一九四二年高松市に生まれ、七〇年に判事補となり刑事、民事、少年事件など幅広く担当。中国に修学旅行中の高校生、教諭の二十八人が死亡した上海列車事故(八八年)の民事訴訟も指揮した。
二〇〇七年に退官し弁護士に。リタイア後、特定秘密保護法の国会審議に怒りがこみ上げた。「基本的人権への配慮がない。こんな曖昧な要件の法律を強引に成立させるのはおかしい」。秘密保護法に反対する市民団体に連絡を取ると、講演を依頼されるようになった。
一三年十二月に特定秘密保護法を成立させた安倍晋三首相は、歴代政権が踏襲してきた憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使容認に踏み切った。
「対案を出せばいいというものではない。そもそも違憲であることを訴えなければいけない。国民が権力の無責任を許し過ぎた」と語る溝淵さん。安全保障環境の変化を理由に挙げ、安保法案の必要性を訴える首相に「集団的自衛権がなぜ必要かを十分に立証し、国民の合意を得なければならない」と強調した。
高知県内の学者や弁護士らとともに五月、安保法案に反対する団体「高知憲法アクション」の結成呼び掛け人になった。所長まで務めた元裁判官がなぜ、ここまで反対するのか-。溝淵さんはいう。「憲法がこんなにも軽く扱われ、許すことができないんです」
十七日の勉強会では、安保法案について衆院憲法審査会で憲法学者が「違憲」と指摘したのを踏まえ、「ほとんどの憲法学者が違憲としているのを政権が合憲というのはナンセンス。退職した裁判官も憲法解釈の問題でもっとものを言った方がよい」と話した。
また、政府が合憲とする根拠に挙げた一九五九年の砂川事件最高裁判決を「あくまで個別的自衛権を認めたもの」と説明した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015081802000117.html
砂川判決(これ自体も正論である伊達判決を政治介入によって覆した眉唾物だが)に関する見解はわかりやすく妥当なものだが、報道機関が安倍自民のツールとなっているため裁判官らが意図しない集団的自衛権の根拠とされていることには当時の最高裁判事たちも存命なら怒り心頭に発するところだろう。
判事たちも「たとえ違憲であっても既定事実こそ優先すべし」という理屈にもならない理由付けから、米国にごり押しされた主権喪失の独立国としてありえない恥辱裁判といえるわけであって、とても自衛権の根拠として引用できる性質のものではない。
当時の駐日米国大使と日本の外相との密約(自民党のしわざ)によるできレースであったことは「米国公文書」により確認されている。
それでも根拠と言い張るなら日本が米国の属州であると安倍自民が認めたと言って過言ではない。
そういう判決である。