コンソールが赤く光りだす。コクピット全体がぼんやりと赤い光で染まっている。
座席からは、数本のコードが伸び、大河の腕に突き刺さる。
後ろの座席では、渚のうなじに五百円玉ほどもある太いケーブルが突き刺さった。
「いてえっ」
「ぐうっ」
大河よりも、渚のほうが苦しんでいる。大河は身じろぎする程度だが、渚は思わず体をひねってケーブルを引き抜こうとするほどの痛みだった。痛みに涙を浮かべている。
しかしだんだんと時間が経つにつれ、痛みは薄れて行った。
痛みが引くと、大河はわが身に起きた変化と、機体に起きた変化を知った。
「な、なんだこりゃあ。敵の位置、風の流れ、匂い、熱、音。急に鮮明に感じだしたぞ!コクピットの中にいる俺には感じないはずなのに!それに、この機体。操縦のタイムラグはないに等しい!というか、考えたとおりに動いてくれる!なんなんだ!何が起こった!こいつはただ立ち上がっただけってわけじゃなさそうだ!渚、説明してくれ!おまえ、どんな魔法だこりゃあ!」
「これは、ビビドライガーの真の姿!あたしがリミッターを解除することで、今まで以上の力を使える。機体の尻尾に内蔵されている各種センサーの情報を、100%同期させることができる事ができる。人間では誤差を感知できないほどの正確さとスピードででんたつさせることができるわ。そして、後部座席のパイロットの心の力を利用して、いままでの数倍もの戦闘能力が発揮できる。さあ、戦うのよ!大河君!ただし、気を付けて、リミッターを解除してしまうと、あまりの負担に機体は6分しか持たないの。画面左下のタイマーの気を付けて!」
「こいつか!」
ディスプレイのの左下には、彼女の言うとおり、オレンジ色のデジタル数字があり刻一刻と機体の停止するまでの時間を刻んでいた。
「ありがと!渚!わかりやすかったぜ、さすがだな!」
「そ、そんな……あ、あたしはホラ、メカニックだからさ……」
渚は急に褒められたので照れてしまっている。かわいらしい。
「も、もう!いいから早く戦いなさいっ」
「よっしゃ!さあ、冗談はここまでだ」
大河は敵をにらみつけると、一気に駆け出した。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
巨体さを全く感じさせない身のこなし。猛烈なダッシュの勢いを、そのまま敵にぶつける。
「だああっ!」
ビビドライガーは肩からシェイクハンドにぶつかる。ショルダータックルだ。
ドカアアアンッ
敵がよろける。すかさずビビドライガーは敵の腕の一本を両手でつかみ、背負い投げをする。
「ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ」
敵はコンクリートに叩き付けられた。
苦しむ叫び声のような軋む音が、敵の体からする。
「もうこれ以上、この街を壊させやしねぇー!」
シェイクハンドはたまらず一番機を殴る。
ビビドライガーは吹き飛ばされた。しかし、実は後ろにステップして威力を殺していたのだった。そしてそのままの勢いで吹っ飛びながら空中で前に90度回転、両足をビルに向けると、ビルの壁面に着地。その刹那、そのままビルをけり敵に突進。敵の前でさらに前方に360度回転。見事な踵落としを決めた。
すとんと着地する。
両脇を引き締め、大河は叫んだ。
急に風が吹き、ザワザワと周りの木々がざわめいている。
「あああああああああああああああああああっ!」
ビビドライガーは拳を強く握りしめ、振りかぶった。
ガン!
一発、二発、三発。
大河の怒り、渚の祈りに呼応して深紅の戦士は加速していく。拳を固く固く握り、一発一発全力で叩き込んでいく。
「フルパワーだっ!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドド!
ビビドライガー一番機のパンチのラッシュがシェイクハンドに突き刺さる。
敵はガードに徹している。
「いまよ!」
「まかせとけ!」
渚の祈りはビビドライガーの爪を、今までの倍、長く固く変化させた。
大河の怒りは紅蓮の炎となり、その爪の周りを竜巻のように覆った。
ビビドライガーは深く沈み込むと、一気に上空へ跳躍した。そして、敵の真上から落ちてきて、敵を切りつける。
ズガン!
一刀両断だ。
「必殺!流星火炎切り!」
「ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ」
敵は火炎に包まれ、爆発した。
「よしっ!次は舞っ!」
舞のほうに向きなおると、舞は多数の敵に囲まれ、悪戦苦闘していた。
「いよしっ!舞!今いくぜっ!」
大河が助けに行こうとすると、渚がとめた。
「待って大河君。ここはあたしに任せて!あたしに考えがあるの」