蛭子さんは店にやってきて言いました


「家賃が払えなくて…もうどうしよーもなくて…」


ソリマは思いました


「やっぱり…」


やつのお金に対するだらしなさは今まで痛感していましたので


この一ヶ月間ちゃんとやっているか心配でしたが


予感的中でした


「もう、一週間後には借家を追い出されてしまうんです」


いきなりです


きっと今まで何度も滞納していたのでしょう


「店長に生活費と家賃借りたいんですぅ」←やばすぎ


(俺も店出すのに入り用だし、給料だってたいしてもらってない)←心の声


「アコムとか親とか借りれないの??」←蛭子38歳


「ブラックリストにのってて、親は見離してて…あてがないんです」


(なんで、あれだけ強気に言って辞めていって何してたの)←心の声その2


「今仕事は何してんの??」


「今働いてません」


こ、このやろーわ…


今度の給料日まで何とかもてば返せますとかだったら


貸さんこともないけど


働いてなくて、返せる当てもないのに貸せるかー!!!です


「内縁の妻らしき人物いましたよね??働いてんの??」←当然の質問


「働いてません」←当然のように答える


むしろ、働いてたら恥を忍んで金の無心に来ない的な態度


「店長の店オープンしたら働いて返します」←根拠なし


「え、だってまだ場所も決まってないし、雇える規模かどうかもわかんないし…」


実際その時になって他の職場で働き始まったからとかでソリマのところに来ない可能性もある


「来週にも追い出されてしまうんです」


どこまで人を困らせんるんだこのお人は…



世の中色々な人生があるんですね



そこで


ソリマは2つ考えが浮かびました


続く

子供の頃から歴史が好きで


英雄たちの活躍に心躍らせていました


でも、家に閉じこもって本ばかり読んでいるわけでもありません


中学のときは少し荒れ


ピアスをし、タバコを吸ったり、いきなり人を殴ったり、夜中暴走行為をする


多少元気のいい少年でした


短距離だけは早く


成績も一応偏差値55前後でした


みんなで悪さをし


やばくなるとみんな


「後はいいから、ソリマは逃げろ」と言ってくれました



そんな学生時代を過ごし


高校を卒業し


地元随一の土木会社の現場監督として入社し


22歳の時には主任になり


婚約もし平凡な人生を送っていました



しかし、心の奥底で


このまま、この田舎で結婚をし家業を継ぎ←大農家の長男


年をとっていくことへの悲観


そして、もっと外の世界を見てみたいと思っていました


つまらないこのガラス箱のような世界から飛び出したいと思っていました





箱庭のような周囲を山に囲まれた、人口5万人ほどの小さな町


唯一西へ抜ける国道が人口30万人の地方都市へ抜ける道


地元の人間はこの知名度の低い地方都市を都会と言い


南へ抜ければ太平洋沿岸、しかし峠を越えなくてはならず


北、東は山国


スキー場へ行くときしか使わない



弟、妹は大都市へ


ソリマ嫡男


一応地元ではエリート風で青年団に入り


祖父母両親の期待は大きく両肩に背負う形で


でも、自分は一度この小さな世界から飛び出したかった




我慢も限界に近づいていました


続く





蛭子はやってられないと言い


退社していきました


ソリマが出店したときには手伝うという約束で


知り合いのところにお世話になるということで



蛭子は一文無しで


世間に疎い感じで


しっかりソリマが起業するまで


自分の生活を維持できるか心配してました


そして、約束どおり来るかどうかもあんまり期待していませんでした


今までのこともあるし…←蛭子不振



やつが退社し


ひと月近く経った頃


何気に連絡を取ったところ


大事なお話があるということで


蛭子が店に来ることになりました