キネマ★ジュンコ -2ページ目

ショック集団

こんなにも絶望的に落とされる作品を作る、サミュエル・フラー監督はある意味凄いと思う。

精神病院で起こった殺人事件の真犯人を見つける為に、患者を装って潜入した野心家の新聞記者。しかし精神病の患者達の中に居るうちに、彼自身も精神のバランスを崩していく……と言うストーリー。

「カッコーの巣の上で」は、犯罪者(ジャック・ニコルソン)が罪を逃れる為精神病院に入り、病院の体勢に背いてしまった為に、ロボトミーにされてしまう……しかし彼は最後まで正常だったのである。

同じ精神病院が舞台の作品だが、フラー監督は、ネジが狂い出し、堂々めぐりの世界に、足をすくわれていく恐ろしさと、人間の救いのないどん底感を、描いたのである。
ミイラ取りが、ミイラになる……怖い事ですねぇ。






タイトル: サミュエル・フラー DVD-BOX

バス停留所

マリリン・モンロー主演の映画で、一番好きな作品。

酒場の歌手と田舎から出てきた、カウボーイのラブ・ストーリー。
この作品で、彼女は精一杯演技をしている。
「七年目の浮気」、「百万長者と結婚する方法」、「ナイアガラ」……セックス・シンボル的なイメージを、打破したかったのだろう。
この作品の前に、演劇学校で一から演技の勉強して望んでいる為、やはり今までの彼女とは違う。
ラストシーンで彼女は、鼻水を垂らしながらの、迫真の演技を披露している。
そんな彼女を是非観て頂きたい。

マリリン・モンローは、ディナーの最後に出てくる「デザート」だと思う。
甘く美しく、美味しいのだが、それまでの間にお腹が一杯になっている為、100%の美味しさを感じられないのである。
もし彼女が「オードブル」であったら……と思いますねぇ。



タイトル: バス停留所

ミッドナイト・クロス

ブライアン・デ・パルマ監督は、近代のサスペンス映画の監督としては、トップ3には入るだろう……。

映画の録音技師(ジョン・トラボルタ)が、ある日風の効果音を録音中、大統領暗殺現場を目撃し、現場にいた女性(ナンシー・アレン)を救出し、銃声までも録音した為、命を狙われて行く……と言うストーリー。

一般的にあるストーリーだが、この作品は哀しくて、救いがなくて、何とも後味の悪い終わり方をするのである。
主役の二人が逃げきり、ハッピーエンドと言うラストをお望みの方には、あまりお薦め出来ない作品だ。

今流行りの「24」の分割画面……ブライアン・デ・パルマ監督の、初期の作品から使用されている。、「フューリー」、「殺しのドレス」……こちらの作品もお試し頂きたいですねぇ。 



タイトル: ミッドナイト・クロス

真夜中のカウボーイ

アメリカン・ニューシネマの代表的な作品。

限りない憧れを、膨らませてニューヨークに来るが、想像以上の現実を目の当たりにする。
アメリカン・ニューシネマに共通するのは、病むアメリカ、若者達の声に鳴らない悲鳴だ。この作品でも、色濃く描かれている。

ジョン・ボイド扮する田舎から出てきたカウボーイには、華やかな都会での生活は、「移動サーカス」だったのではないだろうか。
ショーを観ている間は、引き込まれ興奮を覚えるのだが、ショーを終え移動したサーカスの跡地には、いつもと同じ風景しか残らないのである……。
一瞬の歓びであって、虚偽、不信、闇が渦巻く都会の中では、生き残れない者も出てくる。しかしその時代に生き残れなかったのは、敗者では無く、「時代の殉教者」と、この作品を観て感じた。

この作品のテーマソング、ニルソンの「噂の男」……心に染み入りますねぇ。

新年を迎えて観たい映画は……

ある年齢を過ぎると、一年が驚く程の速さで過ぎて行きますねぇ。
まさに今年もそうでした……。

お正月番組程、つまらないモノはないので、映画を観なければ!
今回観る予定の作品は……
「ホテル・ニュー・ハンプシャー」……アブノーマルな内容なのにシニカルだから。
「フレンジー」……ヒッチコック最後の作品で、「サイコ」の次に怖いと思うから。
「サンタ・サングリア」……ものすごくエグイ内容だが、純愛が描かれているから。
「我が谷は緑なりき」……今年は、清い人生を送りたいから。
「未来世紀ブラジル」……非常に珍しい、全身タイツのロバート・デニーロを久しぶりに、観たいから。

新作映画もいいが、大好きな作品を観るお正月……お薦めですねぇ。

オール・アバウト・マイ・マザー

ペドロ・アルモバドル監督の、初期の作品は、ハチャメチャな内容の作品が多い。しかし彼の作風が変わったのは、「ライヴ・フレッシュ」からではないだろうか?この頃の作品から、「人間の心理」を深く、描き出している。

この作品もその一つ。色々な「母」が描かれている。
子供を亡くした母、子供と和解出来ない母、子供を産み亡くなる母……。
それぞれの哀しみから、乗り越ていく女たちの、悲哀と強さを、あまりにもリアルに演出しているのには、感服させられた……。

相変わらず、スペイン特有のド派手なセットは健在だが、そんなのは、極上のストーリーのお陰で気にもならない。
男性の監督で、ここまで「女性」の奥底の心理を、描き出せる人はいるだろうか?
「女性」を絶対の存在として、尊敬する思想がなければ無理だと思いますねぇ。










タイトル: オール・アバウト・マイ・マザー

サボテン・ブラザーズ

大好きなスティーブ・マーチン主演の作品。

売れない映画スター3人組が、メキシコに映画出演の為に行くが、映画ではなく、悪人に食いモノにされている村を、助けるハメになって行くと言うストーリー。まず笑えますねぇ。
彼の作品は、「天国から落ちた男」、「二つの頭脳を持つ男」、「ロンリー・ガイ」「バックマン家の人々」……男の悲哀をユーモアたっぷりに演じている。
歌も歌えば、ダンスもする。これがまた中途半端にうまい所が彼らしい。

彼もコメディ俳優特有でもある、プライベートは物静かな人ならしい。
「エイズはこうして蔓延した」と言う作品で、彼のシリアスな演技を初めて観た。人を笑わせられる俳優は、何を演じても上手いと確信させられましたねぇ……。




タイトル: サボテン・ブラザース

泣けない……

一般的な感動作で、泣けない作品は沢山ある。

「タイタニック」……昔の白黒版の同作品の方が泣けます。
「ゴースト」……ある意味ストーカーの話ではないですか?
「マディソン郡の橋」……クリント・イーストウッドの髪、メリル・ストリーブの二の腕、ある意味泣けてくる。
「チャンプ」……子役があまりにも、演技が上手で引いてしまう。
「イル・ポスティーノ」……主演俳優がクランクアップ後病死した事もあって、リアルさが目立ち、どうしてもストーリーに入り込めない。

「ゴースト」、「タイタニック」で泣けないと言うと、非国民扱いをされたのを覚えている。
泣きのスイッチは、人それぞれあると言う事を、分かって頂きたかったですけどねぇ……。

真夜中にベルが鳴る

「エレファント・マン」と2本立てで、観た作品である。
そう言えば、2本立てと言うのも、懐かしいですねぇ……。
話は戻るが、この作品を観た時は、ま~驚いた、驚いた。
ベビーシッターのアルバイト先で、変質者から電話が来る。最初は間違い電話の降りをしているが、段々と本性を出し始める。電話で警察に助けを求めると、変質者の電話は同じ自宅内から掛かってきてると知らされる……。
「スクリーム」は、色々なホラー作品をモチーフにしているが、冒頭のシーンはまさにこの作品なのである。
「エレファント・マン」を観て、感動したのもつかの間、心理的に追い込まれるこの作品だったので、今だに脳裏に残っている。
ここ最近のホラー作品より、断然怖い……何たってラストがねぇ……。



酒とバラの日々

題名だけ聞くと、何て楽しそうな毎日だろうと思ってしまう。
しかしこの作品は、題名とはうらはらに、夫婦でアルコール依存症に落ちてしまうストーリーである。
サラリーマンの夫が、最初にお酒に溺れ始め、止めさせようとしていた妻までが感化され、キッチンドランカーになってしまう。
何故なのか……お酒を楽しむ為に飲む人と、現状から逃避したくお酒を飲む人もいる。この作品はまさに後者で、夫は仕事から逃げ、妻は夫から逃げたく、お酒を飲むうちに、お酒に飲み込まれてしまうのである。名優ジャック・レモンは出てるし、ヘンリー・マンシーニの曲も美しい。でも悲惨なんですよねぇ。
ホイットニー・ヒューストン、ボビー・ブラウン夫妻に是非観て頂きたい!
彼らはアルコールではなく、ドラッグですけどねぇ……。







タイトル: 酒とバラの日々