第131回「ブラウン神父の童心」(ミステリー) | 新稀少堂日記

第131回「ブラウン神父の童心」(ミステリー)



 第131回は、「ブラウン神父の童心」(ミステリー)です。トリックの面白さで3人の海外作家を選ぶとしましたら、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ・シリーズ、アガサ・クリスティの一連の作品群、そして、チェスタトンのブラウン神父シリーズを挙げたいと思います。


 シャーロック・ホームズは世界一有名な探偵ですし、風貌、語り口には凛々しさがあります。クリスティは、数々のトリックを創造しましたが、探偵役には極めて地味な(むしろ、ブサイクな)ポワロとか、ミス・マープルなど異色の人物を配置しました。


 ブラウン神父は、名前のとおり神父です。それも、極めて貧相な風貌です(写真を参照してください)。しかし、シャーロック・ホームズ・シリーズに通じる「意外な発端と、合理的な解決」です。このシリーズは全て短篇です。5冊刊行されました。ホームズと同じく、第一短編集がやはり傑作ぞろいとなっています。


 一種の密室ものである「見えない男」・・・・殺人のあった家をずっと見ていたが、誰もその家から出てきたものはいない ??? 比較的わかりやすい犯人像ですが。


 いかなる道具も使いようによっては破壊的な効果を持つという「神の鉄槌」・・・・被害者の頭を、まるでスイカのように割った犯人とは。現場にハンマーが残されていますが、そのような男は、村では大男の鍛冶屋しかいません。しかし、ブラウン神父は、ハンマーの使い方によっては非力な人間にも可能であることを証明します・・・・。


 死体を隠すには。ブラウン神父シリーズ中、最も有名な短篇「折れた剣」・・・・「木を隠すには森に、砂粒を隠すには砂浜に」 では、死体を隠すには ??? 死体の山を築けばいい。チャイニーズ・ゴードンがモデルだそうです(映画「カーツーム」の主人公です。太平天国の乱を平定したことにより、付けられた愛称です)。


 その他の作品も秀作ぞろいです。ホームズ・ファンなら必読の作品です。ですが、主人公に凛々しさはありません・・・・。ミステリーを普段読まない人にも楽しめる、逆説に満ちた作品群です。