この気もちはなんだろう

 

目に見えないエネルギーの流れが

大地からあしのうらを伝わって

ぼくの腹へ胸へそうしてのどへ

声にならないさけびとなってこみあげる

この気もちはなんだろう

 

枝の先のふくらんだ新芽が心をつつく

よろこびだ しかしかなしみでもある

いらだちだ しかもやすらぎがある

あこがれだ そしていかりがかくれている

心のダムにせきとめられ

よどみ渦まきせめぎあい

いまあふれようとする

この気もちはなんだろう

 

あの空のあの青に手をひたしたい

まだ会ったことのないすべての人と

会ってみたい話してみたい

あしたとあさってが一度にくるといい

ぼくはもどかしい

地平線のかなたへと歩きつづけたい

そのくせこの草の上でじっとしていたい

大声でだれかを呼びたい

そのくせひとりで黙っていたい

この気もちはなんだろう

 

 

             谷川 俊太郎

30億の幽霊はねむりにねむる。

いま夢中に滴ってねむろうと腐心するもの

死なず死にえず死のぅず。

 

権力が言葉を門番にした。

門番の赤ん坊、使徒になれよ

詩は赤ん坊の爪になれよ

ゆびは闇にうかぶひとつぶの桜んぼになれよ。

いま赤ん坊は緋絨毯を夢みる

もりあがる海原、涯ての大門がひらけば

破裂する馬のなか、まっさおな世界がながれて

樽ひとつうかびあがる。ごつんごつん

 

カンタータがおおきい扉を蹴っとばしている。

 

つめたい床をきりだす鋸

箱舟の幻影を組みたてているのは

老いぼれの巨人だ

たちまち年とる赤ん坊をいつの日にか幼い巨人に

育てたいのだ。それが判る……

禿げた骨のように毎晩うごいている

それは巨人? おお巨人? 芸術?

国家?

 

国家よりおおきい歴史的な巨人は

血を流して かけつけるだろう

オシャブリを胸にだきしめて波に倒れる……

赤ん坊

抱きとれるか。

 

涙が

あふれてここから世界をひたしてゆくのか?

 

赤ん坊 ねむりにねむる。

夜の水に樽が浮いている。

 

 

 

                   堀川 正美

 

 

 

 

 

2020年、立春となりました。細々と生きています。

プロ野球の紅白戦も始まり、日がうっすらと長くなったのを見るにつけ、春の足音を感じます。

 

瞬発力で受け答えをしてしまい、「お前、ちゃんと考えてモノを言ってる?」と言いたくなる場面によく遭遇すると、ある講師がおっしゃっていました。「速いことはいいことだ」とのポリシーについて、もっとじっくり掘り下げてみましょう。

 

英語で「Haste makes Waste」ということわざがあります。急いでやるとロクなことはないを意味します。僕が工事現場などで職人さんの動きを見ていて思うのは、速い人は無駄のない動きをしている、ということです。単に腕と足が速く動く事を言うわけでも無いのです。

 

ただ速くやればいいが信条の人は、マニュアルの思い違いや寸法の取り間違えでやり直す羽目になったり、道具を何回も取りに戻ったりして、結果として余計に時間がかかってしまうのです。

 

要は作業前の段取りに時間を掛ければ、一番スムーズに終われるという、オーソドックスな結論に至るのです。

僕が前から不思議に思っているのが、「私は速読ができる」と言っている人が常に「時間がない、やることがいっぱい」と悲鳴を上げていることです。有意義な時間を増やすために速読を始めたのではなかったのでしょうか。

 

速読をしている人が読んでいる本のタイトルを眺めていると、似た系統の本を何冊も読んでいます。それは時間がなくなって当然ですよ、と教えてあげたいです。読む必要のない本を読んでいるんですから。

 

くわえて不審に思うのが、出来てもいない速読を「わたしは速読ができる」と断言しているところです。厳しいことを言いますが、速読をした結果でそのアウトプットなら、信憑性がありません。

 

以前、速読のチャンピォンがハリーポッターを速読したところ、何も具体的な内容についてコメントできなかったというエピソードを紹介しましたが、多くのスピードリーダーがこのような早とちり的うっかりミスのレスポンスを日常的にしています。

 

仕事力をあげて収入アップをしたいとの思惑を感じますが、仕事力というのなら、上記の無駄な動きのない職人のスタイルが目指すべきところだと僕は思います。

 

覚えないといけない用語が沢山あるのなら、それは書籍というよりもその分野の辞書・事典をじっくり丸読みしたほうがプラスです。それらの語彙を使って会話に彩りを与えたほうが、楽しい春が始まる予感がします。

 

 

 

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今年もあの季節が来る

こういう夢ならもういちど逢いたい