『リサーチングマーケター™』が綴る、定性マーケティング徒然草

『リサーチングマーケター™』が綴る、定性マーケティング徒然草

メーカー、IT企業、マーケティングリサーチ等の業界で、商品・事業企画、マーケティング戦略立案、定性調査・行動観察を行ってきた『リサーチングマーケター™』スタイリー・イノウエがマーケティングとリサーチへの想い、ノウハウを徒然なるままに綴ります。

Amebaでブログを始めよう!

3回目からの間が空きましたが、この間、見聞したことも含め、さらに考察というか、私の知識と経験に基づく意見というかを述べてみたいと思います。前回、僭越ながら批判しましたようなMROCの見方というのは、何か新しければとにかく優れているという論理になりかねないことを指摘したのであって、この手法に優れた点があるかどうかということとは別の問題です。

 

その雑誌記事でもそれについてはうなづかされる点も多々ありました。それも参考にさせていただきながら、MROCによる「開きやすい窓」について考えてみます。

 

まず、対象者に関して、地域を限定せずに広い地域からリクルートできるというメリットがあります。これによって、大都市圏以外の対象者の話を聞けるとか、地域による違いを発見できるといったメリットがあります。これがいわば、「開きやすい窓」の一例です。

 

また、リアルのように会場に来ることができるかという条件を除外して、全国規模でリクルートすることが可能になるため、出現率が低い属性や、条件の人を対象者としてそれなりの数を集めることができます。こういった、出現率の低い対象者からの情報を得られるというところも窓が開きやすい部分でしょう。

 

対象者からMROCに発信される情報は、いわば「生活現場」から発信される情報です。会場に来て発せられる情報よりも、細部において生々しい部分があることは当然でしょう。HUTや日記調査に応用することでより、対象者の生活が見えやすくなるでしょう。

 

対象者がMROCに集う「導線」も、この問題には大きく関係があるように思われます。

通常のスクリーニングアンケートでは、自分がなぜリクルートされたかということは対象者にはよくわからないようになっているわけで、すなわち、どんな人が集まっているコミュニティなのかということがよくわからないということがあります。こういった場では、グループダイナミズムが発生するまでには、運営側の工夫があってもそれなりのウォーミングアップの時間がかかります。しかし、「調査」という仕立てではない、MROCというものがあります。たとえば、同好の士が集うコミュニティのような仕立てで対象者が自発的に集まっているような場の場合には、自分と同じような趣味、嗜好の人が集まっているということが自ずと明らかであり、参加者は当初より、こんな話をしてもよいものかという心配なく、リラックスして発言することができますし、グループダイナミズムも発生しやすくなるでしょう。ひとくくりにMROCといっても、このような点の違いによって、その特性は変わってくるでしょう。

 

検討をしていけばさらに、隠れたメリットというものが出てくるでしょうが、私の言いたい事は、「流行」や「新しい」ということから一歩踏み込んだ、冷静な見方と、それによるメリット、デメリットの見極めをしないと、せっかく良いものも、仇花に終わらせてしまうということにならないようにしたいということです。