えるのは………私が泣いているからだ。
そう言えば……
私は親に自分の夢を話した事なかった。
親に『こうしなさい』って言われて従うだけだった。
下を向けば頭の上に重みが……
山田先生が大きな温かい手で、私の頭をポンッと優しく撫でてくれていた。
「大丈夫だ。俺は星野の担任だぞ?お前の味方だから。
もし一人でだめなら俺が一緒に説得してやる。
それだから…夢を捨てようとするな。
もっと強欲になれ」
いつもふざけているとは思えない。
ちゃんと私の事も見ててくれて、支えてくれようとする先生。
山田先生、凄く良い先生じゃないか。
私は心がぐっと熱くなるのを感じた。