「蛇の穴」の遺伝子たち | 那嵯涼介の“This is Catch-as-Catch-Can”

那嵯涼介の“This is Catch-as-Catch-Can”


東京・高円寺にある U.W.F.
スネークピット・ジャパンに通い始めて、もうすぐ6年になります。

「通う」と言っても、もちろんそこで練習するわけではなく、『スネークピット・キャラバン』、『スネークピット・サイエンス』の開催(これらについては回を改めて詳しく書こうと思います)や、取材を兼ねた練習見学等が主な目的です。


ご存知の方も多いと思いますが、 U.W.F. スネークピット・ジャパンというジムについて、簡単にご説明致します。

U.W.F.インターナショナル』(通称・Uインター)を自ら去り、一時期プロレス界から遠ざかっていた宮戸優光氏は、プロレスリング本来の姿である英国伝統のレスリング、『キャッチ・アズ・キャッチ・キャン 』の技術を後世に残すべく、最高顧問に“鉄人”ルー・テーズ氏、そしてヘッド・コーチに“キャッチ・アズ・キャッチ・キャン、最後の伝承者”と呼ぶべき存在である“人間風車”ビル・ロビンソン氏を迎え、かつて英国・ウィガンに存在した伝説のジム、『ビリー・ライレージム』の通称に倣って命名されたジムを、19994月、東京・高円寺に開設しました。

それが『U.W.F.スネークピット・ジャパン』です。


大江慎が指導するキックボクシング部門も併設されたこのジムは、今年で12年目を迎えます。

この間に師であるロビンソン氏から直接、レスリングの指導を受けた数多くの生徒の中から、選り抜きの精鋭3人が「プロレスラー」となりました。



那嵯涼介の“This is Catch-as-Catch-Can”


井上学 パンクラスの初代バンタム級キング・オブ・パンクラシスト です。

身長168cm 、体重62kg

愛知県出身である彼は、何ら格闘技経験を持たないまま、大学時代にスネークピットの門を叩きました。

当時を知る人たちはみな口を揃えて、やせぽっちの優等生タイプで、とても厳しい練習に耐えられるとは思えなかった、と言います。

そんな彼が現在、パンクラスの現役王者です。

ガッツとひたむきさは、スネークピット随一です。



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鈴木秀樹  “人間風車2世”、私は“主砲”と命名しました。

身長188cm 、体重108kg

アメリカにジョシュ・バーネットがいるなら、日本には鈴木秀樹が存在する――。

類まれなる体躯と素質に恵まれた彼は、ロビンソン師指導の元、真直ぐに成長しました。

まさにプロレスラーになるべく、生れてきたような男。

「キャッチ・アズ・キャッチ・キャンという“文化”を後世に残したい」という信念は、宮戸氏に負けず劣らず強いものがあり、そしてそれが実現できるか否かは、この男の双肩に掛かっている、と言っても過言ではありません。



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定アキラ 弱冠16歳、日本人初の「現役高校生プロレスラー」です。
身長176cm、体重90kg
他の2人よりかなり年下ですが、父親と共にスネークピットに通い出したのは幼稚園の時だといいますから、3人の中では一番「先輩」になります。

これを書くにあたって1年前の彼の写真を見ましたが、体が見違えるほど大きくなっており、すっかりプロレスラーの体になりました。

「本番での強さ」は宮戸氏も太鼓判を押すほどで、テレビ番組出演の際も、海千山千の芸能人を向こうに回して、強心臓ぶりを発揮しておりました。



スネークピットの練習は、基本的に無差別級。

体重差に関係なく、同じ練習メニューをこなし、スパーリングが行われます。

初めて上級選手の練習を見学した時、ヘビー級の鈴木選手とライト級以下の井上選手がギュッと握手を交わしたあと、当たり前のようにスパーリングを開始したのには、正直驚かされました。

ロビンソン師は、じっとスパーリングを見つめ、時には途中で止めて、的確なアドバイスを送ります。

スパーリング終了後は、車座になり師の話に全員が熱心に耳を傾けます。

この練習方式は、ロビンソン師がアメリカに一時帰国したあとも、現在まで同じスタイルで行われております。


この9月はスネークピットの3人が、活躍する月となります。


まずは井上選手。

去る5日、パンクラスのディファ有明大会での、『キング・オブ・パンクラシスト』として初防衛戦を行い、練習中の肋骨の剥離骨折というハンデをものともせず、2-0の判定で見事に防衛を果たしました。

10月に予定されているSRC(戦極)のバンタム級トーナメントにも、パンクラス代表としてシード枠での出場が予定されており、いっそうの活躍が期待されております。


続いてはアキラ選手。

来る25日のIGFイノキ・ゲノム・フェデレーション)の東京・JCBホール大会で、早くも4戦目を迎えます。

対戦相手はまだ発表になっておりませんが、今回もまた若武者らしい、ガムシャラで清々とした試合を我々に見せてくれることでしょう。


しんがりは鈴木選手。

IGF大会の翌26日、バトラーツの北千住大会で、久々にリングに姿を現します。

タッグマッチながら、同団体での初試合でいきなりのメインエヴェント。

「とにかく凄い試合をお目にかけます」

彼は、私にそう約束してくれました。

きっと期待を裏切らず、ゾクゾクするような試合をしてくれると願っております。


私にとっても、気持ちの上で充実した1ヶ月になると思います。


1975年に行われた、アントニオ猪木VSビル・ロビンソン戦を観て感動しプロレスの虜になって以来、今でも同じ気持ちと情熱を持ち続けている宮戸優光――。

彼の夢の実現は未だ遥か高き雲の彼方、その登頂はまだまだ続きます。

私も友人として、これからも彼の歩みを見守り続けます。


※一部写真を各団体HPや、宮戸優光氏のブログから拝借しました。問題がある場合は、お知らせ下さい。