個人消費の大幅な落ち込みにより四~六月期の国内総生産(GDP)がマイナスに転落したことは、景気の先行きが予断ならないことを意味する。行き詰まりを見せるアベノミクスを修正すべきだ。

 何より消費の低迷である。根本にあるのは、生活必需品の値上げなど家計の逼迫(ひっぱく)や雇用劣化、格差拡大などアベノミクスの弊害であることは明らかだ。実体経済の改善よりも、まず物価を上げようとするアベノミクスの「実験的政策」は間違いで、ただちに軌道修正してほしい。


 四~六月期のGDP速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0・4%減、三・四半期ぶりのマイナスである。GDPの約六割を占める個人消費が大きく落ち込み、米国や中国の景気減速で輸出も低迷した。設備投資もマイナスに転じ、日本経済は正念場だ。


 なぜ消費が低迷し続けているのか。政府は天候不順など一時的要因と説明するが、そうではないだろう。アベノミクスは人為的に物価を上昇させ、デフレ脱却を目指す。しかし、物価が先行して上がり、賃金の上昇が追いつかないのだから消費が減るのは当然だ。


 政府は二年連続で春闘に介入し、官製ベアで大幅な賃上げを実現したと言うが、これも欺瞞(ぎまん)だ。企業は総額人件費を増やさないために、正社員で賃上げを実施すれば、非正規を増やしたり非正規の待遇引き下げ、再雇用者の賃金抑制など、どこかへしわ寄せがいくことになる。


 厚生労働省の「毎月勤労統計調査」で現金給与総額はリーマン・ショック前より一段と低迷し、実質賃金も横ばいの五月を除き前年割れが続くのは、その証左だ。年金生活者らは働く人以上に物価上昇にあえぎ、生活防衛から消費を手控えるのは言うまでもない。


 アベノミクスは株価を上げ、資産効果から消費が伸びるとも政府は主張した。金融資産に占める株保有率が35%近くある米国と違い、日本は10%強だ。一部の富裕層優遇で消費は伸びないのである。富める者はますます富み、そうでない人は切り捨てられるようなアベノミクスは限界である。マイナス成長が二・四半期続けば、景気後退と認定される可能性がある。


 消費が伸びないかぎり経済の好循環は生まれない。消費を持続的に回復させるには雇用や所得環境を改善して格差を縮小し、安定した中間層を復活させることだ。アベノミクスと真逆の政策である。


http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015081802000132.html  


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 なお実質賃金、現在は政府のかなり眉唾物の統計(毎月勤労統計)でも2.4%のマイナス、実質の購買力低下(賃金上昇-物価上昇)はマイナス10%超である。


 これが2%の消費減少で済んでいるというのは家計がかなり無理をしていて


 雇用の安定と賃金の原則平準化はベースロード所得として重要なのはもちろんだが、それだけでは急騰する物価に到底追いつかない。


 狂乱物価に匹敵するくらい賃上げするとなると、現状のままではコストプッシュで破綻する企業が続出するだろう。


 根本的に解決するには、自営業者ではあたりまえである社会保険料全額本人負担を厚生年金被適用者にも広げ、なおかつ妻の分をただどりしている三号被保険者制度を廃止して事業主負担を軽減することで総労務コストを下げることによって賃上げの障害を取り除くことが必要不可欠である。


 こちらについては今後社会人となる若い世代において完全実施となる前提で長い期間をかけて徐々に企業負担分を提言していくよう今から始めるべき長期課題だ。


 もっともその頃には膨大な赤字がつみあがる厚生年金のほうはもうなくなり、健康保険のほうは高額所得者優遇見直しのために、現在121万円である標準報酬月額を実際の給与支給額(たとえば月給1000万円なら標・報1000万円)にまで引き上げ、対応する保険料額も現在の12万何がしから100万円にまで引き上げられているいるだろうが。


https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/h27/h270901/13tokyo-h2709-2.pdf  


 また、根本の原因は「経済財政白書」に示す消費増税と、さらにその根本にある円安為替誘導による輸入物価、エネルギー価格の高騰である。


 現状では近年最低レベルの原油価格も今後地政学的要因・資源枯渇等物理的要因によって大幅に上昇する兆しが見えているだけに、それが顕在化して円安・原油高・消費税高というトリプルデメリットによる破滅が生じる前に、もはや不安定な外的要因に左右され必ずしも輸入やインバウンド消費に寄与するものはないとわかった円安誘導を根本的に改め、むしろ切り上げにも近い円高誘導によって円の貨幣価値を防衛する政策に転じることが求められる。


 これは円の価値を低めようという列強諸国の企てに乗ったに過ぎない円安誘導とは違って効果が出るまでにかなりの時間を要するものであり、それまで持ちこたえられないで破綻する世帯数を抑制するためのつなぎとして所得制限をかけた「定額給付金」において、消費性向が高いが金がないため殆どのものを買わずにあきらめざるを得ない低所得者ほど高額を支給し、所得に応じて額を低減してたとえば年収800万円程度でゼロになるよう設定することによって消費に回る金を増加させることが大切だ。


 自民も民主も、愚策である「プレミアム商品券」について、「その無駄な間接経費」や「生鮮食品などを全てのスーパー等で買えない」「釣りが出ず毎日の小分け消費に対応できない」など根本的実用性の問題をないがしろにして、「日常品に使われる」だの「非日常消費」だのという机上の空論で評価する動きがあるが国民の生活実態をわきまえないナンセンスそのものである。


 そもそも大多数の労働者・自営業者世帯にとって「日常品」「非日常消費」なる区別は存在しえないし、そればかりか「猛暑なのにクーラーも買えない」「一日一人300円しか食費を出せない」世帯数が1000万を超えるという現状をまったく知らないという連中が政策を立案すること自体が間違っている。


 不正の温床でもある商品券など今すぐやめて、その金を今すぐ定額給付金に切り替えるべきだ。


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