第378回「われはロボット」(SFミステリー) | 新稀少堂日記

第378回「われはロボット」(SFミステリー)

新稀少堂日記
 第378回は、「われはロボット」(SFミステリー)です。原作者は、アイザック・アシモフです。ほとんどの著作は、SFですが、多くの科学エッセイとわずかなミステリーを残しています。この作品は、タイトルのとおりSFですが、切り口はミステリーです。


 ロボットのイメージを、日本人は「鉄腕アトム」に求め、日本を除く世界の人々は、この作品に求めると思います。アシモフは、この作品を書くにあたり、「ロボット工学の三原則」を設定しました。アトム・タイプのロボットが、未来開発されましたら、必ず三原則は組み込まれると思います。


第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ばしてはならない。

第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。

第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

                            (ハヤカワ文庫 小尾芙佐訳)


 9編から構成された連作短篇です。ロボット開発の創成期から、円熟期までを描いています。各短篇は、ロボットが三原則に従わないことから始まります。なぜ、・・・・。探偵約は、心理学者スーザン・キャルヴィンと、工学者パウエルとドノバンの二人組みです。彼らの仕事の一部は、ロボットのバグ探しです。


 スーザンは、ミス・マープルの性格を悪くしたようなタイプです。パウエルとドノバンは、宇宙一不幸なコンビです。このシリーズには、実は欠陥があります。ロボットが人間の生命を無視したように思える事件(???)で、実は、ロボットが壊れていましたという内容が多いのです。三原則にこだわり続けてほしかったと思います。「三原則に反するロボットの行動には、論理的な矛盾はなかった。では、なぜ・・・・」


 ですが、ロボット工学三原則はよくできています。ミステリーとしての欠陥を凌ぐ、工学上のアイデアです。


(追記) 三原則のロボットと人間を、他の言葉に置き換えますと、なんにでも応用が可能です。例えば、「公務員天下りの三原則」。少し文章をいじれば、なぜ天下り・渡りがなくならないのか、よく分ります。