わが子を内部被曝から守りたい~行政は母親の叫びを聞け~福島市で「食」のワークショップ | 民の声新聞

わが子を内部被曝から守りたい~行政は母親の叫びを聞け~福島市で「食」のワークショップ

「子どもの『食』を考えるワークショップ」が14日、福島市内で始まり、食べ物を通したわが子の内部被曝を避けようと考えている母親らが、日頃の不安や行政の対応に対する不満などを語り合った。市教委に一方的に決められた、学校給食への福島市産米の使用。内部被曝を口にすると孤立する風潮。弁当持参へのジレンマ…。被害者であるはずの母親たちが口にしたのは、時間の経過とともにわが子を守りにくくなっている福島の実態だった。


【1人だけ給食を食べないとクラスで孤立する】

「担任に相談しても解決できない。どうすれば良いのか」

「除染で生じた汚染土の仮置き場も給食への福島米使用についても、すべて決まってしまってから市民に知らされる。市民を守るのが行政ではないのか」

「福島市に暮らしているだけで外部被曝を強いられている。そのうえ内部被曝までさせられたくない」

地産地消の名の下に進められる学校給食への福島米使用。福島市でも今月から、会津産米から福島市産コシヒカリへの切り替えが決まっている。だが、保護者へのアンケート調査も行われず、「給食は安全との考え方と矛盾する」と、市教委は積極的に弁当持参を認めることもしない本紙2012年12月18日号 を参照)

ワークショップでは、「給食そのものが悪いのではない。プロセスの問題だ」と、市教委の対応への批判や学校給食を取り巻く苦悩が噴出した。

ある母親は「子どもに弁当を持参させるとストレスになります。6歳の娘にとっては、ものすごいストレスです」と、学校給食と自作弁当のはざまで悩む心情を吐露した。娘だけが母親の作った弁当を食べればクラスで孤立してしまう。内部被曝はあきらめて、学校給食の一食分だけ皆と同じように食べさせれば良いかとも考える。しかし、それでは、日頃の注意が無駄になってしまうのではないかとも思う。せっかく家では気を付けて安全な食べ物を与えているのに…。

「どこかで折り合いをつけなきゃいけないのは分かっているんです。でも…」。答えは見つからない。

別の母親は「私、内部被曝を気にしてますって言いづらくなっている。皆の前ではつい、食べ物のことなんか気にしていないと装ってしまいます。そういう風潮が広がっているなかで学校給食に福島米を使うことは時期尚早だと思う。アンケートで保護者の意見を聴いてからにしてほしい」と訴えた。
民の声新聞-ワークショップ①
民の声新聞-ワークショップ②
「内部被曝を気にしていますと言いにくくなっている。

つい無関心を装ってしまう」などと、本音が飛び交っ

たワークショップ=福島市曽根田町の「アオウゼ」


【声をあげ続けるのに疲れてしまった】

「本当は給食を子どもに食べさせたくないんだけれど、仕方なく我慢をしている母親がほとんどだと思う。でも、声をあげ続けて疲れてしまったり、『どうせ言っても』とあきらめてしまったりしている。どうしたら良いんだろう。分かりません」。ある母親の言葉は、原発事故からもうすぐ2年になる今、わが子を守りたいと闘い続けてきた母親たちの手詰まり感を如実に表している。実際、福島市議会に提出された学校給食に関する請願は、賛成少数で不採択とされた。「元気に意見を言えるような人は、福島県外に避難してしまっている」という意見もあった。

一方で、こんな本音もある。「私は働いているので、給食を廃止されてしまって弁当を作るようになったら、かなりの負担になります」「弁当を作るのは私にはできません。給食費が値上がりするとしても、安全な給食を提供してほしいです」

これには多くの母親がうなずいた。共働き夫婦が増えているいま、学校給食には栄養や食育以外の意味合いもある。だが、1人の母親の言葉に、さらに賛同は広がった。

「確かに大変です。でも、クラス全員が母親の作った弁当を持たせた方が、安心感は得られます。弁当を食べてる子どもが差別されることもありません」

わが子を守りたいという、ごく自然な考えや行動が孤立を生む不条理。子どもや母親に我慢を強いることが教育か。

「お母さんたちの間で内部被曝について話題にも上らないのが現状です。話題にしにくい。夫婦間でも意見の食い違いが起きています」
民の声新聞-意見①
民の声新聞-意見②
民の声新聞-意見③
福島市教委の〝独断〟で決まった学校給食への

福島市産コシヒカリ使用。参加者の多くが「保護者

へのアンケート調査を」と求めた


【風評被害と言わず実害と向き合って欲しい】

ワークショップは、大内雄太福島市議が中心となって開催。「CRMS市民放射能測定所 福島」の丸森あやさんも出席した。福島市内だけでなく、東京や横浜、宮城県丸森町からの参加者も。15日も10時から開かれる。

フリートークでは学校給食だけでなく、「除染をして放射線量が下がった個所だけが公表されている。その数値を信用している市民も多い」「除染は一度限りではなく、定期的に行って欲しい。汚染土の仮置き場の放射線量も表示してほしい」など、除染も話題に上がった。

「汚染は風評被害ではない。なぜ実害と向き合わないのか」との声も。「原発事故を無かったことにする動き、震災前に戻そうとする動きが母親にとっては怖いんです」という母親もいた。「情報があまりに錯綜していて、本当に欲しい情報が得られない」という悩みも。

丸森さんはこんな言葉で会を締めくくった。

「私たちはテロリストではありません。何もとんでもない話し合いをしているわけではないんです。今日出された意見も、乱暴なものなど何一つありませんでした。常識的な意見ばかりでした。行政はどうやって住民の意見を聴いたら良いか分からないんです。このような会を今後も設けて、行政に皆さんの想いを届けましょう」

わが子を守りたいという母親は、変わり者でもモンスターでも無い。



(了)