【21カ月目の福島はいま】高線量続く福島市の神社には初詣するな~信夫山周辺を歩く | 民の声新聞

【21カ月目の福島はいま】高線量続く福島市の神社には初詣するな~信夫山周辺を歩く

福島市内の神社や寺院には、依然として放射線量の高い所が少なくない。1.0μSV超の信夫山・羽黒神社をはじめ、曽根田天満宮や福島稲荷神社も、「放射線管理区域」となる0.6μSVを軽く超える。もうすぐ新年。多くの子どもたちが初詣に訪れるだろう。被曝をしながら1年の健康や受験合格を祈願するのは、あまりにも哀しく、危険だ


【1.0μSVを超す羽黒神社】

路線バスを「県立美術館入口」で降りる。東北新幹線高架下の「森合緑地公園」では、地元業者による除染作業が行われている。

お地蔵さんに見守られながら、前夜の雨でぬかるんだ階段を上る。冷たい風が痛い。この辺りは南向山と呼ばれており、落ち葉を踏みしめながら登ると、手元の線量計は0.7μSV前後。福島市内は除染が進んだ、安全性が高まっていると言われているが、実情は必ずしも行政の発表とは異なることが、これだけでも十分に分かる。

舗装された道路に出ると右へ。福島第四中学校の裏手を歩く。アスファルトの両脇には落ち葉が山積み状態。手元の線量計が激しく反応する。1.0μSVを超える頻度が高くなった。こんなに高線量地域で中学生たちが学んでいる。

福島市営御山墓地を横目にさらに坂道を上る。第二展望台では、シルバー人材センターの男性たちが、落ち葉をかき集めている。途中、民家で除染作業が行われていた。庭の一角に、真っ黒いフレコンバッグがいくつも並べられている。仮置き場が確保できない福島市では、除染で生じた汚染土などは、敷地内に仮置きするのがルール。だが将来、別の中間貯蔵施設に移動できるなど、誰も信じていない。

再びぬかるんだ山道を登ると、ようやく羽黒神社に着いた。大わらじが奉納されている境内で、線量計は再び1.0μSVを超した。途中の道も0.6-0.9μSVと高線量だったが、神社境内はさらに高い。わずかな時間とはいえ、こんな高線量の神社に子どもたちが参拝をしたら被曝をする。
民の声新聞-羽黒神社
民の声新聞-信夫山
民の声新聞-信夫山の除染
「大わらじ」で知られる信夫山の羽黒神社。境内は

依然として1.0μSVを超す(上)

信夫山は、各所で1.0μSVを上回る高線量(中)

中腹の民家は除染作業中。汚染土は自分の庭に

仮置きされる(下)


【〝学業の神様〟も0.7μSV】

羽黒神社の参道を下り、薬王寺裏の峯の薬師展望デッキで一服。東北新幹線や飯坂温泉が一望できる。放射性物質さえ無ければ、本当に素晴らしい眺めだ。しかし、薬王寺周辺も、0.8-1.3μSVと高い放射線量を計測した。

再び市営墓地に戻り、黒沼神社(0.46μSV)を通り過ぎると護国神社。大きな鳥居の前で0.4μSV前後。隣接する信夫山天満宮も同程度で、他の地点と比べると低い放射線量だが、単純換算で年間3.2mSVに達する値。決して安全だと楽観できない。

駒山公園に設置されたモニタリングポストの値は1.3μSV超。さすがに真冬では子どもを遊ばせる親もいないが、あまりの高線量にため息が出る。何度か訪れている信夫山だが、春になれば福島原発事故から丸2年。しかし、高線量は何も変わっていないことが分かった。

混雑しているハローワークを横に見ながら、福島地方検察庁、浪江町の仮設住宅を過ぎると国道13号へ出る。ここから、受験生の参拝が多い曽根田天満宮へ向かう。
福島中央郵便局に隣接する福島市保健福祉センターには、「ここの公園は除染が終了しました」と誇らしげな看板が設置されているが、手元の線量計は0.39μSV。除染=即安全ではない。

センターの裏道を突き当たると、曽根田天満宮。さすがに、第一志望の学校に合格できるよう祈願した絵馬が数多く奉納されている。絵馬周辺で0.7μSV。単純換算で年間5mSVを超すほどの放射線量だ。

市内でも初詣客の多い福島稲荷神社(福島市宮町)でも、0.6μSVを上回る高い放射線量が計測された。境内では、業者がお守りや破魔矢などを販売する小屋を建設していた。正月準備が着々と進む稲荷神社。福島駅から近い中心部にあるだけに、子どもたちの参拝も多い。
民の声新聞-福島県護国神社
民の声新聞-曽根田神社
民の声新聞-福島稲荷神社
信夫山の護国神社は0.4μSV前後。決して安心

してはいけない放射線量(上)

学業の神様・曽根田天満宮は0.7μSV(中)

初詣客の受け入れ準備が進む福島稲荷神社も

0.6μSVを超す(中)


【福島駅近くで売られる防護服】

福島駅東口のショッピングセンター「AXC(アックス)」1階で、防護服を販売している男性がいた。

ワゴンには「0.59μSV以上は放射線管理区域です」と書かれた紙も貼られている。

かつて医療関連の仕事に従事していたという男性は「ちっとも売れないよ。こんなに放射線量が高いのに、子どもたちはマスクもせず平然と歩いている。異常だよな」と嘆いた。
このビルでは、ゲームコーナーとして利用されていたフロアが閉鎖中だが、近く福島県立医大の甲状腺検査などの拠点として使われる計画があるという。

「東京理科大の封筒を持った人などを頻繁に見かけるよ」と男性。高線量の街と医大の研究拠点。安全安心キャンペーンの裏で進められる研究体制の充実化。現在の福島市の一つの現実だ。
民の声新聞-防護服
民の声新聞-防護服②
1500円で販売されている防護服。マスクすら着用

されないなか、防護服など売れない


(了)