■日本酒と料理の相性を愉しむ…■

■日本酒と料理の相性を愉しむ…■

●季節ごとの日本酒とお酒のアテとの相性を愉しむ【お酒の歳時記】です… ●

 日本酒の魅力はその多様性にあると思います。
 一粒のお米から、造り手の「想い」によって、多彩な香りや味わいのお酒が生み出され、

時には「古酒」というスタイルで、先代の思いが数十年後にまで伝えられます。

 そして一つ一つのお酒は、様々な料理と組み合わせることによって、その愉しみ方は無限大に

広がってゆくのです…。

Amebaでブログを始めよう!

■甘酸っぱい夏の思い出…【仙禽 かぶとむし】
お酒このお酒のデータは…
蔵元 せんきん(栃木県・さくら市・馬場)
特定名称ほか 純米大吟醸 無濾過生原酒
原料米 「ドメーヌ・さくら雄町」(精米歩合50%)
酸度 非公開 アミノ酸度 非公開 酵母 ?
日本酒度 非公開 アルコール度 13.0
酒造年度 H26BY
 関東地方も7月下旬に「梅雨明け宣言」が出され、いよいよ今年も夏本番に突入しましたが、そんな猛暑の季節にも美味しく呑めそうな日本酒を発見しました。

 それがコレ、 
【仙禽 かぶとむし 無濾過生原酒】です。
 これは、「前衛的な酒造り」で知られる栃木の「せんきん」の蔵元が、蔵の「仕込み水」と同じ水脈の田んぼに作付けした「ドメーヌさくら・雄町」を原料米とし、毎年夏場に向けてリリースしている純米大吟醸酒なのですが、「かぶとむし」というユニークなネーミングや、レインボーカラーの可愛らしいラベルとも相まって人気上昇中のお酒です。
 また一般的に「原酒」と言うと、アルコール度数が18%程度と高めのものをイメージしますが、このお酒は「無濾過生原酒」というスペックでありながら、「割り水」(原酒を水で薄めて度数を下げる作業)をせずに、モロミの発酵や搾りのタイミングをコントロールすることによって、アルコール度数を13%」とワイン並みの「低アルコール」に抑えているのが大きな特徴です。

 香りのトーンは中程度で、「完熟すもも」を想わせる甘酸っぱい果実の香りや、「リンゴパイ」のようなフルーツデザートの香りがあり、「ほんのり華やかで、甘酸っぱさを伴ったフルーティーな香り」が感じられます。
 口当りはスムーズで、自然でキレイな甘味に続いて、柑橘類を想わせる「酸っぱい酸」が口いっぱいに広がります。
 後半からは脇役としての旨味も感じられ、後口の微かな苦みが余韻に絶妙なドライ感をもたらしています。
 全体的には軽やかな飲み口でありながら、味わいの存在感はしっかりとあり
「清涼感のある岩清水のような飲み口と、甘酸っぱい味のエキスが不思議に両立した、夏の体を癒してくれるオアシスのような味わい」のお酒でした。

 この「かぶとむし」はアルコール度数が13%と低いので、冷蔵庫で5℃位まで冷やしてお酒単体でゴクゴク呑むのもGOODなのですが、今回はこの「夏酒」に合わせて、「夏野菜を使った料理」2品選んでみました。

 まず1品目は【丸ごとトマトの和風ジュレ掛け】です。
これは湯剥きしたトマトを、昆布&カツオ出しと醤油ベースの「漬け地」に、丸ごと一晩漬けてじっくりと味を浸み込ませ、仕上げに和風のジュレを掛けたもので、見た目も涼しげな夏向けの冷菜です。
 冷蔵庫でしっかりと冷やしておいて、「雪冷え」の「かぶとむし」と合わせてみると、トマトの爽やかな酸味とこのお酒の切れ味抜群の酸がすんなりと融合し、また出し汁の旨味を伴った冷たくジューシーなトマト果汁と、清涼感のある「かぶとむし」の味わいが口の中で見事に一体になってゆきます。
 まさに「涼の極み」といった素敵なマリアージュで、「納涼ペア」と呼びたくなるような完璧な組合せでした。

  続いて2品目は
 【赤万願寺とうがらしの焼き浸し】です。
 「万願寺とうがらし」は京都の伝統的な夏野菜で、果肉が大きくて厚みがあり種が少ないのが特徴です。
 通常は「緑色」の状態で出荷されますが、収穫を遅らせて赤く色付いて出荷されたものは、「赤万願寺とうがらし」と呼ばれています。
 両面を焦げないように炙り焼きにして、生姜醤油に短時間浸したものをお酒と合わせてみると、「赤万願寺」のほのかな甘味と独特の苦味と辛味を、「かぶとむし」の自然な甘味を伴った酸っぱい酸が優しく包み込み、生姜醤油の風味や削り節の旨味が名脇役となって、口の中でそれぞれの要素が絡まり合いながら全体が調和してゆきます。
 お酒と料理が、互いの個性を尊重しながら出会いを重ねてゆくような印象の、とても相性の良い組合せでした。

 話は全く変わりますが、このお酒のラベルには「あなたの少年時代はいつでしたか」というセリフが書かれていて、七色の「かぶとむし」の絵とそのセリフを一緒に眺めていると、「かぶとむし」→「少年時代」→「夏休み」という連想から、往年の井上陽水の名曲「少年時代」のメロディーが、頭の中に自然と流れてきてしまいます。(そんなことを言うと年齢がバレてしまいますが…)
 ネット上からダウンロードした「少年時代」の曲をPCで聴きながら、夜中にこの「仙禽 かぶとむし」をグイグイと呑んでいると、子供の頃の夏休みの「甘酸っぱい思い出」がよみがえってきてしまいました…。夜の街

■いいとこ取りの酒!【山間 仕込み13号 中採り】
お酒このお酒のデータは…
蔵元 新潟第一酒造(新潟県・上越市・浦川原区・横川)
特定名称ほか 純米大吟醸 無濾過原酒 火入れ
原料米 新潟県産「越淡麗」(精米歩合50%)
酸度 非公開 アミノ酸度 非公開 酵母 ?
日本酒度 非公開 アルコール度 16
酒造年度 H25BY

 1月も半ばを過ぎて、ようやく日常生活モードへと戻りましたが、今宵はこんな一本を選んでみました。

 
【山間(やんま) 仕込み13号 純米大吟醸 中採り】です。

 これは、淡麗辛口王国として知られる新潟県の数々の蔵元の中で、独自の酒造りで異彩を放っている新潟第一酒造武田杜氏が、平成25酒造年度の「山間(やんま)」ブランドの最終出荷分としてリリースした、仕込み13号の純米大吟醸「中採り」です。
 日本酒造りの工程の一つに、醗酵を終えた日本酒の「モロミ」を搾ってお酒と酒粕とに分ける、「搾り」という工程があるのですが、その「搾り」の作業において、最初に自然に流れ出てくる部分が「荒走り」,その後少しずつ圧をかけて搾られる中間の部分が「中採り」,そして最後にしっかりとプレスして搾り切る部分が「責め」と呼ばれています。
 そして、一般的には「中採り」の部分が、酒質が最も安定していて良質のお酒であると言われています。

 香りのトーンは強めで、「完熟マンゴー」のようなトロピカルフルーツの香りや、「ティラミス」を想わせるビター&スウィートな洋菓子の香りがあり、「フルーティー&スウィーティーで、微かな焙煎香を伴った吟醸香」が感じられます。
 口当りはインパクトがあり、ジューシーな甘味とメリハリと厚みのある酸,そして舌にジワリと浸み込むような旨味が広がり、後半からは程良い苦味や渋みも加わって、複雑かつ心地良い余韻が口の中で長く続きます。
 後口のキレも良く、コクやボリューム感も十二分にあり、「複雑な香味を持つフルボディーな飲み口で、甘味・酸・旨味・苦味・渋味の五重奏が素敵に後を引く、魅惑的な味わいのお酒」でした。

 この「山間 仕込み13号 中採り」はフルボディーかつ濃密な味わいのお酒なので、お酒単体でもグビグビと呑めてしまうのですが、今回はこのお酒のパワーに負けないような、いわゆる「酒の肴」的な醗酵食品2品ぶつけてみました。
 まず1つめは
【いか一夜干しの塩辛】です。
 通常「いかの塩辛」は生のイカを使って造られるのですが、これはスルメイカを一度一夜干しにしてから造られていて、一夜干しにすることによって塩分も控えめで済み、またイカの旨味もより一層凝縮されていて、「イカ一夜干し」と「イカ塩辛」の両方の美味しいところを組み合わせたような、チョット面白い味わいの「酒の肴」です。
 さっそく合わせてみると、まずは「山間」のジューシーな甘味とイカの塩辛さが口の中で上手く釣り合い、続いてこのお酒の個性である、程好い苦味と渋味がぐっと前面に出てきます。
 「酒の肴」がお酒の持つ魅力をより一層引き出してくれる、「ナイスパートナー」と呼べるような組合せでした。 

 続いて2つめは
 【豆腐よう】です。
 これは、乾燥させた島豆腐紅麹泡盛を使った漬け汁に漬け込み、長期間にわたって醗酵・熟成させた沖縄の伝統的な醗酵食品で、紅麹の天然色素による鮮やかな紅色と、「練ウニ」のような風味とネットリとした食感が特徴で、まさに「旨味成分の固まり」といった印象の濃厚な味わいの珍味です。
 ほんのひとかけらだけ口の中に入れて、舐めるように味わいながらお酒と合わせてみると、「山間」の持つ甘味・酸・旨味・苦味・渋味の五重奏の味わいと、「豆腐よう」の持つ長期の醗酵・熟成により生み出された様々な味わいの要素が、口の中でそれぞれ複雑に絡まり合いながら融合し、魅惑的なハーモニーを奏でてくれます。
 「酒の肴」とお酒の両方の美味しさが倍増してゆく、文句なし
に◎と言える素敵なマリアージュでした。

 話は変わりますが、この蔵元では同一の仕込みタンクから搾ったお酒の中でも、いわば「いいとこ取り」とも言える「中採り」の部分だけに、「山間」という名前を付けて出荷していて、残りの「荒走り」と「責め」の部分については、両方をブレンドして「越の白鳥」という全く別の名前を付けて出荷しています。
 さらに今回の「山間 仕込み13号」は、希少な酒造好適米である「越淡麗(こしたんれい)」を、贅沢に50%まで磨いて醸した「純米大吟醸」バージョンなので、いわば「山間」ブランドの中でも最高スペックのお酒だと言えると思います。
 新年早々こんな美酒が呑めるなんて、何だかとっても幸せな気分になってきてしまいますね~。夜の街

■オールドスタイル?!の「ひやおろし」
お酒このお酒のデータは…

蔵元 飛良泉本舗(秋田県・にかほ市・平沢字中町)

特定名称ほか 山廃純米 生詰 ひやおろし
原料米 秋田県産「美山錦」(精米歩合60%)

酸度 2.1 アミノ酸度 ? 酵母 自社7号系酵母

日本酒度 +7.5! アルコール度 15

酒造年度 H26BY

 繁華街では年末恒例の「イルミネーション」が始まり、早いもので今年も残すところ1ヶ月を切りました。
 さて今宵選んだ一本は、
 
【飛良泉山廃純米ひやおろし】です。

 これは、秋田県の飛良泉本舗から今年の9月に出荷された山廃純米の「ひやおろし」で、購入してから約2ヶ月間我が家の日本酒保管庫(実は大型冷蔵庫の野菜室なのですが…)で寝かせておいたものです。
 ご存じの方も多いかと思いますが、「ひやおろし」とは早春に搾った新酒を一度火入れし、その後ひと夏の間熟成させて、秋になって外気温が下がってきた頃に、2度目の火入れを行わずに出荷するお酒のことで、要は「程よく熟成させたお酒」ということになります。


 香りのトーンはやや強くて、「玄米パン」を想わせる穀物類の香りや、「バニラアイス」のような甘い乳製品の香りがあり、「ふくよかで丸く、ほんのりと甘く柔和な香り」が感じられます。
 口当りはしっかりとしていて、まずは山廃仕込み特有の厚みのある酸がぐっと前面に出てきて主張しますが、それでいて、優しい甘味と豊かで膨らみのある旨味とのバランスはちゃんと取れています。
 余韻は長めで、後口にも明快でキレのある酸がはっきりと感じられます。
 コクやボリューム感も十分にあり、「しっかりとした濃醇な飲み口で、野性味あふれる酸が際立つメリハリのある味わい」のお酒でした。

 この「飛良泉」は、山廃仕込みならではの力強い味わいのお酒なので、あまり淡白な味付けの料理ではお酒に負けてしまうと思われたので、まずはこんな濃い目の味付けの料理を試してみました。


 
【牛すじ大根】です。
 これは「牛すじ肉(アキレス腱の肉)」を柔らかくなるまで長時間煮込み、そして大根と一緒に、醤油・酒・みりん・砂糖・出し汁を合わせた煮汁で炊いたもので、いかにも白いご飯が進みそうな「甘辛コッテリ味」の惣菜です。
 ご飯の替わりに「飛良泉」を合わせてみると、このお酒の際立つ酸が、一瞬でこの料理の甘辛コッテリ味を包み込んで程良いレベルの味へと変化させ、そして牛すじの脂もキレイに流してゆきます。
 お酒の酸が料理の味わいを洗練させてゆくような印象の、なかなか面白くて相性の良い組合せでした。 

 続いてはタイプの異なる「酸」同志の相性が見たくて、
【ボンド・ドゥ・ソローニュ】を試してみました。
 これはフランスのロワール地方「シェーブルタイプ」のチーズで、表面には程良く酸味を和らげて内部の水分を抜く為に「木炭の粉」がまぶしてあり、山羊乳特有のややクセのある香りと爽やかな酸味,そしてミルクの旨味が特徴のチーズです。
 やや口を窄める程の酸が広がったタイミングで、お酒と合わせてみると、「シェーブル」の爽やかな酸「飛良泉」の野性味溢れる酸,という2つの異なる酸が口の中でぶつかり合い、その後どちらの酸もややフラットなイメージへと変化してゆきます。
 相性としてはもちろん「×」ではないのですが、両者の「酸」の個性が消えてしまうという点を考えると、やや面白味に欠ける組合せと言わざるを得ませんでした。

 話が「ひやおろし」全般のことに戻るのですが、近年は日本酒蔵の冷蔵設備が整ってきたことにより、火入れ後の急速冷却や夏の間の冷蔵庫熟成が可能になっていて、その結果として、ひと夏寝かしてから秋口に「ひやおろし」の名前で出荷されていても、「あまり熟成感が感じられないタイプ」のお酒が増えてきています。
 もちろんそれらはそれらで、「今時のひやおろし」であると割り切って受け入れて、呑んで愉しめば良いとは思うのですが、今回こんな「昔ながらのひやおろし」を呑んでみて、やっぱり「オールドスタイル」の方がいいな~,と思ってしまうのは私だけでしょうかね…。夜の街

81%精米のプロトタイプ!【豊81チャレンジタンク】

お酒このお酒のデータは…

蔵元 三浦酒造(青森県・弘前市・大字石渡)

特定名称ほか 純米酒 火入れ
麹米 契約栽培米「豊盃米」(精米歩合81%)
 
掛米 契約栽培米「豊盃米」(精米歩合81%)

酸度 2.0 アミノ酸度 ? 酵母 協会1501号酵母

日本酒度 +1~+2 アルコール度 15%~16

酒造年度 H26BY

 飲食店勤務という仕事柄、お店の営業を終えて帰宅する時間は毎晩24時過ぎになってしまうのですが、自宅で深夜の晩酌を愉しみつつ、WEBサイト上のSAKE SHOPで日本酒の新規入荷状況をチェックするのが日課の一つとなっています。
 そんな中でチョット興味を惹かれてNET購入したお酒がコレ、
 
【豊81(ほうはい) 純米酒】です。

 これは、「豊盃(ほうはい)」ブランドで知られる青森県弘前市の三浦酒造が、年に一度だけ通常の酒造りとは異なるスペックで仕込む、「チャレンジタンク」と呼ばれるプロトタイプのお酒で、今年度のチャレンジの最大の特徴は、通常ならば精米歩合55まで精米(お米の外側を削る作業)して使用する「豊盃米」を、敢えて精米歩合81(豊盃の「はい」と81の「はい」を掛けている)に留めて、いわゆる「低精白」のお米を使って酒造りを行っているという点です。

 香りのトーンは中程度で、「バター飴」のような甘い乳製品の香りや、「マドレーヌ」を想わせる焼き菓子の香りがあり、「ほんのり甘く、穏やかで柔和な香り」が感じられます。
 口当りは柔らかで、自然で嫌味の無い甘味と輪郭のハッキリとした酸,そしてコクのある旨味がバランス良く口に広がります。
 後口にもしっかりとした酸が感じられ、余韻には舌にジワリと浸み込むような旨味が長く残ります。
 アルコールのボリューム感はそれ程強く感じられず、「程好く飲み応えのある飲み口で、甘味,酸,旨味の三味の調和の取れた、雑味の少ない旨口タイプのお酒」でした。

 蔵元のオススメ文によると、このお酒は「肉料理との相性も良い」というようなことが書かれていたのですが、さすがに「ビーフステーキ」や「フライドチキン」では、このお酒の個性に寄り添ってくれなさそうに思われたので、今回はこんな肉料理を試してみました。

和食の定番料理の一つ【合鴨ロース】です。
 これは合鴨の胸肉を、表面を焼いてから薄口醤油と酒とみりんを合わせた煮汁で蒸し、冷ましてから冷蔵庫で煮汁に一晩漬け込んだもので、皮の部分の脂が程好くあり、そして肉の部分はジューシーで、噛みしめていると口の中に鴨肉独特の旨味がジワジワと出てきます。
 そのタイミングですかさず「豊81」を合わせてみると、このお酒の旨味と鴨肉の旨味の2つの異なるタイプの旨味が不思議な感覚で寄り添ってゆきます。
 微かに余韻に苦味が残りますが、気になるレベルのものでは無く、相性としては○と言って良いでしょう。
 日本酒に肉料理を合わせたい時は、案外この「合鴨ロース」がオールマイティな役割を果たしてくれるかも知れません。
 
 
続いて試してみたのは【ボーフォール・アルパージュ】です。
 「ボーフォール」は、フランス東部の山岳地帯にあるサヴォア地方の「山のチーズ」なのですが、その中でも夏の間だけ、標高1500m以上のアルプスの山々で放牧される牛のミルクを原料として、山小屋で造られるものに限り、「アルパージュ」という名前を付けることが許されています。
 白味噌を想わせるような甘い香りがあり、ややネットリとした食感で、凝縮感のあるミルクの甘味と旨味が、程好い塩味と共に口の中いっぱいに広がります。
 おもむろに合わせてみると、「ボーフォール」の濃厚な旨味がお酒に対してやや上手になり、「豊81」の個性であるコクのある旨味が消えそうになってしまいます。
 相性としては決して悪くは無いのですが、やや「ボーフォール・アルパージュ」の方が格上だな,と感じさせられてしまうような組合せでした。

 ちなみに、この画像ではチョット判りづらいかもしれませんが、このお酒のラベルを良~く見てみると、「弘前城」「りんご」「津軽塗り」「じゃっぱ汁」「ブナコ」「ねぷた祭り」etc.の津軽の名所,名物,郷土料理,お祭りのなど文字が、ラベルの青い部分に模様の様にぎっしりと書き込まれています。
 蔵元の地元に対する強い愛着が感じられて、このラベルしみじみと眺めながら呑んでいると、「豊81」がより一層美味しく感じられてくるから不思議ですね…。夜の街

■【ちょい熟感の旨酒】と秋の味覚!
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ お酒このお酒のデータは…

蔵元 金光酒造(広島県・東広島市・黒瀬町)

特定名称ほか 特別純米酒 生詰 ひやおろし
麹米 雄町(精米歩合50%)掛米 八反錦(精米歩合60%)

酸度 1.4 アミノ酸度 ? 酵母 ?

日本酒度 +4 アルコール度 16

酒造年度 H24BY

 9月も中旬を過ぎて、朝晩はだいぶ涼しさを感じるようになってきました。
 秋の訪れと共に、本格的な日本酒シーズンの到来となりますが、そんな季節にふさわしい一本として選んだのが、
 
【賀茂金秀特別純米酒 秋の便り】です。
 これは広島の金光酒造が、毎年この時期限定で出荷している特別純米酒の「ひやおろし」なのですが、春先に一度火入れして瓶詰めした後の夏場の熟成期間において、敢えて冷蔵庫での冷蔵熟成と土蔵での常温熟成とを組み合わせて、程よい熟成感が出るように調整された「こだわりのひやおろし」です。

 香りのトーンは中程度で、「マロン菓子」のような甘い穀物類の香りや、「黄色りんご」を想わせる果実の香りがあり、「ほのかに甘くて、丸く穏やかな香り」が感じられます。
 口当りは柔らかく、まずは心地良い甘味としっかりとした酸,そして豊かな旨味が口に広がります。
 味の余韻は比較的長く、後口にも程よい甘味と旨味,そしてキレのある酸が感じられます。
 ひと夏の熟成によって甘味,旨味,酸の調和が取れていて、コクやボリューム感も十分にあります。
 「程よい熟成感のある柔らかな飲み口で、三味のバランスの良さを感じさせる味わい」の旨酒でした。

 このお酒は「ちょい熟感のある旨酒」で、料理との相性の幅はかなり広いと思われたので、今回はあまり深く考えずに秋の味覚2品を用意してみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まず1品目は
【銀杏の塩煎り】です。
 近所の食品スーパーで「殻付きの銀杏」が売っていたので、自宅にある「銀杏割りハサミ」で鬼殻を割り、フライパンで根気よく転がしながら乾煎りし、さらに薄皮を剥くという手間はかかりましたが、かすかな苦味と共に何とも言えないコクと滋養の感じられる味わいが愉しめます。
 「賀茂金秀」と合わせてみると、銀杏の持つ独特の味の個性が、お酒の旨味を引き出しながらしっかりと口の中で持続してゆきます。

 お酒がやや下手になりながら、銀杏の美味しさをよりいっそう引き立ててゆくようなイメージで、なかなか面白い組み合わせでした。

 2品目は
【戻りガツオのお造り】です。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  ご存じのように、日本の太平洋岸に生息するカツオは、春に黒潮に乗って北上して秋になると南下してきますが、この時期の「戻りガツオ」は非常に脂が乗っていて旨味もしっかりとあり、まるで「マグロのトロ」のように口の中でとろけてゆきます。
 合わせてみると、「賀茂金秀」が「カツオ」の脂をうまく流しながら、お酒と料理が互いに自然に寄り添って融合してゆきます。
 思わず「う~ん」と唸ってしまう程の相性の良さで、「ちょい熟感のあるひやおろし」「戻りガツオ」は、秋の定番の組み合わせの一つと言って良いでしょう。

 ちなみにこの「賀茂金秀 秋の便り」を、「冷や」だけではなく「燗酒」にしても呑んでみましたが、40℃位の「ぬる燗」にすると酸が際立つと共に旨味の膨らみが増し、それでいて全体のまとまりの良さは保たれて、「冷や」で呑んだ時とはまた一味違った美味しさを愉しむことができました。
 こうして色々な「秋の味覚」「ぬる燗のひやおろし」をじっくりと味わっていると、 「日本に生まれて良かった」としみじみと感じてしまいますね…。夜の街

■【今時?!のひやおろし】を愉しむ…

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…お酒

蔵元 三浦酒造(青森県・弘前市・大字石渡)

特定名称ほか 特別純米酒 生詰 秋上がり

原料米 豊盃米(地元農家契約栽培 精米歩合 60%)

酸度 1.7 アミノ酸度 1.2 酵母 協会901号酵母

日本酒度 +3 アルコール度 17

酒造年度 H24BY

 
9月に入って、WEBサイト上のSAKE SHOPから今年の「ひやおろし」が出荷情報のメールが次々と届いていて、どの蔵元のお酒から呑むか目移りしてしまいますが、今シーズン1本目の「ひやおろし」として選んだのがコレ、

【豊盃 特別純米酒 あきあがり】です。

 
これは青森の三浦酒造が、地元農家と契約栽培している「豊盃米」を磨き上げ、厳冬の時期に仕込んだ「特別純米酒」を一度火入れし、その後ひと夏の間タンクで熟成させてから二度目の火入れをせずに出荷したもので、「あきあがり」とは、夏場の熟成期間を経て「秋になってぐっとお酒の味が上がってくる」という意味の言葉です。

 
上立ち香はやや華やかで、「ラ・フランス」を想わせる熟した果実の香りや、「バニラアイス」のような甘い乳製品の香りがあり、「ほんのりフルーティーで穏やかな吟醸香」といった印象です。
 
口当りはソフトで、優しい甘味と輪郭のハッキリとした酸,そして芳醇な旨味が口に広がり、後半には僅かに苦味も感じられます。

全体としては、ややフルーティーなニュアンスが前に出てきているような感もありますが、キレのある酸と膨らみのある旨味とのバランスは取れていて、コクやボリューム感もしっかりとあります。

「程よく飲み応えのある飲み口で、やや甘い色気?を感じさせるフルーティーな味わい」のお酒で、「豊盃」ならではの「ひやおろし」という印象を受けました。

 
今シーズン1本目の「ひやおろし」ということで、今回は秋の味覚の代表格である「秋刀魚」を使った料理を2品選んでみました。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ まずは【新秋刀魚のお造り】です。
 
この時期に出回る「新秋刀魚」北海道産で、まだそれほど丸々と太って脂がタップリと乗っている状態ではないので、個人的には塩焼きにするよりも刺身で食べる方が好みです。

生姜醤油に付けて食べてみると、程よく脂が乗っていて旨味も充分にあり、生姜の風味と共に口の中でとろけてゆきます。

合わせてみると、お酒が秋刀魚の脂を上手く流してくれて、その一方では秋刀魚の旨味が「豊盃」の甘味を優しく包み込んでゆきます。

お酒と料理の両者が自然と寄り添ってゆくような印象の、とても心地よい組み合わせでした。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては【秋刀魚の柔らか煮】です。
 
これは筒切りにした秋刀魚を、醤油,酒,砂糖を使って骨ごと食べられるくらいに柔らかく煮た惣菜で、コッテリとした甘辛の味わいがお酒を誘います。

 合わせてみましたが、この料理の濃い甘辛の味わいによって、「豊盃」の個性であるフルーティーな香味がやや消されてしまう感があり、相性が悪いという程ではないのですが、残念ながら今一つの組み合わせでした。

 この甘辛コッテリ味の料理には、もっとしっかりとした酸のある「山廃純米タイプのひやおろし」を合わせた方がベターなのかもしれません。

 
さて、今回呑んだ「豊盃 あきあがり」はいわゆる「昔ながらの熟成感のあるひやおろし」ではなく、吟醸香の漂うフルーティーな味わいが特徴なのですが、この「熟成感の無いタイプのひやおろし」は年々増えてきています。

少し専門的な話になりますが、春先に搾ったお酒を65のお湯に通して一度火入れしする際に、昔はそのまま数日かけて常温まで冷やし(この間に熟成が進む!)、その後ひと夏の間寝かせていたのですが、平成に入ってから「パストクーラー」という設備を導入する蔵元が増え、火入れ後に急速に冷却することが可能になり、さらには夏の間も冷蔵庫で熟成するようになったことが、その理由であると思われます。

お酒は嗜好品なので、新旧どちらのタイプの「ひやおろし」が好きかは意見の分かれる所だとは思いますが、とりあえずこの「豊盃 あきあがり」については、「今時?!のひやおろし」として素直に愉しめばいいんじゃないでしょうかね…。夜の街

夜の街■ワイン酵母のお酒=【ライスワイン】
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  
お酒このお酒のデータは…

蔵元 せんきん(栃木県・さくら市・馬場)

特定名称ほか 純米大吟醸酒 無濾過生酒

原料米 非公開(栃木県産酒造米 精米歩合 50%)

酸度 5.0 アミノ酸度?酵母 ボルドー産ワイン酵母

日本酒度 20 アルコール度 13

酒造年度 H24BY

 
日本時間の98日の早朝に、2020年夏のオリンピックの東京開催が決定し、それ以降世の中はその話題で持ち切りとなっていますが、そんな日の夜に「祝杯用の一本」として、こんなお酒を選んでみました,その名も、
【仙禽ドルチェ・アロマ 無濾過生】です。

これは栃木の「仙禽」の蔵元が、新たな試みとして通常の「日本酒用酵母」■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ はなく、フランス,ボルドー地方の「ワイン用酵母」を使って醸した純米大吟醸酒で、 綺麗な草花のデザインのラベルが貼られたボルドー型のワインボトルに詰められていて、「およそ日本酒らしからぬ外観」となっています。

 香りのトーンは中位で、「青りんご」のような甘酸っぱい果実の香りや、「ドリンクヨーグルト」を想わせる乳酸菌飲料の香りがあり、「爽やかさを伴った甘酸っぱい香り」が感じられます。
 
口に含むと、まずは上品な甘味,そしてその後から口をすぼめてしまう程の強さの「爽やかな酸」が一気に口の中に広がります。
 
余韻はやや短めで後口にもシャープで強めの酸がしっかりと感じられ、フィニッシュはそのままキレイにスーッと切れてゆきます。
 
「キラキラとした明快な酸」がかなり力強く主張していますが、それを優しい甘味がフォローすることによって「酸っぱ過ぎる」という印象にならないように、味わい全体のバランスがうまく保たれていて、「爽やかかつジューシーな飲み口で、独特の甘酸っぱさが何とも言えず心地良い味わい」の、限りなく白ワインに近いテイスト?の日本酒でした。

 
もはや日本酒と言うよりも「フルーティータイプの白ワイン」に近いお酒なので、料理についても「白ワイン」に合わせることをイメージして選んでみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■   まずは
【ブリア・サヴァラン・フレ】です。
 
これはフランスのノルマンディー地方で造られる「フレッシュタイプ」のチーズで、まるで「チーズケーキ」のように柔らかく滑らかで口どけが良く、程好い塩気と共に「爽やかな酸味」が感じられるのが特徴です。
 
さっそく合わせてみると、「仙禽」と「ブリア・サヴァラン」の両方がそれぞれ持っている「個性的な酸味」が見事に融合し、口の中で心地良い「酸味のハーモニー」を奏でてくれます。
 
実はこのチーズ,ソムリエの世界では「シャンパーニュ」と合わせるのが定番となっているのですが、個人的にはこの「仙禽ドルチェ・アロマ」との相性の方が上に思える程の、期待していた以上の素敵なマリアージュでした。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては【真アジのマリネ】です。

 こちらは長崎県の「五島列島産の真アジ」を、香味野菜と一緒に「白ワインビネガー」入りのマリナードに漬け込んだものですが、ワインビネガーの酸味がそれ程強くはなく、比較的マイルドな味わいのマリネに仕上がっています。

 「仙禽」と合わせてみると、お酒と料理の双方の味わいの個性がどちらも消されてしまうことなく、口の中で付かず離れず持続してゆきます。

 また彩りとして散らしてある「プチトマト」の酸味が、仙禽の酸と思いがけずうまく同調し、なかなか相性の良い組み合わせでした。

 
さて、この「仙禽 ドルチェ・アロマ」というお酒,確かにカテゴリーとしては「日本酒」に含まれることは間違いないのですが、「お米(=ライス)」「ワイン用の酵母」を使って造られていることを考えると、ある意味では「ライスワイン」と呼ぶことも出来るのではないかと思います。
 
少し気の早い話かもしれませんが、来る2020年の「東京オリンピック」開催の際に、日本にやって来る大勢の外国からのお客様に、是非ともこの仙禽の「ライスワイン」を飲んでもらって、日本酒をよりいっそう世界に広げるきっかけにしたいものだ,と思ってしまうのは私だけでしょうかね…。夜の街

■プロトタイプ日本酒【赤のZAKU

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■お酒 このお酒のデータは…

蔵元 清水清三郎商店(三重県,鈴鹿市,若松東)

特定名称ほか 純米酒 無濾過直汲み 瓶火入れ

原料米 三重県産「みえのゆめ」(精米歩合 60%)

酸度 非公開 アミノ酸度 非公開 酵母 ?

日本酒度 非公開 アルコール度 16

酒造年度 H24BY

 8月最終日の土曜,東京では日中の最高気温が35℃を超える「猛暑日」となり、 南風が吹いた影響もあってとても蒸し暑い一日となりました。

さて今週帰宅後に、WEBサイト上のSAKE SHOPをチェックしていて、チョット興味を惹かれて取り寄せたお酒がコレ、

ZAKU プロトタイプ-M 純米原酒】です。


 これはF-1グランプリ鈴鹿サーキットで知られる、三重県鈴鹿市にある蔵元の清水清三郎商店が、全国向けのブランドとして展開している「作(ザク)」シリーズプロトタイプ(試作品)のお酒で、明らかに「機動戦士ガンダム」を意識したネーミングとラベルデザインになっています。(NETで調べてみると、「プロトタイプ ザク」というのは敵方のジオン公国軍の「試作型モビルスーツ」のことで、「赤のザク」は主人公のアムロの敵役の「シャア大佐」の専用機ということです。)

 香りのトーンはやや強く、「ライチ」を想わせる甘い果実の香りや、「ラベンダー」のような花の香りがあり、「華やかで甘く、フルーティーかつフローラルな香り」という印象で、純米酒でありながら「穀物類」「木質」の香りはほとんど感じられません。

 口当たりは滑らかで、まずは濃密な甘味に圧倒されますが、続いて程好い酸と旨味が口に広がり、余韻には僅かな苦みと共に微発泡によるピリピリ感が舌の上に残ります。

 全体的には艶やかな甘味のバランスがかなり強く、余韻の苦味と微発泡感が辛うじてそこにドライ感を付け加えているといった印象で、「しっかりと飲み応えのある飲み口で、ボリューム感のある濃密な甘味が特徴」のお酒でした。


 実は初日に「ZAKU」を呑んだ時、合わせた料理がどれもこのお酒の甘味に圧倒されてしまい、料理と合わせるのは難しいかなと思ってしまったのですが、そこで投げ出してしまっては利き酒師としては「負け」なので、「強い塩味」をイメージして翌日以降料理を探して再チャレンジしてみました。
 ■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ まず選んだのは
【時鮭の焼きほぐし】です。

 「時鮭」は夏に北海道沖で獲れる脂の乗った「シロサケ」で、本来の旬の時期である秋以外の時期に獲れる鮭という意味から「時知らず鮭」(=時鮭)と呼ばれていますが、今回は酒の肴として食べやすいように、「塩漬けの切り身」ではなく、焼き上げてから身をほぐして骨を除いた「焼きほぐし」を買ってきました。

大きめのスプーンですくって口の中に入れてみると、かなり強めの塩味が舌の上に広がって、それがお酒を誘います。

すかさず「ZAKU」を流し込んでみると、このお酒のボリューム感のある甘味と「焼きほぐし」のしょっぱさが、お互いに相手を消し去って、後口にはこのお酒の持つ「余韻の僅かな苦味」だけが残ります。

お酒と料理の両方の味わいの個性が消えてしまうという点からすると、相性が良いと言えるかどうかはかなり微妙な気もしますが、このお酒の持つ「料理との相性の難しさ」というマイナス面を解消するという観点から考えると、一応はと言って良い組み合わせでしょう。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては
【ロックフォール】です。

 新宿のデパ地下のチーズ売り場に出向いて、スタッフに「一番塩気の強いチーズはどれ?」という質問をした際に、返ってきた答えが予想通り「ロックフォール」でした。

できれば別のブルーチーズを合わせてみたかったのですが、今回はこのお酒の濃密な甘味に対抗できる料理を探すのが目的だったので、スタッフのアドバイスに従ってこれを購入してきました。

合わせてみると、「ロックフォール」の特徴である青カビのピリピリ感と強い塩味,そして独特の濃厚な旨味という個性が、「ZAKU」の甘味をがっしりと受け止め、そして口の中では「ロックフォール」の旨味と、「ZAKU」の余韻の苦味とが持続してゆきます。

ZAKU」がこのブルーチーズの貫録にやや負けてしまっている感もありますが、こちらも組み合わせとしては悪く無いと言って良いでしょう。

 
ちなみにこのZAKUプロトタイプMについては、個人的見解としては「アペリティフ」として最初の1杯で飲むのがベターなお酒で、2杯目以降は「甘味」が口の中でダレてやや辛くなってきてしまうように感じられたのですが、ちょっとした思い付きでグラスの中に氷を入れて「オンザロック」スタイルで飲んでみると、甘味がぐっと抑えられてドライ感が増し、2杯目以降も美味しく飲み続けることが出来ました。

日本酒には、「キンキンに冷やすと甘味が感じにくくなって苦味やドライ感が引き出される」という特徴があるので、皆さんも様々なお酒を飲んでみて、「これは自分には甘過ぎるな」と感じた場合は、氷を入れて「オンザロック」にして飲んでみることを是非オススメします。夜の街

■ブログ再開は【復活の仕込み5号】で!
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ お酒このお酒のデータは…

蔵元 新潟第一酒造(新潟県,上越市,浦川原区横川)

特定名称ほか 純米吟醸 無濾過生原酒 中取り

原料米 新潟県産「五百万石」(精米歩合 60%?)

酸度 非公開 アミノ酸度 非公開 酵母 ?

日本酒度 非公開 アルコール度 16

酒造年度 H24BY

 いろいろな事情が重なって、昨年の4月末以降このブログを休止していましたが、この度チョットしたきっかけがあって約14ヶ月ぶりに再開することとしました。(私事となりますが、その間に仕事先も赤坂「北蔵」→池袋「入母屋」へと変わりました。)

 そんな「復活のブログ第一弾」に選んだのがこのお酒、

【山間(やんま) 仕込み5号 無濾過生原酒】です。

 これは新潟第一酒造武田杜氏が、今年の1月に醸した「仕込み5号」を搾ってすぐに無濾過のまま瓶詰めし、その後約半年間蔵の冷蔵庫でゆっくりと貯蔵熟成させてから、6月になってようやく出荷したもので、それをさらに我が家の日本酒保管庫(大型冷蔵庫の野菜室ですが…)で約2ヶ月間熟成させたものを、今回の「ブログ再開」のタイミングに合わせて呑んでみることとしました。

 香りのトーンはやや強く、「巨峰」のような果実の甘い香りや、「マドレーヌ」のような甘い焼き菓子の香り,さらには「砂糖入りのデミタスコーヒー」を想わせる香ばしい香りが加わって、「甘くフルーティーなフレーバーと香ばしさが組み合わさった、複雑かつ個性的な香り」が感じられます。


 口当たりはインパクトがあり、艶のある甘味が押し寄せた後で明快な酸が感じられ、続いて舌にジワリと浸み込むような旨味,さらには心地良い苦味や渋味が次々と口の中で展開してゆきます。

 含み香は中程度で味の余韻は長く、後口には独特の甘苦味とコクのある渋みが続き、搾ってから8ヶ月以上経っているにもかかわらず、未だに「微発泡感」も感じられます。

 約半年間の冷蔵熟成によって「無濾過生原酒」の持つ荒々しさの角が程よく取れ、それでいて「山間」ならではの「甘・苦・旨・渋」味の魅惑的なバランスは健在,といった印象で、「コクのある複雑な飲み口で、甘味と苦味,そして旨味と渋味が絶妙に調和した、不思議に後を引く味わい」のお酒でした。

 これまでの経験から、「山間シリーズ」 のお酒に食べ物を合わせる場合は、「凝縮した旨味」ということがキーワードとなるということが判っていたので、
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まずは
【ミモレット18ヶ月熟成】です。

 「ミモレット」はフランス北部産のセミハードタイプのチーズで、熟成期間が12ヶ月→18ヶ月→24ヶ月と長くなるにつれて、旨味がどんどん凝縮してコクが増し、チーズ自体も硬くなってゆきます。

 今回選んだのは18ヶ月熟成のもので、外側部分は既にかなりカチコチの状態になっていましたが中身はまだねっとりとした食感で、薄めにスライスして口に入れてみると、まさに「旨味の固まり」といった感の濃厚な旨味と共に、やや強めの塩味も感じられます。


早速「山間」と合わせてみると、このお酒のコクのある旨味と艶のある甘味,そして「ミモレット」の凝縮された旨味と塩味とが、互いに一度がっぷり四つに組み合った後で、口の中で見事に調和して一体となってゆきます。

お酒とチーズとがお互いの良さをよりいっそう引き出し合うような、とても素敵なマリアージュでした。


■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ 続いては
【数の子入り松前漬け】です。

 「松前漬け」北海道の郷土料理の一つで、通常は細切りにしたスルメ,昆布,人参etc.を醤油を主体とした漬け汁に漬け込んで造りますが、今回は「数の子」が加わったバージョンのものを選んでみました。


 食べてみると、昆布のぬめりとスルメの歯応え,そして数の子のプチプチ感の組み合わせが、口の中で心地良い食感を織りなし、そして昆布の旨味と共に強めの「甘じょっぱい」味わいが口に広がって、思わず「炊き立ての白いご飯」が欲しくなってしまいます。

 そのタイミングですかさず「ご飯」の代わりに「山間」を流し込んでみると、このお酒のボリューム感のある甘味が「松前漬け」の「甘じょっぱさ」をスッポリと包み込んで瞬時に消し去り、そして余韻には「山間」の心地よい苦味や渋味と、昆布の旨味とが持続してゆきます。

 「松前漬け」の持つ個性が、お酒にマスキングされてやや負けてしまっている感もありますが、相性としては◎と言って良い組み合わせでしょう。

 話は全く変わりますが、実はこの「山間シリーズ」のお酒は、酒造りの工程で使用した機材のゴムパッキンの「ゴム臭」が、お酒に移ってしまったことが判明した為に、昨年の「山間仕込み5号」を最後に蔵元から出荷を中止する旨の発表があり、それ以降は今年の新たな造りが始まるまで呑むことができない「幻のお酒」となってしまっていました。


 その後、「山間ブランド」の復活を個人的に1年間待ち続けていたのですが、年初は仕事が忙しかったこともあって、WEBサイト上のSAKE SHOPのチェックをついつい怠ってしまい、今年の最初の造りの「山間シリーズ」のお酒を買い逃してしまってくやしい思いをしていました。

 たまたま今年の6月になって、この「仕込み5号」がリリースされたことで、今回ようやく約14ヶ月ぶりに「復活した山間」を呑むことができたのですが、それに合わせてこのブログも復活させることとしました。

今後は、マイペースでボチボチと更新してゆきたいと思っております。夜の街

【山吹極 生もと純米 無濾過原酒】  

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ このお酒のデータは…
蔵元 朝日川酒造(山形県,西村山郡,河北町)
特定名称ほか 生もと純米 無濾過原酒
原料米 山形県産「山形4号」(精米歩合 58%)
酸度 1.75 アミノ酸度 1.85 酵母 ?
日本酒度 +9 アルコール度 18.0
酒造年度 H19BY
山吹色の【上級者向け?】のお酒 
 ゴールデンウィーク初日となった4月の最終土曜日,日本列島は全国的に晴天に恵まれて気温が上昇し、東京でも汗ばむ陽気となりましたが、その一方で沖縄地方では早くも今年の「梅雨入り」が発表されました。
 そんな大型連休初日の夜に選んだ一本は、
 
【山吹極(やまぶき) 生もと純米 無濾過原酒】です。
 これは、山形県河北町にある朝日川酒造が、地元で栽培された酒造好適米「山形4号」を使って醸した「生もと純米」の無濾過の原酒を、常温タンクで数年間じっくりと熟成させてから出荷したお酒で、ラベルには「上級者向食中酒」というかなり挑戦的なサブタイトルが付けられています。

 色調はこのお酒の名前通りの「濃い山吹色」で香りのトーンは強く、「カラメル」を想わせる常温熟成に由来する香りや、「出し昆布」のような干した食材の香りがあり、「ふくよかで厚みがあり、熟成を想わせる複雑かつ個性的な香り」が感じられます。
 口に含むと、厚みのある太い酸が強く主張しますが、それを程よく練れた甘みと深みのある旨味,さらには僅かな苦味がフォローすることによって、全体としてやや複雑な味わいの世界を造り上げています。
 後口はしっかりとしていて余韻も長く、舌の上に酸の印象が明快に残ります。
 コクやボリューム感も程よくあり、「深みのあるふくよかな飲み口で、酸がハッキリと主張する骨太で個性的な味わい」のお酒でした。

 今回は、このお酒の「太い酸」に負けずに対抗できるような、「濃厚な旨味」ということを意識してこんな2品を選んでみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まずは
【エゴねり(おきゅうと)】です。
 これは、「エゴ草」という海草を一度煮溶かしてから「裏ごし」して再び固めたもので、東北地方では「えご」又は「いご」という名前で呼ばれて、朝食のおかずとして良く食べられていますが、九州地方では「おきゅうと」という全く別の名前で呼ばれています。
 冷蔵庫でよく冷やしてから「お浸し」風に醤油をたらして食べてみると、「寒天」をもろくしたような食感があり、磯の香りと共に海草独特の旨味が舌の上に残ります。
 そのタイミングで「山吹極」を合わせてみると、このお酒の厚みのある明快な酸が、「エゴねり」の旨味によってうまくマスキングされて程よい酸へと変化してゆきます。
 合わせてみるまではあまり期待してはいなかったのですが、事前に思っていた以上に相性の良い、なかなか面白い印象の組み合わせでした。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては
【ソブラーノ】です。
 これは、「水牛乳」と「牛乳」の両方を混ぜて原料にして造られたイタリア産のハードタイプチーズで、日本ではあまり見かけることのない珍しい種類のチーズです。
 同じイタリア産のハードタイプチーズの「パルミジャーノ・レッジャーノ」に比べると、「ソブラーノ」の方が塩味はやや抑えめですが、旨味に関しては「パルミジャーノ」に負けない位に濃厚で、アミノ酸の結晶によるザリザリとした舌触りがあり、そして「水牛乳」ならではのコクとほのかな甘味も感じられます。
 合わせてみると、「ソブラーノ」の凝縮した旨味と「山吹極」の骨太な酸が丁度良い強さで釣り合い、またこのチーズの持つ程好い塩味とこのお酒の持つ練れた甘味もバランス良く調和してゆきます。
 個性派同士のお酒とチーズとが出会うことによって、お互いの味の長所を引出し合っているような印象で、とても興味深い「マリアージュ」でした。

 さて冒頭でも述べたように、このお酒には「上級者向食中酒」というチョット挑戦的なサブタイトルが付けられています。
 確かに香りについては常温熟成に由来する古酒に似た独特の香りがあるので、初心者には難しいかもしれないという印象はあるのですが、その一方で味わいについては、個性的な香りのイメージから予想していたほどにはクセが強く無く、割りと普通に飲めるなという印象を受けました。
 もしかしたら「上級者向」というサブタイトル付けた本当の理由は、このお酒を飲んだ人に「この位の味の個性なら俺でも大丈夫,俺も意外に日本酒の上級者なのかな」と思わせ、呑み手の自尊心をくすぐる為の蔵元の作戦?!なのかもしれませんね。